2017年12月28日

阪神間モダニズムが生む『スーパーストリングコーベ』のコンサート〜指揮者のいないコンサート

 記録をみると2年振りのブログ更新となる。
 昨日2017年12月27日,夕方。『スーパーストリングスコーベ』,第1回定期公演が行われた。
 神戸ハーバーランド,松方ホール。
 佐渡裕指揮者が指導する『スーパーキッズオーケストラ』の卒業生が組織した『スーパーストリングス・コーベ』。神戸港150年記念行事の一環もかねて,定期演奏会を立ち上げた。管弦楽の奏者で構成。スーパーキッズを卒業して,大学でさらに勉強中のメンバーも多い。
 さて。このコンサート,ステージにバンドが入場して演奏直前になったが,指揮者が登壇しない。驚いた。指揮者がいない。
 案内ビラをあらためてみると,そういえば・・・と気づく。指揮者の紹介がない。
 グループ結成の由来から考えて,勝手に佐渡裕指揮者が登場すると思っていたが,違う・・・。
 ブログ編者も,コンサートには月に1度ほどでもないが,クラシックを聴きに行く。ジャズも好きだ。ジャズのバンドには指揮者はいなくとも,20名近くの奏者でのコンサートなのに,指揮者無し・・・どうするのだろう?
 「コンサートミストレス」が居る。「マスター」に対して女性の場合にこう呼ぶこともこの日に知った。彼女が巧みにリードしている。演奏が始まる。ヴィナーレ,ピアソラ・・・と曲目は続く。最初はどこかぎこちないし,終わり方にも緊張感があると思っていた。
 が,後半に入り,プラトーンで有名になったバーバー『弦楽のためのアダージョ』,そして「みあげてごらん夜の星を」,「海の見える街」をへてグルーグの曲を演ずる頃には,舞台中央にいないはずの指揮者が指揮する演奏へとまとまってきている。迫力もあった。まとまりもよかった。これはすごい!と大いに拍手したものだ。
 本当にすごいと思ったのは,予定の曲も,アンコールも終えてからだ。
 最後に,客席で見守っていた佐渡裕指揮者を壇上に招いた。同氏は,ひとことあいさつの後,「では私も一曲振らせてもらいます」と言って,教え子達に向かった。
 壇上の引き締まり方が違う。でてくるメロディーの弾み方も違う,しかも・・・それまでも各演者はにこやかに表情豊かにそれぞれの楽器を演じていたのだが,佐渡氏の指揮の下に入ると,その豊かな表情がさらに柔らかくやさしく楽しげなものへと一変した。コンサートミストレスを観る目線と,指揮者を観る目線の違いにも気づいた。そうした変化が,曲にも反映している。リズムも力強さも,終わり方の締め具合も,見事であった・・・・
 「指揮者がいなくても演奏できるのでは?」と長年思っていた小さな疑問が解けた。確かに,すぐれたマスター・ミストレスが曲を引っ張る。しかし,指揮者が入ると,曲はもっと深みがでてくる。すごい・・・

 演奏会の主催は,HKMエンタープライズなどなど。
 同社は,神戸港の港湾関連の業務を担う早駒運輸株式会社の関連会社と知っている。早駒運輸といえば,神戸港のクルージングを楽しめるシーバスを運行していることでも知られる。
 今回の演奏会は,甲南学園も後援?になるのか,応援している。勤務先大学だけに,すこし誇らしい。

 演奏会の終わりには,メンバーが出口付近にならんで見送ってくれたが,こちらこそ思わず拍手を返しながら,会場を出た。
 松方ホールには初めての訪問。音響効果,よし。西宮の兵庫県芸術文化センターの神戸女学院小ホール並み,とはさすがに行かないが,2階席であってもきれいな音の響きであった。

 コンサートは定期化したいとの主催者のあいさつ。
 であれば,趣味の拡大としても,また,甲南学園関係者としても,参加することとしたい。

posted by justice_justice at 10:16| ●教養ー美術・音楽・博物 | 更新情報をチェックする

2015年09月03日

被疑者取調べ「可視化」と黙秘権

 高槻中1死体遺棄事件の後追い記事が止まっている。捜査の進展が水面下に潜った。逮捕直後には,平田さんの死体遺棄は同乗していた男がやったものと説明したが,その後から黙秘が続く。「捜査関係者によると,警察と検察の取り調べは当初から録音・録画され,容疑の否認後,黙秘が続く」という。
 8月29日朝日新聞(朝刊)は「弁護人には,大阪弁護士会の刑事弁護のベテランが選任され,山田容疑者と府警本部(大阪市中央区)で接見を続けている。朝日新聞の取材に『接見内容は一切コメント』と話す」と出ている。
 この事件については,死体遺棄への関与の疑いで被疑者が逮捕されたときに,毎日新聞(朝刊)8月22日に次のコメントを載せている。

■「背景の解明必要」
 大阪府警が迅速な捜査で容疑者の検挙につなげたことは評価できる。近年は殺人事件の発生件数が減少する一方,加害者側の異様な動機から生まれる事件が起きている。今回の事件は,被害者となった中学生の男女が夏休みの外出中に巻き込まれてしまった側面もある。家族や地域,学校など従来からあるつながりが外れたところで生じた犯罪の背景を解明する必要がある。

 容疑者について,逮捕・勾留容疑は平田さんの死体遺棄のみ。平田さん殺害,さらに星野君の死体遺棄,その死亡への関与などについては,「あやしい」といえる根拠は新聞でも報道されているが,逮捕し勾留できる捜査段階での「罪を犯したと疑う相当の理由」を証拠で固められるかは報道では分からない。
 水面下での捜査が続いているのであろう。
 捜査,公訴,裁判・・・犯人を処罰するプロセスは社会の正義を守る不可欠の手続で,手続の適正・公正と処罰の厳正さが求められている。したがって,真相解明のためにも,また密室取調べでの自白強要→えん罪というわが国刑事司法に蔓延するウイルスに今回の事件も感染しないよう,被疑者から事情を聞くプロセスを可視化=録音録画することは適切なことだ。初期供述が合理的か不合理か,他の状況証拠によりやがて解明される。それが真相解明,将来は,裁判員裁判で市民が被告人を有罪とする有力な手がかりになることも考えられる。その意味で,被疑者取り調べの全過程録音録画は,むしろ真相解明の重要な武器でもある。
 他方,弁護人がついたようだ。被疑者が「黙秘」するのであれば,これをいわば守るのが弁護人の責務だ。犯罪を認定し刑罰を科すのは,国家の責務。市民は,自ら無罪であることを説明する責任を負わせられない。嫌疑を晴らせないから処罰する,という最大の不正義を防ぐには,「合理的疑いを超える証明」は国家が行うこと。この原則を守ることだ。被疑者・被告人として冷たい目線で社会から見られている山田容疑者。この原則を自ら貫く方法が「黙秘権」である。我々は,黙秘権を行使する被疑者・被告人を冷静に受け入れる態度が求められている。

2015年08月27日

逮捕の重みーえん罪の怖さ

「『幸せな人生、変えられた』/誤認逮捕の男性、苦悩の2年/地裁賠償命令【大阪】」と題する記事で(2015/06/16 朝日新聞(朝刊)),次の紹介があった。

 「ある日突然、身に覚えのない容疑をかけられ、そのまま自由を奪われたら――。そんな悪夢が現実になった大阪府警北堺署と大阪地検堺支部の誤認逮捕・起訴。15日の大阪地裁判決は、ずさんな捜査で無実の人を苦しめた捜査当局の姿勢を厳しく批判した。どうすれば冤罪(えんざい)は防げるのか。捜査現場の模索が続く。▼1面参照
 「私の人生は、誤認逮捕で大きく変えられてしまいました。今日の判決が、心身ともに健康で幸せだった頃の人生を取り戻すきっかけになればと思います」・・・
 捜査段階から容疑を否認してきた男性。判決では、大阪府警の取調官が男性に何度も自白を迫った際の文言が明らかにされた。
 「その汚れた手で子どもの頭をなでてあげられますか」「反省する気持ちはないのか。お前が犯人である証拠はそろっている」
 男性は85日間の拘束の末に釈放されたが、一連の捜査で精神的なストレスから抑うつ反応を発症し、今も休職と復職を繰り返す。
 小学生の娘が2人いる。誤認逮捕のもとになったのは、家族でスノーボードに向かう途中での給油だった。そのすぐ後に給油した真犯人と取り違えられた。」

■<考論>検察、原点戻って
 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 警察は捜査を自白に頼ろうとする伝統的な体質から抜け切っていない。一方、検察は警察の捜査をうのみにする傾向がある。今回の誤認逮捕と起訴は、そうした土壌が生んだものといえる。検察の役割は、裁判を起こして罪に問うべきかどうか批判的に事件をとらえ直すことにある。判決を踏まえ、検察は本来の役割をしっかり自覚するべきだ。
posted by justice_justice at 14:30 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする