2015年08月24日

哀しき「監視カメラ」

朝日新聞(夕刊)2015/08/22は,周知の事件について,「遺体の顔に粘着テープ/死後数日経過か/大阪・少年遺棄」とする見出しで,経緯の一端を報道している。
 「大阪府高槻市の駐車場に中学1年の平田奈津美さん(13)の遺体を遺棄したとして大阪府寝屋川市の山田浩二容疑者(45)が死体遺棄容疑で逮捕され、同級生の星野凌斗(りょうと)さん(12)とみられる少年の遺体が見つかった事件で、少年の顔全体に粘着テープが何重にも巻かれ、手も縛られていたことが捜査関係者への取材でわかった。一部は白骨化していたという。・・・
 山田容疑者の逮捕容疑は13日、高槻市の運送会社の駐車場で平田さんの遺体を縛るなどして遺棄したというもの。府警によると、山田容疑者は「確かに女の子を車に乗せて高槻市の駐車場まで行ったが、助手席にいた同乗者の男が女の子の死体を車から出して遺棄した。同乗者の名前や年齢は言いたくない」などと容疑を否認しているという。」
 平田さんが殺害された前日から当日の明け方にかけて,寝屋川市駅近くの商店街にいる二人を「防犯カメラ」ないし「監視カメラ」がくっきりと捉えており,その画像は,繰り返しテレビでも流されている。
 一方で,監視カメラの多数設置は,市民のプライバシーを侵害するものとして嫌われているが,他方で,今回のような事件が起きたときに活躍するのが監視カメラの画像であることも周知のことだ。今,日本社会は,「孤立化」の時代に陥っている。その結果が,「孤死」。無縁であること。これが人の通常の姿になってしまった。高度経済成長がもたらした,負の遺産。しかも増殖している。年々27万人規模の人口が減少している。居住する明石市が,毎年ひとつずつ空白になっている現実・・・・
 地域がまとまっていて,うるさいおじさん・おばさんがいて,子ども達が夜遊んでいると,誰彼隔てなく「あんたたち,もう遅いんだから,帰えんなさい」と叱ってくれた時代。そして,子ども達も,一瞬しゅんとなって「は〜い」といって温和しく家路についた時代。そう言っていい時代を,我々還暦を超え始めた世代,昭和がまだ中期であり,これから高度成長を日本が遂げる手前に少年時代を迎えた者は多かれ少なかれ体験していないか。
 それが,雲散霧消した。「関わらない地域」。見知らぬ家族の住む空間。そして,夫婦・親子なき孤立した生活。
 「監視カメラ」がもっと人工頭脳と一体化したらどうか。
 映画ターミネーターのように瞬時に相手の属性を判断できたらどうか。「平田さん,星野君。もう遅いよ。おうちに帰りなさい。今,ふたりの顔から顔認識システムで家が分かったから,家族に連絡するね」と過干渉なことを言う機能を持っていたらどうであったか・・・
 画像のみ正確に記録し,その後,ふたりは・・・殺された。
 監視カメラに心あらば,思っているのではないか。あのとき,声をかけられるシステムを早く開発し,導入して欲しい,と。「哀しき監視カメラ」の独り言である。
JH1st murder case 00.jpg
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2015年08月21日

二重事故の過失責任ー後続車の運転手に課される注意義務とは?

「三条・死傷多重事故/後続車の女性/2年半後に一転起訴/先行車の判決受け/地検」新潟日報(朝刊)2015/07/05は,こんなタイトルで,次の事件を紹介している。記事を引用する。

 「三条市の北陸道で2011年に2人が死傷する多重事故があり、一度不起訴となった女性が約2年半後、一転して自動車運転過失致死罪で新潟地検に在宅起訴されていたことが4日、捜査関係者への取材で分かった。
 起訴されたのは新潟市中央区の無職女性被告(53)。居眠り運転で最初に追突事故を起こした男性(32)=有罪判決確定=の後続車を運転し、死亡女性=当時(45)=の車に衝突していた。男性の判決で被告の過失に言及があり、遺族側が検察審査会に審査を申し立てた。検察は議決前に判断を覆し、異例の起訴に踏み切った。
 新潟地検は「先行車両の裁判で被告の過失もあると指摘され、検審への申し立てもあったため再捜査した。不起訴の判断は結果的に捜査が不十分だったと思うが、再捜査で起訴に至った」と説明。」

 遺族側は「被害者の気持ちを考えれば最初から起訴してほしかった」としている。被告は無罪を訴えている。
 事故は11年7月8日、三条市の北陸道上り線で発生。長岡市の女性の軽乗用車に、居眠り運転の男性のトラックが追突。さらに後続の被告の乗用車が衝突した。被告も軽傷を負った。
 県警は12年2月に両名とも自動車運転過失致死容疑で書類送検したが,男性のみ起訴されて13年3月には有罪が認められたようだ。その判決内容中,女性についても過失を認める言及があったと記事は言う。
 「判決で、女性の死亡に関する被告の過失は「相当にうかがうべき」とされ、遺族側が検審に申し立てた」。
 その結果,新潟地検が検察審査会の議決を前にして,14年12月に一転起訴したという経過だ。
 今回の起訴状では,女性も,制限速度を守らず走行し、事故で止まっていた軽乗用車に衝突後、道路に出ていた女性にぶつかり死亡させたとしているという。
 事件の詳細,証拠の詳細が分からなければなんとも言い難いのだが,先行車両が事故を起こしたとき,後続車両の運転手には,その事故の被害を拡大しないで,かつ自車が巻き込まれないようにする,特別な状況に置かれてしまう・・・今回の事故でも,予見可能で,回避可能であるし,かつ,この女性に科すべき結果回避義務がはたして市民社会がなっとくできる形で,構成できるのだろうか・・・・。審理の行方がわかるといいのだが。
 こんなコメントを出した。
<検察は証拠開示を 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話>
 過失の捉え方は市民と法律家の目線では異なることがある。検察審査会の議決前に起訴されたとはいえ、検審の公訴権に対する監視機能が働いたケースではないか。ただし、起訴までに時間がかかると、証拠が散逸したり当事者の記憶があいまいになったりして、冤罪(えんざい)を招きかねない。遅すぎた起訴は被告の負担も大きい。検察は十分な証拠開示をして、法廷で真相に迫るべきだ。
posted by justice_justice at 20:41 | TrackBack(0) | ■裁判ー起訴された事件 | 更新情報をチェックする

2015年08月17日

■青酸化合物/連続変死事件の現況

しばらくマスコミが取り上げていないが,京都・大阪で発生した,青酸化合物を使って夫,内縁の夫などを連続殺害した筧千佐子事件はまだ決着がついていない。公判の見通しも全く立っていない。そんな事件の現況を読売新聞が紹介する。
「連続変死事件/青酸入手先特定/カギ/千佐子被告 業者名など明かさず」(読売新聞015/07/31(夕刊))
 「青酸化合物を使った連続変死事件で、筧(かけひ)千佐子被告(68)が今月、交際相手だった神戸市北区の男性に対する強盗殺人未遂罪で追起訴された。起訴は3度目。自供以外に犯行を裏付ける直接証拠はなく、今後の公判などで鍵を握るのが、青酸の入手先だ。千佐子被告は「もらった」と従来と同じ供述を続けているが、相手の具体名などは明かしていない。裏付けは取れないままで、捜査本部はさらに確認を進める」。
 ■核心は未特定
 千佐子被告は昨年11月、夫(2013年12月に75歳で死亡)への殺人容疑で最初に逮捕された際、容疑を否認。しかし、起訴直前の同12月、京都府向日市の自宅にあった植木鉢内の小袋から青酸成分が検出されたことを取調官に告げられ、容疑を認めるようになった。
 この際、青酸の入手先について、「プリント会社を経営していた数十年前、出入り業者に『印刷の失敗時に使えば色を落とせる』ともらった」と供述した。
 今年1月、大阪府貝塚市の元交際相手の男性(12年3月に71歳で死亡)に対する殺人容疑での再逮捕時も当初は否定していたが、その後、容疑を認め、3度目の起訴となった今回の事件も供述したという。
 ただ、青酸の入手先については、具体的な業者名や時期は明らかにしておらず、大阪府警などの捜査本部は確認作業を進めているが、今も特定できていない。
 一方、動機について捜査本部は、千佐子被告が投機性の高い金融商品への投資を繰り返していたことなどから、遺産など金目当てと判断。千佐子被告の周辺では、他に数人の高齢男性が死亡しており、捜査本部は経緯や状況を調べているが、刑事責任追及の見通しも立っていない」。

では,裁判員裁判に向けて報道の限りで,どうみたらいいか。こんなコメントを掲載してもらっている。

■高いハードル
渡辺修・甲南大学法科大学院教授(刑事訴訟法)は「殺害などの自供が翻されても立証できるかという視点で証拠を固める必要がある。最高裁は、『犯人とみても矛盾はない』という程度の証明では有罪を認めない。青酸の入手先や保管方法などが不明確なままでは、有罪の決め手に欠けるのではないか」と話している。
posted by justice_justice at 07:17 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする
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