2014年03月31日

■準強姦罪の成否ー市民の検察審査会とプロ裁判官の裁判所

■「市民と法律のプロ、性犯罪の解釈に差/強制起訴の男性に無罪判決/鹿児島県」
2014/03/28 朝日新聞 朝刊 31ページ 686文字 書誌情報
 こんな事件があった。準強姦被疑事件について,検察庁が2度にわたり不起訴としたが,市民が参画する検察審査会が逆に二度とも起訴相当の判断をした結果,2度目の起訴相当の判断を起訴議決として行うことができるので,裁判がはじまった。
 しかし,3月27日,「プロの3人の男性の裁判官」が構成する裁判所は,無罪を宣告した。
***引用***
 27日、鹿児島地裁であったゴルフの教え子の女性(当時18)への準強姦(ごうかん)の罪に問われた鹿児島市のゴルフ練習場経営、稲森兼隆被告(63)の判決公判。国内8例目の強制起訴事件で示された判断は無罪だった。検察官役の指定弁護士は判決を詳細に検討し、控訴するかどうか決めるという。
 指定弁護士を務めた大脇通孝弁護士は記者会見で、「心理鑑定や精神科医の証言を理解してもらえなかった」と振り返った。「ここで終わらせるわけにはいかないだろう」と控訴に前向きな姿勢を見せた。
 被害者の女性は「大変失望しています。当時まだ高校生で、絶対的な支配服従関係があり、抵抗などできるものではありませんでした。裁判官には理解してもらえず、とても残念です」とのコメントを発表した。
 被告側弁護人の上山幸正弁護士は「この事件は検察官が2回、不起訴処分にした判断が相当なものだったと、裁判官も判断されたのだと思う」と述べた。
 強制起訴は、市民で構成する検察審査会の2度の議決で決まったものだ。大脇弁護士は「一般市民の感覚で、公開の法廷で審理すべきという判断には一定の意味があった。従来の法解釈では有罪が難しくても、性暴力被害者の問題を提起できたのではないか」と意義を話した。
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 ブログ編者は,裁判所の結論にいささか疑問を抱いている。こんなコメントにまとめた。

■甲南大学法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)も今回の強制起訴について「女性の人格を尊重する市民良識が反映された画期的なものだった」と評価。無罪判決には「男性が多いプロの法律家たちの考えが性犯罪の解釈と適用を縛ってしまったのではないかと疑問が残る。パワー・ハラスメントを利用した性犯罪の深刻さを捉えられたか疑問だ」と述べた。
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2014年03月30日

■オウム真理教元信者の裁判員裁判「異聞」ー証人尋問と遮へいの弊害

■「核心/オウム平田被告に懲役/駆け足判決究明甘く/裁判員考慮、審理2カ月弱」
2014/03/08 東京新聞朝刊 3ページ 1348文字 PDF有 書誌情報
 オウム真理教元幹部平田信(まこと)被告(48)の公判は、類を見ない組織犯罪に裁判員が初めて向き合った。審理に数年かかることも珍しくなかったオウム裁判だが、
 東京新聞が,平田信事件について,すこし異なる資格から分析をしている。
 項目をふたつ引用する。
***引用***
 ■短縮
 過去のオウム裁判で、死刑判決を受けた元幹部は十三人。一審判決が出るまでの審理期間の平均は五年四カ月だった。平田被告と同じ懲役九年の判決だった元信者の一審の審理は一年八カ月を要した。
 長すぎるオウム裁判に、被害者や遺族らの不満の声が高まり、争点を絞り込む公判前整理手続きを導入するきっかけに。刑事裁判の審理期間は大幅に短縮した。現在は連続殺人事件など重大事件も裁判員裁判で裁かれ、最長でも三カ月で判決が出ている。
 オウム裁判の傍聴を続けてきたジャーナリスト江川紹子さんは「オウム事件のようなカルト犯罪に裁判員裁判はなじまない。被告の心理状態を丁寧に見るために、時間をかけて審理すべきだ」と語り、「平田被告の裁判は効率重視。なぜ教団の犯罪が起きたのか、深く掘り下げられなかった」と疑問視する。
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 江川さんのコメントは興味深い。ブログ編者も,同感だ。形式と手続に縛られた刑事裁判よりも,カウンセリングルームで,みんながあつまり,自由に意見を交換し,質疑し,討論する,,,その中で,当時,なにが麻原彰晃元教組の魅力であったのか,なぜ犯罪集団になってしまったのか,なぜ地下鉄サリン事件であったのか,さらに,長期間の逃亡を支えたものはなにであったのか,さらには,今の社会をどう観ているのか,将来,社会に戻ってどうしたいのか,,,,フリーな検討会のほうが事件を深く理解するのにはなじむ。
 ただ,刑罰権を行使する理由を確認する場である以上,検察官の主張,証拠,手続を保障することがえん罪と加重処罰を回避するベストな方法であろう。

***引用***
■変容
 法廷内の風景も様変わりした。かつてのオウム裁判では傍聴席から証人の様子を見ることができた。今回は証人出廷した十五人のうち、死刑囚三人を含む元信者ら八人の尋問で、傍聴席との間についたてが設けられた。死刑囚はついたての撤去を求めたが、退けられた。
 ついたてによる証人の遮蔽(しゃへい)措置は、性犯罪被害者や暴力団犯罪関係者を想定し、二〇〇〇年の刑事訴訟法改正で導入。当初は年間千人前後だったが、一二年には千七百人超まで増加。「被害者など証人の『顔を見られたくない』という意向が強まっている。昨年十月には法廷内が隠し撮りされた。インターネットが普及し、証人のプライバシー侵害の恐れも増している」とベテラン裁判官は背景を説明する。
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 この点について,次のコメントを出している。
■コメント
 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑訴法)
 「憲法は裁判の公開原則を定めているのに、裁判所はついたてを安易に使いすぎる。死刑囚の意向に反して設けたのは職権乱用であり、遮蔽措置の必要性を吟味すべきだ」
posted by justice_justice at 06:25 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする

2014年03月29日

■裁判の限界ー訴訟能力と手続打切りー裁判官の英断

■「17年ぶり再開公判:「症状回復ない」と地裁支部公訴棄却」
毎日新聞(2014年03月20日 22時44分(最終更新 03月21日 01時23分))
 上記ネット配信記事は,次の事件を紹介している。
***引用***
 愛知県豊田市で1995年に男性とその孫を刺殺したとして殺人罪などで起訴され、心神喪失で訴訟能力がないとして97年3月に公判停止となった男性被告(71)に対し、名古屋地裁岡崎支部(国井恒志裁判長)は20日、17年ぶりに再開した公判で「回復の見込みが認められないのは明らか」として、起訴手続きが違法で無効な場合の規定を準用し、公訴棄却の判決を言い渡した。・・・
 判決は男性の病状に関し、精神鑑定結果を基に「慢性的な統合失調症。意思疎通能力がほぼ完全に失われており、悪化の一途」と指摘。その上で「半永久的に被告の立場を強制することは、迅速な裁判を受ける権利を侵害している。検察官が起訴を取り消さない場合、公判を打ち切るのは裁判所の責務で、遺族に対する誠実な対応だ」と述べた」。
*********
 同じ事件について,日経「17年停止の裁判打ち切り/刑訴法、長期の中断を想定せず」(ネット配信記事2014/3/21 2:12)も取り上げて,識者の見解を紹介している。

 ■諸沢英道・常磐大教授(犯罪被害者学)
 「こうした裁判運用は被害者や遺族の心理的な負担が重くなる。公判を停止したら、期限を区切り、改めて訴訟能力を判断するなど公判のやり方を改めるべきだ」。

 ブログ編者のコメントは次の通り。
 ■渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)
 「通常の生活すらできず回復も見込めないのに、刑事裁判を続けさせようというのは正義に反する。公訴棄却という判決は最もふさわしい解決方法だった」。

 刑事訴訟法314条は,被告人が心神喪失の場合,公判手続を停止することを認める。裁判の進行を中断して,被告人の地位を維持したまま,心神喪失状態の回復をまつものだ。むろん,一過性の理由で,裁判の意味を理解して被告人としての立場から裁判に参加することができない事情はある。しかし,今までも,統合失調症を発症した人や,社会福祉の貧困さから幼児期に充分なコミュニケーション教育を受けられなかった聴覚障害者であって,かなりの長期にわたり心神喪失状態から回復できなかった事例は現にあった。
 それでも,「被告人」の地位を押しつけておくことが正義に適うのか?
 それとも,いったん手続を打ち切り,被告人の地位からは回復して,場合によっては再度の起訴によって対応するのが妥当なのか。
 従来,司法も検察もかたくなに「公判手続停止」という法律のことばが許すことしかせずに,処罰の機会を放棄することを毛嫌ってきた。
 しかし,それは誤りだ。
 裁判には限界がある。被告人の地位に市民を置いて,刑罰を科す以上,その市民は,弁護人の援助を受けつつも,自ら裁判の意味と効果,ここの訴訟行為の意味と効果を理解,氷解,判断するこころの力が要る。
 これは,刑法の心神喪失よりもはるかに知識面でも,判断力の面でも,より高度の精神力を要する。
 例えて言えば,幼稚園の年中組になれば,「よし・あし」の判断はつく。しかし,裁判の意味と自己の採るべき行動を理解することは困難だ。少年法が逆送を認める16歳程度の一般的な精神諸力が要る。
 この状態に回復できないことが相当長期に及ぶ場合が現にある。
 そのとき,裁判所が選ぶべき道は,ひとつだ。
 手続打切り,である。
 形式は,条文の趣旨を踏まえて,法338条の4号に準じて,公訴棄却判決でよい。
 以上をまとめたのが,上記のコメントである。
posted by justice_justice at 08:01 | TrackBack(0) | ■裁判ー起訴された事件 | 更新情報をチェックする
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