2014年04月23日

免訴維持ー高裁,控訴棄却について

デジタル朝日新聞2014年4月23日13時48分は次の記事を配信した。
「強制起訴の元副署長、二審も免訴/明石歩道橋事故」

 事件は,今から15年前になる。兵庫県明石市の歩道橋で,夏の恒例行事であった花火大会の見物客が滞留し,転倒する雑踏事故が発生。11人が死亡、247人が重軽傷を負った。警備の責任を担当する市役所の幹部,民間警備会社社長と明かし警察署の現場の責任者であった当時地域官らがすでに起訴されて有罪となっている。罪名は,業務上過失致死傷罪。
 これに対して,当時の明石警察署長と今回の事件の被告人,元明石署副署長の榊和晄(さかきかずあき)被告(今,67才という)について,神戸地検はとうとう起訴しなかった。
 署長はやがて亡くなるが,被害者遺族らは,検審法改正をまって,検察審査会による起訴強制決議を得た。
 その一審は,結局,5年の公訴時効が完成しているから,有罪無罪を表に出さないで,手続を打ち切る免訴とした。
 そして,今日,控訴審もこれを支持した。指定弁護士側の控訴を棄却するというのが主文であるという。
***以下,引用***
 検察官役の指定弁護士側は控訴審で、元副署長は現場指揮官として同罪で有罪が確定した元同署地域官とは連携して事故を防止する立場にあり、共犯関係にあたると主張。共犯の公判中は時効が停止するとした刑事訴訟法の規定により時効は成立しないとした。被告側は「2人は地位や配置場所が異なり、共犯ではない」などと反論していた。
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 公訴時効をどう捉えるか。
 学者としての見解は,簡単だ。国家が刑罰権を放棄する制度は例外的でなければならない。刑訴法254条は,「時効の停止」を認める。
 まず,「時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める」。次に,「共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める」。
 上記のように,元地域官等は起訴された。つまり,「当該事件」とみるべき社会的な事実ー明石歩道橋の雑踏事故ーは,裁判の俎上に乗ったのだ。であれば,国家は,この事件を裁判にして処罰する意思表示を客観的にした以上,後で,共犯が分かってもよい,公訴時効はその裁判進行中は停止する。
 「共犯」関係にある事件で,共犯の一名が起訴された場合にも,その者が関わる事件への処罰の意思を国家があきらかにした以上,その裁判が決着がつくまでの間は,共犯関係にある者に対しても時候を停止し,その間に捜査を遂げて,国家は急いで起訴するべきだ。
 今回の事件で,明石警察署は,組織を挙げて,歩道橋の異常事態を認識するべき注意義務を負っていた。予見は容易であった。安易に市民の滞留はないと即断すること自体が軽率であった。同じ軽率さを異なる立場から,地域官も署長も副所長も犯した。彼らは組織を同一にする。指揮命令権限もある。部隊を動かせた。そうすれば,容易に規制線をはり,市民を北に誘導し,迂回路を作って歩道橋の混雑を簡単に解消できた。結果予見は可能であるし,予見できれば結果回避措置もまた容易であった。「共同過失」と見るべき組織の不注意だ。
 一審も,控訴審もそう捉えなかった。納得はできない。
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2014年04月21日

子どもが健やかに育つ社会ー21世紀日本の病理

読売新聞の次の記事を引用し,紹介する。
子どもが健全に育つ社会を再建しなければなるまい。

「和歌山・男児虐待死/県に再発防止報告書/検証委提出/国へ法整備要望=和歌山」
 2014/04/16 大阪読売新聞 朝刊
****本文引用*****
 和歌山市の男児虐待死事件を巡り、県子ども・女性・障害者相談センター(児相)などの対応を検証していた有識者による県の「児童虐待等要保護事例検証委員会」(委員長=福井以恵子・元県共生推進局長)は15日、再発防止策などを盛り込んだ報告書(24ページ)をまとめ、中川伸児・県福祉保健部長に渡した。(村山卓也)
 事件は、長男星涼(せり)ちゃんに対する傷害致死罪で起訴された原和輝被告(26)がその約2年前に別の傷害事件で逮捕され、不起訴(起訴猶予)になった後に起きた。その際、児相側が求めなかったこともあり、地検から処分理由の説明はなかった。
 報告書は、こうした経緯の背景として法務省の規定や判例に触れ、「児相は多くの情報を得ることが望ましいが、捜査情報の入手は困難な状況」と指摘。甲南大法科大学院、渡辺修教授(刑事訴訟法)の「検察、警察は積極的に関係機関との調整を行うべきだ」との見解も踏まえ、検察と児相が情報共有できるよう国に法整備の検討を要望した。
 和歌山市などと役割分担をせず、問題を抱えてしまったことが、不十分な対応につながったとし、児相と関係機関との連携強化が必要との見解を示した。
 同センターが受け付けている虐待相談件数のうち、過半数が和歌山市からのもので、効果的な対応をするために同市独自の児相を設置することも求めた。報告書を受け取った中川部長は「提言に沿って対策を考えていきたい」と話していた。
 また、県は同日、星涼ちゃんを自宅に戻した際の判断に慎重さが欠けていたとして、当時の同センター所長、次長、主幹の3人を厳重注意処分とした。
 
 〈和歌山市の男児虐待死事件〉
 無職原和輝被告(26)が昨年7月、自宅で長男星涼(せり)ちゃん(当時2歳)の頭を殴るなど暴行し、死なせたとして逮捕され、同11月に傷害致死罪で起訴された。原被告はその約2年前、星涼ちゃんへの別の二つの傷害容疑で逮捕、再逮捕されたが、地検がいずれも不起訴(起訴猶予)とした。公判に向け、現在裁判所と検察側、弁護側の3者が協議して争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きが進められている。
posted by justice_justice at 19:37 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする

2014年04月01日

■「相次ぐ暴力団への無罪判決/福岡/専門家は立証の甘さ指摘」

■「相次ぐ暴力団への無罪判決/福岡/専門家は立証の甘さ指摘」
 2014/03/22 中国新聞夕刊 3頁
 2014/03/22 愛媛新聞 4頁
 2014/03/22 佐賀新聞 21頁
 2014/03/22 長崎新聞 25頁
 2014/03/22 熊本日日新聞朝刊 26頁

 共同通信が配信した記事が西日本を中心に地方紙に取り上げられている。
 ブログ編者のコメントも掲載された。以下,引用して紹介する。

***引用***
 民間人への襲撃など、暴力団の関与が疑われる事件が多発する福岡県で、起訴された組員や組長らへの無罪判決が相次いでいる。摘発が進まない中、なんとか立件にこぎ着けた事件で有罪を得られなかった捜査側は「想定外」と落胆を隠さない。専門家は、刑事裁判が裁判員制度を背景に変わりつつあり「より緻密な捜査が必要」と指摘する。
 福岡県警によると、2011〜13年、北九州市など福岡県内で発砲事件が23件あった。飲食店や会社の経営者が切りつけられるなどの襲撃事件は34件。多くは暴力団の関与が疑われるが、検挙数はそれぞれ5件、6件だけだ。捜査幹部は、立件できたのはいずれも「証拠がそろった事件」と指摘した。
 だが福岡地裁や地裁小倉支部は昨年11月以降、@建設会社の元社長を銃撃したとされる殺人未遂事件A覚せい剤を代金と引き換えに譲渡したとされる事件B部下に建設会社事務所への発砲を指示したとされる事件―の3件で暴力団組員らを無罪とした。いずれも自白はなく、間接証拠での立証が中心だった。3件の判決は被告の関与の可能性を指摘しつつ「犯人とするには合理的な疑いが残る」と判断した。
 検察幹部は「立証はこれ以上ないほど尽くしており、裁判所は『自白をとれ』と言っているようなもの」と困惑を隠さない。
 一方、専門家の見方は異なる。甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「この程度の証拠では有罪にできないと裁判所が判断した結果。検察の立証の甘さを示した」と分析する。
 渡辺教授によると、裁判員制度導入前の裁判所は、検察の描くストーリーに矛盾しない程度の証拠があれば有罪を導くこともあったという。最高裁は10年、間接証拠での有罪立証には「被告が犯人でなければ説明できない事実が必要」との基準を示した。「疑わしきはシロ」との原則に忠実になることを要請しており、この基準がその後、大きく影響した。渡辺教授は「捜査機関が暴力団関連犯罪の撲滅を狙うのは妥当だが、裁判所は刑事裁判の鉄則を守って真相を解明するべきだ」と話す。
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posted by justice_justice at 00:07 | TrackBack(0) | ■裁判ー起訴された事件 | 更新情報をチェックする
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