2013年12月28日

司法通訳の質向上のためにー日本『ガラパゴス』現象のひとつ

■「法廷通訳人アンケート/裁判員導入/8割負担増/集中審理/準備に支障」
愛媛新聞2013/08/05から上記記事を引用する。共同通信配信なので,同じ記事が各地方紙に掲載されていると思う。
***引用***
 刑事裁判で外国人被告の通訳を担当する「法廷通訳人」を対象に業務環境についてアンケートを実施したところ、裁判員裁判経験者39人のうち8割以上が「制度導入後に負担が増えた」と答えたことが4日、分かった。
 裁判員裁判で始まった集中審理が通訳人の負担になっている実態が具体的なデータで明らかになるのは初めて。通訳業務の質が下がれば公正な裁判に支障が出る恐れもあり、制度改善を求める声が出そうだ。
 アンケートは、静岡県立大の水野かほる准教授(日本語教育)や名古屋外国語大の津田守教授(司法通訳翻訳論)らの研究グループが昨年12月〜今年1月に行った。
 回答した101人のうち裁判員裁判経験者は39人で、裁判員制度導入後の負担について「とても増えた」「少し増えた」と答えたのはそれぞれ16人だった。「変わらない」は6人で、1人は無回答。
 理由(複数回答)は「連日の開廷で準備時間が足りない」(23人)が最多。次いで「翻訳する書類が増えた」(21人)「拘束時間が延びた」(19人)の順だった。
 最高裁によると、昨年1年間に判決の出た裁判員裁判で、法廷通訳人が付いた外国人被告は145人だった。
 一方、報酬に関する質問では、101人中19人が「少ない」、48人が「どちらかといえば少ない」と回答し、6割以上が不満を持っていた。さらに59人が「通訳料の明細が分からない」、57人が「算定基準が曖昧」と、裁判所の対応に疑問を投げ掛けた。
 自由記述では、裁判所による研修の充実や、資格認定制度の創設を求める意見もあった。法廷通訳人を20年以上務める津田教授は「アンケートを機に通訳人の負担軽減が議論されるようになってほしい」と話している。
***
■こんなコメントを付した。
<質確保する制度を>
 【法廷通訳に詳しい渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話】 集中審理によって法廷通訳人に求められる仕事の質も量も変わるのは当然なので、アンケート結果は想定内。裁判員制度の導入以降に通訳人による誤訳が問題になった事例も報告されており、法曹関係者はこの問題にもっと敏感になるべきだ。継続的な研修を義務づけ、一定期間受講しない場合は裁判所の名簿から外すなど、質を確保するための制度づくりが急務だ

2011年08月10日

■市橋事件異聞ー次元の低い司法通訳

■2011年7月21日に、千葉地裁で行われた英国人女性殺害事件の判決公判で、市橋被告が無期懲役の判決を受けたことはまだ耳に新しいし、その後、殺意を認定されたことに対する不服なども含むのか、被告側が控訴したとの報道にも接した。
 この事件のもうひとつの注目点は、被害者のご両親が、はるばるイギリスから、被害者参加人として来日したことだ。
 母親が証人として証言したことも、この事件を語るときに忘れられないひとこまであるのだが、その後、Japan Times に驚くべき、但し、ブログ編者の体験に基づけば、日本の司法の世界ではあたりまえの、、、記事が掲載された。

 『誤訳』、これである。
 以下、Setsuko Kamiyaの署名入り記事から引用する(Japan Times,Thursday, July 21, 2011)。

The lay judge trial of accused rapist and murderer Tatsuya Ichihashi,
whose verdict is expected Thursday, has captured a lot of media
attention since it started July 4, but one element that has escaped
notice is the quality of the language translation.

Many errors by a court interpreter, from slight differences in nuance
to the loss of a few details, have so far been observed during the
high-profile case.
・・・・
The errors may not have been crucial for the lay and professional
judges to decide the facts of the case and Ichihashi's fate. But
experts say having too many mistakes is a major problem because the
accuracy of the interpretation is crucial to ensure a fair trial for
everyone involved, from defendants, accusers and witnesses to victims
and their families.
・・・・
Several interpretation errors, for example, were made during the fifth
session of the trial on July 11 when Julia Hawker, mother of the 22-
year-old British victim, Lindsay Ann Hawker, testified as a witness
for the prosecution.
・・・・
The prosecutors' goal in calling her to the stand was to establish
that the consequences of the crimes were grave and that the family
wanted Ichihashi severely punished for raping and taking Lindsay's
life and leaving her body in a soil-filled bathtub on his apartment
balcony.When questioned about the impact of her death on the family, the
mother said she blamed herself for allowing her daughter to come to
Japan. "I couldn't take a bath for two years," she said, apparently
because of how her daughter was found.But the court interpreter translated the phrase into Japanese as "I cannot take back the two years."
・・・
A few moments later another misinterpretation was observed. When a
prosecutor asked Julia Hawker how the heavy coverage of the case
influenced the British people's perception of Japan, she testified
that it had a negative impact and many now feel "Japan was a less safe
place to come." But the nuance of her testimony was changed when it was interpreted into Japanese: "Japan was the most unsafe place to come."
・・・
When asked whether she knew that Ichihashi wrote a letter of apology
to the family, she said that "we didn't think he would apologize to
us. We thought he was sorry for being caught." But her testimony was
interpreted as saying Ichihashi wrote the letter "as a preparation for
his trial."

■ 司法通訳の水準を上げること。これは、最高裁が意識してネグレクトしているとしかみれない残された課題だ。語学査定を入れない、異様な通訳人登用のシステム。裁判官がみれば結論がいいのであれば、誤訳は無視するという官僚司法の約束事、、、、笑うべき運用を、黒服の官僚裁判官が平然と取り仕切っている。会議通訳のプロからみれば、呆れるしかない水準の通訳、、、、国際化に乗り遅れている日本の現状が、こんな歪みを生んでいる。

■ 通訳は、鑑定と同じく、特殊な訓練と技能に基づく、専門的技法である。それには、相当の訓練と経験が要る。刑罰を定める刑事手続の場面では、ことのほか質の高い通訳人が必要であることはいうまでもない。
 それをセレクトするシステムを構築すること。
 こんなあたりまえのことを、平然と放置している最高裁判所、、、、
 内向きの官僚組織の弊害がそのまま現れている。




2010年07月04日

■手話の飛び交う法廷ー裁判員裁判異聞

■読売新聞2010年5月22日(朝刊)、「強姦致傷裁判員裁判/障害者参加「大きな一歩」と題する記事は、判懲役8年(求刑・懲役9年)の実刑を言い渡した、ある強姦致傷事件の裁判員裁判で、補充裁判員に聴覚障害のある女性が選任されたことを報じている。
 このエピソードをどうみるべきか。
 記事は、こんな紹介をしている。
「◆識者ら コミュニケーション確保課題 
 聴覚障害のある50歳代の女性が補充裁判員を務めた地裁(橋本一裁判長)の裁判員裁判で21日、強姦(ごうかん)致傷罪などを審理した裁判員と補充裁判員だった6人が地裁内で記者会見し、「審理が白熱すると、検察官や弁護士が早口になることがあった」と指摘する一方、「裁判官は、全員が理解してから評議を進めていた」などと対応を評価した。
 聴覚障害者が裁判員・補充裁判員になったのは初めてとみられ、裁判員を務めた60歳代の男性(橿原市)は「女性が聞こえやすいようマイクに向かって議論した」と話した。補充裁判員だった30歳代の男性は「評議の際、女性に顔を向けながらゆっくり、わかりやすいように話すことを心がけた」と述べた。
 法廷で要約筆記を担当した女性2人も奈良市内で会見。18日の初公判前に地裁との打ち合わせで、裁判員席の前に用意する予定だった筆記者の席を、意思疎通しやすいよう裁判員席の後ろ側に女性と並んで4席置くことを提案。「話が白熱してテンポが早くなってくると、入力するのが大変だった」と振り返った。
 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の佐野昇事務局長は「要約筆記の様子をモニターで全員に見えるようにすれば、聴覚障害者のペースに合わせて進行できる。今後の裁判の参考にしてほしい」と注文した。

■「聴覚障害者の居る刑事裁判」。
 「手話の飛び交う法廷」。
 これも長年にわたりフォローしてきているテーマだ。
 健聴者、健常者中心になりがちの社会構造の中で、21世紀のテーマは、市民主義。
 刑事裁判における市民主義の大きな鍵は、コミュニケーションだ。
 手話の保障。効率司法ではなく「熟成司法」を実現するためにも、コミュニケーションの保障を重視したい。
 こんなコメントを載せた。
**************
 刑事裁判で障害を持つ被告らの支援を研究する甲南大法科大学院の渡辺修教授は「社会全体で司法を支える裁判員制度の趣旨からみて、女性の参加は意義深く、大きな一歩」と評価。今後、障害者の積極参加を進めるため、「他の裁判員らとのコミュニケーションをどう確保するか、真剣に考える必要がある」と指摘した。
 

2010年07月02日

■低水準の「司法通訳」−起訴状読み忘れ事件

■2010年6月19日読売新聞が15時08分にネット配信した記事のタイトルは、「起訴状一部通訳し忘れ、罪状認否やり直しへ」という衝撃的なものである。
 こんな経過であった。

 「問題の裁判は、11日に行われたフィリピン人ダンサーの男(43)の初公判。被告は、日本に不法に入国したなどとされる入管難民法違反事件と、性別を偽って婚姻届を提出したとされる公正証書原本不実記載・同行使事件で起訴された。
 刑事訴訟法の定めでは、被告に日本語が通じない場合、起訴状の内容などを通訳した上で審理を進めなければならない。地裁によると、地裁が依頼したタガログ語の通訳人が初公判で、2通の起訴状のうち1通の翻訳文を忘れてきた。杉本正則裁判官の指示で、通訳人は日本語の起訴状を見ながら訳したが、公正証書原本不実記載・同行使事件の書面を読み忘れたという。
 杉本裁判官も気付かないまま、被告に「二つとも間違いないか」と質問し、被告は「間違いない」と認めた。裁判は即日結審し、判決期日は25日に決まった。」

■おそるべきことは、通訳欠落が次の経過で明らかになったことだ。「公判後に報道機関からの指摘で発覚。ミスを確認した地裁は弁護人らと協議し、再び罪状認否を行ってから判決を言い渡すことにした。弁護人は「私もタガログ語は分からないので気付かなかった。反省している」と話している」。
 もし、敏感な司法記者がいなかったら、、、そしてこれが有罪無罪に拘わる証拠であったとしたら、、、
 と司法通訳のレベルの低さがおよぼす「不正義」の広がりを思うと背筋が寒くなる。

■ そこで、こんなコメントを掲載した。

◆読売新聞2010年6月19日(西部版、朝刊)
 法廷通訳に詳しい甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「通訳人が2人いれば、その場でミスに気付いたはず。地裁は通訳の重要性を認識し、質の高い通訳人を複数つけるようにすべきだ」と指摘している。

◆西日本新聞2010年6月19日(朝刊)
 ●法廷通訳の不備露呈
 ▼法廷通訳人の問題に詳しい渡辺修・甲南大学法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 初歩的なミスで驚いた。口頭でのやりとりをより重視する裁判員裁判の時代だけに看過できない。関係者がなぜ気づけなかったかも不思議だが、今回のようにまとめて通訳する読み上げ通訳は効率的な半面、ミスが起こりやすく、諸外国で一般的な逐語訳か同時通訳ならミスを防げた可能性が高い。日本の法廷通訳人のレベルと、通訳人を使う法律家の訓練が、ともに不十分なことが露呈した。

2010年05月09日

■広島通信ー法廷通訳研修2日目

■2010年5月9日。
 平和公園にある国際会議場の地下1階。
 そこで、広島で開催した「法廷通訳研修会」、第2日を開いた。
 2日目は、いわば座学。
 午前中に、法律学者ーブログ編者がリードして、裁判員裁判の意義、裁判員裁判と司法通訳の諸問題について、言語学者2名ー本ブログのサポーター、まきこ先生と、今広島女学院大学の学長を務めるN教授ーが言語学、通訳学、コミュニケーション論の立場からコメントを加えつつ、解説。
 午後は、大阪弁護士会のI弁護士がリーダーとなって、刑事手続の外観、尋問の意義などを解説。
 弁護人弁論を素材に通訳手法の比較検討も行う。
 また、司法通訳を巡りよくでる疑問点を、ミニシンポ形式で整理点検。
 レジスターの一致、誤訳訂正の手法などなどを議論した。
 
 今後の大きな課題は、ふたつ。
 (1)通訳人のプロフェッショナリズムの確立。
 (2)法律家のユーザーとしての質向上。

 法律家達は、プロたる通訳人の「使い方」について、無知だ。
 マナーの悪い自転車乗り。
 なによりも、その認識がないことがもっとも困る。
 「権威主義」の意識構造の中にいることを、認識できない「裸の王様」といってもいい。
 その意識改革を迫る必要がある。

関連写真は以下をみて頂きたい。
http://justice.netspace110.jp/blog/blog_100509_1.html

 そんな我々の初日の模擬裁判員裁判を中国新聞2010年5月9日付けのネット配信記事では、次のように紹介してくれた。
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外国人被告を想定 通訳研修 '10/5/9

 法廷通訳人が必要な外国人被告の裁判員裁判を想定した模擬裁判が8日、広島市東区の広島女学院大であった。裁判員裁判で通訳人の技術向上が課題となる中、日本弁護士連合会法務研究財団の法廷通訳研究会が通訳人の研修会として中国地方で初めて開いた。

 フランス人男性が被告となった放火事件を想定。研究会メンバーたちが裁判員や検察官役を務めた。目撃者の耳の不自由な女性が手話で証言する場面では、手話とフランス語それぞれの通訳人により証言が訳された。

 判決は懲役5年(求刑懲役6年)となった。フランス語の通訳人を務めた、大学非常勤講師ル・ディムナ・優子さん(53)=佐伯区=は、「細かなニュアンスの訳し方で判決が大きく変わる。より正確に伝えられるようボキャブラリーを増やしたい」と話していた。

 最高裁の統計では、通訳人候補者は全国で約4千人。広島地裁によると、広島県内には76人おり、事件ごとに選任される。研究会によると、国の資格認定試験や研修の継続的な実施はなく、通訳の技量は個人の努力に委ねられているという。

■広島通信ー法廷通訳研修会

 2010年5月8日と9日は、広島にいる。
 法廷通訳研修を広島女学院と平和公園にある国際会議場で行うためだ。
 8日早朝大阪弁護士会のK弁護士と新幹線で到着。
 路面電車に揺られて、原爆ドームへ。
 「反戦・平和、自由と民主主義」。
 ある時期の某政党の標語に近いが、これが、ブログ編者の社会的存在としての原理原則だ。某政党は支持していない。
 但し、だ。
 「国防と世界秩序、正義と社会的責任」に裏付けられること。
 これが、不可欠だ。
 アメリカ軍基地が日本の国防に不可欠であること。
 民主党は、これをもっと堂々と国民に訴えるべきではないか。

*このブログの関連写真は、以下参照。
http://justice.netspace110.jp/blog/blog_100509.html

 さて、その広島。

 原爆ドームは何度もみた。
 それをあらためて写真に収めて確認することとした。原爆ドーム三景。
 同時に、なんとなく先送りになっていた課題。
 実は、平和公園の東側は歩いていない。
 今回、それを果たした。
 韓国人犠牲者の碑、平和観音、そして教師と生徒の像などなど、なんども足を運んだ平和公園で見逃していたものを今回確認できた。
 あらためて思う。
 「反戦と平和」。
 
 法廷通訳の問題を取り組んでいる。
 今回は、フランス人被告人を想定。
 現住建造物放火。目撃者が居る。
 聴覚障害者だ。
 「リレー」通訳を模擬裁判員裁判で実施した。
 
 検察官が音声日本語で発問。
 手話通訳人が、手話で質問
 ろうの証人が手話で答える。
 手話通訳人が、音声日本語にする。
 フランス語通訳人が、被告人にフランス語で伝える。
 この流れを続けると、フランス語通訳人が目に見えて疲れてくるのが分かる。
 注意の払い方が複雑になるからなのだろうか、、、
 声にはりがなくなるし、単純な日本語が、でてこずに戸惑う場面が出てくる。

 そんな研修を広島でやった後の楽しみは、いわずとしれた、お好み焼き。
 例のごとく、お好み焼き村にいったのだが、今回の選択は失敗。
 2階から4階まで3往復して何気なく入ってしまったカウンター席。カウンターの端に座れてと主人が指示したり、うしろに通風口があるのか風があたる場所、店員ひとりがその席のすぐ近くにたったまま作業をしている落ち着きのなさ、、、、「こりゃ、だめじゃ」と思ってさっさと食べて早々に退去。べたべたした作り方も、ボリューム感のないまとめかたも、広島お好み焼きにはあわない、、、と一人憤りながら、ホテルに戻った。

2010年05月02日

■外国人の居る法廷ー国際社会への「恥さらし」

■外国人の居る法廷のレベルの低さを示す記事がある。
 「裁判員・法廷から=長崎地裁 裁判員「酒は節度を」と説法/裁判長「質問でない」と遮る/識者「制度の意義台無し」」という見出しで、西日本新聞2010年1月29日(朝刊)は、長崎地裁の裁判員裁判で、被告人質問の折、裁判員の個人的意見を含む発言を裁判長が遮り、裁判員が肝心の質問にまで至らないまま発言を中断したという経過を紹介している。

■ 「酒に酔い元妻への殺人未遂罪に問われた中国人被告の公判。年配の男性裁判員が質問の中で「酒をやめられますか。私も酒飲みだが、節度をもって飲まなければいけない…」と意見を述べ始めた。松尾裁判長は「質問を短くして」と要望。被告の返答後、この裁判員が日本語を勉強するよう被告を諭し始めると、裁判長は法廷通訳人に「質問ではないので訳さなくていい」と告げ、裁判員は発言を終えた」。

 記事はこんな様子も紹介している。
 「通訳を介する被告人質問は前日、予定時間を約20分オーバーしており、松尾裁判長はこの日、裁判員らに質問を短くするよう再三要望していた。」

■ しかし、疑問だ。
 「審理計画、ありき」。これでは、正義の実現はおぼつかない。裁判員が充分に審理を尽くすこと。
 そして、要通訳事件である以上、もともとかなり審理に余裕のある審理計画を立てるべきであった。それでも、そもそも裁判員の居る審理で厳格な時間管理などすべきではない。
 現に、「閉廷後、被告弁護人は「結果的に質問を引っ込めさせた形になった」と指摘」と記事も摘示する。
 不当極まりない訴訟指揮だ。

■さらに、この記事でも、裁判長が「質問を短くして」と要望しているという。要通訳事件で、ことさら「短い質問、分かりやすい質問」をするように裁判長が促すことがあるが、それは、実は「司法通訳」の質の低さを暴露しているようなものだ。
 政治、経済、外交いろいろな場面で、プロの通訳人が活躍している。しかし、話者に対してあらかじめ「通訳しやすいことしか話すな!」と釘を刺すことなどありえない。

 法廷という権威の衣を着た裁判官のみが、世間の非常識を平然と行っている。
 通訳人のフェッショナリズムからみても、こんな制約をクライアントに課すことは、本来、「屈辱」であるはずだ。
 そうしたことも含めて、こんなコメントを新聞に掲載してもらっている。

********************
 甲南大学法科大学院の渡辺修教授(刑訴法)は「自分の体験を踏まえて被告の心情を聞き出そうとする質問を遮るのは、裁判員制度の意義を台無しにする訴訟指揮ではないか」と述べたー西日本新聞2010年1月29日(朝刊)ー


2010年03月27日

■裁判員裁判と司法通訳ー新潟の記事から

■ 毎日新聞 2010年3月14日(新潟版)扱いのネット配信記事で、ロシア人被告人が2009年7月に約4。7キロの覚せい剤を貨物船から陸揚げしたとして起訴された事件について、審理前の報道をしている。
 テーマは、「裁判員裁判:県内初、16日初公判 ロシア人被告、発言正確に伝わるか」である。
 記事によると、「県内初の裁判員裁判が16日から始まる。15日、裁判員6人と補充裁判員4人が選ばれ、16日に初公判、25日に判決が言い渡される。今回の事件の被告はロシア国籍の男で、ロシア語の法廷通訳人が1人選任される予定。短期間の集中審理で通訳人の負担は重いとみられ、「レベルを保つために、通訳は複数選任すべきだ」と指摘する専門家もいる。通訳を経た外国人被告の発言のニュアンスが、どこまで裁判員に正確に伝わるかが焦点の一つとなっている」。
 被告人は、運んだものが覚せい剤との認識はなかったと主張する予定であったとされ、現にその後の公判廷でも無罪主張であった。
 結果として、裁判員。裁判官は、「知らなかった」とする被告人の主張を退けて、有罪を認定。
 懲役10年、罰金300万円を宣告した(なお、検察官の求刑は、懲役13年、罰金500万円であった)。
■ところで、毎日新聞のネット記事の中で気になる取材内容があった。引用する。
 「選任される予定の通訳人は、休憩を含めて1日最大7時間、計6日間の通訳を1人でこなすことになる。新潟地裁は「全体の審理計画から裁判長が『1人で対応できる』と判断した」と説明する」。
 これは、疑問だ。
 「正確、的確な通訳」を保障する上で、はっきりいって無謀といっていい。
 疲労に伴う誤訳は最小限度避けなければならない。一人通訳人に委ねるのは、極めて危うい。
 そこで、こんなコメントを同紙に掲載してもらった。

■裁判の通訳問題に詳しい渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「通訳人がペアでチェックしなければ、漏れや誤りがそのままになる危険性がある」と不安視する。とりわけ今回のように起訴内容に争いがある場合、「通訳のゆがみが事実認定に影響する可能性もある」と指摘。「裁判官は休憩をこまめにとるなど、通訳人に十分配慮してほしい」と話す。

■同じ事件について、本ブログのコメンテイター、まきこ先生は、読売新聞2010年3月9日(新潟版、ネット配信記事)、「通訳公判中1人きり」と題する記事の中で、次のようなコメントを掲載している。
 「有罪・無罪、量刑を決める重要な材料になるのが被告の供述。通訳人が微妙なニュアンスを伝えられるかで、裁判員らの心証形成は左右されかねない。法言語学者らでつくる「法と言語 学会」が模擬裁判を通じて行った実験では、通訳人が誤訳なく作業できたのは30分間。30分を超えると通訳漏れが現れ始め、45分以上で、間違った単語を使うようになったという。
 昨年12月に千葉地裁で3日間、法廷通訳を務めた女性(39)は、「裁判員裁判は通常より2〜3倍疲れた。疲れるほど集中力が切れ、誤訳もあり得る」と振り返り、「誤訳すれば被告の一生を左右しかねない」と危惧(きぐ)する。
 法廷通訳に詳しい金城学院大学・水野真木子教授は、「通訳の情報漏れはミスリードにつながる。裁判所は法廷通訳の疲労が蓄積しないような審理をするべき」と警告する。第1号事件の通訳人は1人だが、水野教授は「ミスを防ぐためには最低でも2人は必要」と話す。」

■ 「即時、正確な通訳」。
 司法通訳の水準維持に関する法律家の感覚は日本では鈍すぎる。
 島国日本の鎖国文化がながく尾を引いてるのかもしれない。
 しかし、刑事裁判は、正義の場。被告人には、「質の高い通訳」によって裁判を理解する権利が保障されなければならない。
 それにふさわしい通訳人を確保すること。
 裁判員裁判で正義を実現するには、これが最低限の条件だ。

2010年01月24日

■法廷通訳研修会ー多元主義の徹底のために

 1月22日の「14法科大学院『不合格』」記事を間に挟んで今日24日まで慌ただしい中にも、意義のある時間を過ごしている。
 24日は終日、西鉄イン福岡2階のホールで、「法廷通訳研修会」を開催。各種言語を学ぶ60名あまりの参加者とともに、裁判員裁判の意義、裁判員裁判における要通訳事件の問題点、通訳人の行動ルール、「あいまいな表現」「主語のない表現」などの通訳に拘わる通訳技法、日本文化とコミュニケーションの理解の仕方の差などなど多彩な角度から裁判員裁判と司法通訳の問題を点検した。
 前日23日に西南学院の法廷教室を拝借して行った模擬裁判員裁判について、西日本新聞10年1月24日(朝刊、福岡ワイド)で写真とともに紹介がなされた。今回は、アフガン人の男性が同棲中の女性に暴力を振るい続けていたため逃げ出して他の男性のところにいたところ、ここに乗り込み脅迫など行い1月後には放火に及んだというものだ。
 被告人はアフガン人。すこし日本が分かるようになってきているが、むろん裁判のやりとりまで理解できる力はない。だから、裁判所も通訳人を選任する。
 他方ー現実にそうであってほしいのだがー聴覚障害のある人が裁判員になった場合、どうなるのか。これもあわせて手話通訳者集団に実地にやってもらうこととした。
 模擬裁判員裁判研修を踏まえて、こんなコメントを掲載してもらった。

■西日本新聞(朝刊、福岡ワイド)10・1・24
 「研究会の渡辺修甲南大学法科大学院教授は「プロの裁判官と違い、裁判員は通訳の印象をより受けやすい。研修を重ね通訳の質の向上につなげたい」と話した」。

■朝日新聞(朝刊、西部本社版)、10・01・24
 「同様の勉強会を東京、大阪、名古屋で開いてきた甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は、勉強会後、『裁判員裁判は法廷のやりとりが中心。わずかな通訳のズレが事実認定や被告の印象のゆがみにつながる危険性がある』として、法曹三者、通訳者ともに意識の向上が必要だと指摘した」

2009年10月08日

■裁判員裁判と司法通訳の実際ーポーランド語法廷傍聴記

□1:大阪地裁で、覚せい剤の営利目的密輸罪で問われたポーランド国籍の被告人に対する裁判員裁判が行われた。
 以下、若干の感想をまとめる。
 まず、通訳人に当たられた方のバックグラウンドなどはもちろん分からない。ただ、日本語に誠に堪能であり、また、裁判長の求める過密なスケジュールをこなして真剣に法廷通訳にあたられたことに心から敬意を表したい。 

□2:09年10月03日、毎日新聞(朝刊)は、「裁判員裁判:法廷通訳1人に「不安」 /ポーランド語、3日間−−大阪地裁、5日から」とする前触れ記事で、「大阪地裁で初めての要通訳事件となる裁判員裁判が5〜7日、開かれる。被告は自称ポーランド国籍の男で、ポーランド語の法廷通訳1人が3日間の審理に対応する予定。通訳経験者や大阪弁護士会は「裁判員裁判は短期間の集中審理で通訳の負担が増え、誤訳を生みかねない」として複数人選任の必要性を訴えており、「1人で対応できるのか」と不安視する声もある」と問題を提起した。
 今回の事件は、ポーランド籍の被告人が、スペイン、南アフリカそしてカタールを経て、関空へと旅立ち、約990グラムを密輸したものである。まだ24歳の青年である。
 母国で契約社員として働いていたが、給料が安く、他方、恋人に「愛だけでなく、お金もほしい」と言われて「みじめでくやしい」思いに駆られていたところ、ポーランド国内に違法なものを運ぶ手伝いをすれば報酬がもらえると会社同僚に誘われたというものだ。
 一度スペインに出国するが、南アフリカに荷物を運ぶことを求められ、さらに日本へと運ぶよう口説かれたという。
 本人の弁解では、いやいやである面と、報酬がほしい面と、恋人を殺すと脅かされたこととが相まって、指示に従ったという。

□3:上記記事の段階では、通訳人の配置について、法廷通訳の経験もある専門家の長尾ひろみ・神戸女学院大教授(通訳学)は「裁判員裁判は口頭説明が増えるため、より集中力が必要で、1時間以上続けるのは困難。交代要員が確保されていなければ、通訳の質が保てるか疑問だ」と指摘したと紹介されている。これに対して、ブログ編者は次のようにコメントした。

■「一方、通訳問題に詳しい渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は『複数人いればよりいいが、今回の日程なら休憩を適切に取ることで1人でも対応可能と思う。裁判官、検察、弁護側が通訳人に配慮することが重要だ』と話す」。

 しかし、ふたを開けてみてこのコメントについては、修正を要すると思っている。
 というのも、通訳人がまじめにがんばりすぎるからである。
 審理2日目。被告人質問。弁護人の主質問が50分ほど続き、15分の休憩が入る。これはそのまま休憩に使えたと思う。ところが、検察官の反対質問が長引く。75分ほど続いた。一度途中で、裁判長が「長引くようなら休憩を入れます」と言いつつ、自らも時間管理、スケジュール管理に負われている様子をありありと見せる。通訳人は「大丈夫です」と答えた。かくして長時間の質問とその通訳が続いた。
 次に、弁護人の再主質問と続くところで、休憩を入れることとなった。しかし、午前中に論告求刑、弁論まで終える予定でいたのであろうか、裁判長が時間に焦っている様子がさらにありありとする。それでも10分休憩すると宣言した。しかし、通訳人と弁護人には、その間に質問内容を打ち合わせておくように指示をした。通訳人は休憩をとれなかったはずだ。
 彼の疲労度は、外目には明らかだ。話す日本語にも切れがなくなっている。母国に残した恋人と、スペインにいるときに、南アフリカ行きを拒んでいた被告人に、電話をかけてきて恋人を殺すと脅した女性との「関係は?」という単純な質問に対して、被告人が的外れの説明をながながとしはじめた。おそらく、なにか通訳段階ですれ違いがあったと思われた。それが正しいとしたら、理由は、疲労 であろう。

□4:今後、否認事件、共犯事件など複雑な要通訳事件が行われるだろう。そのときに、円滑、正確、的確な通訳の保障をするために、法律家が、通訳の技法と限界をよくわきまえて、法律家ペースの法廷運用ではなく、通訳人を意識した運用をもっとこころがけるべきだ。今回、通訳人の休憩時間確保について、検察官も弁護人も無関心であったが、もっての他だ。『一発勝負』の直接主義法廷において、裁判員に「誤訳」を万が一にもで聞かせてしまったら、真相解明が台無しになる。それが、両法律家に共通の関心事であるべきだ。今回も、量刑事情については大きな争いがあった。それがなお妥当な結論に至ったのは、通訳人の見事な力量と市民たる裁判員の良識に助けられた。
 法律家のわがままな法廷運営は改善すべきだ。

□5:09年09月07日付け長崎新聞は「裁判員裁判/初の外国人被告/「通訳」影響に注目/あす、さいたま地裁」と題する共同通信配信の記事中で、次のような紹介をしていた。
「さいたま地裁で8日、初めて外国人被告の裁判員裁判が開かれる。審理は連日行われ、判決は11日の予定。通訳を介し審理時間が倍増することによる裁判員の負担や集中審理による通訳の負担、通訳のニュアンスが裁判員の心証にどのような影響を与えるかに注目が集まっている。
 審理されるのはフィリピン人の元少年(20)が昨年12月、知人2人と共謀し路上で通行人を殴り現金などを奪ったとされる2件の強盗致傷事件。地裁によると元少年は起訴内容を争っていない。
 地裁はタガログ語の通訳2人を選任予定で、これまで大半の刑事裁判は通訳1人だったのに比べ強化。2人が交代で通訳を担当し、親族の証人尋問や被害者の意見陳述など3日間連続の集中審理をこなす」。
 このとき、次のようなコメントを掲載してもらったが、やはりこの原則に従って、通訳人配置を実施するべきで、それには、「ペア通訳」の実現が不可欠だ。
**********
■法廷通訳に詳しい甲南大法科大学院の渡辺修教授は「口頭主義が徹底する裁判員裁判では通訳の微妙なニュアンスが量刑に影響を与えることも予想される。法廷通訳の重要性はこれまで以上に高まった」と指摘する(09年09月07日長崎新聞)。

*写真は09年09月27日に大阪で実施した裁判員裁判向け司法通訳研修会の模様。長尾教授のメモ取りの解説。


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2009年08月29日

>■裁判員裁判と通訳人ー外国人の居る法廷(2)


090827_kyoto_00.jpg 先日、M大学法学部准教授のH・S准教授(法コンテキストにおける言語使用の分析、英語と日本語の統語論・語形成論等専攻)、政策研究大学院大学准教授のF・M准教授(と経済学,法社会学,法と心理学, 社会心理学等専攻)、そして金城学院大学のM・M教授と一緒に衣笠の民家を改造した和風料理の店で昼食を囲んだ。
 螺旋に開く弁当箱に工夫を凝らした盛りつけ、繊細な和食の味わい、野菜中心の京料理、、、カウンター席でも落ち着くしつらえ等など楽しいひとときであった。
 そんなメンバーの集まりがいま検討をはじめているのが、裁判員裁判における「言語」の問題である。
 特に、MM教授、ブログ編者の関心は、通訳を介する言語のインパクトにある。
 東京で行われた裁判員裁判第一号事件で、被害者像について、弁護人の冒頭陳述で次のような説明があったと報道された。
****************
(1)被告人は午前11時ごろ、被害者に
  「ペットボトル倒したら直しておいて
  くれ」と注意した。それに対し、被害者は
  逆に「おれがやったんじゃねぇ。てめぇが倒しといて人のせいにするんじゃねぇ」と怒鳴り返した。
(2)被告人は腹を立て、被害者の前でナイフのさやを抜いた。被害者はひるむどころか、「やるのか。やるならやってみろ」と言いながら被告人につかみかかろうとした。その瞬間、被告人は「刺すしかない」と思い、ナイフを被害者に向けて突きだし、結果として左胸の上部の辺りを刺してしまった。
(3)被告人は人が死ぬかもしれない行為を行っている認識はあったが、「死んでほしい」とは思わなかった。そのため、とどめをさすような行為は行っていない。
*******************
 被害者は高齢の女性である。しかし、(1)のセリフが真実であるとすれば、気の強い、口も立つし、かなり乱暴な物言いをする女性、、、被告人にもつけつけと言い返す、そんな光景が浮かび上がる。
 しかし、これも通訳次第では、
 「私はやっておりません。ご自分で倒されたのでしょう。それを人のせいにはできません」
 といったニュアンスの置き換えになる。
 ”Register”の一致が、通訳の大原則であるが、裁判員裁判では、ことの他、この点の確実な通訳が必要だ。そうでなければ、裁判員は、あやまった人物像を抱いて評議室に移り、そこで、量刑を判断することとなる。
 裁判員時代にこそ、質の高い通訳の保障がことさら求められると思う。
 そして、法律家が、"interpreter conscious"であることも必要になる。
 裁判員裁判における通訳の質向上、、、これを今研究テーマにして理論と実践の架橋を考えている。

*京料理『柚多香』
電話 075-465-7370
住所 京都府京都市北区平野 桜木町13-3

2009年08月26日

■裁判員裁判と通訳人ー外国人の居る法廷


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 8月23日、大阪商工会議所で、「法廷通訳研修会」を開催した。
 裁判員裁判が始まると同時に、要通訳事件が次々と裁判員の前に出てくることは目に見えていた。
 しかし、最高裁は、通常事件での模擬裁判は何度か行ったが、要通訳事件について、公に問題関心を示して、通訳人の習熟のための場を提供するまでの準備はしてこなかった。
 だが、埼玉、東京、大阪などなど各地で外国語通訳を要する事件の日程が決まっている。
 やがては、要手話通訳事件も始まるだろう。
・・・
 従前から、司法通訳の質の向上に関心をもち、諸外国の研究なども行ってきたので、裁判員裁判導入を踏まえて、再度、全国で、法廷通訳研修を始めることにした。
 10年ほど前にも、同じ企画で全国巡業をしたこがある。
 今回もそれとほぼ同じメンバー。
 ただし、大阪弁護士会のI弁護士が参加。中心になって動いてくれている。
・・・
 さて。
 何が問題か。
 「公判中心主義」「直接主義」「口頭弁論主義」
 「継続審理、即日評決」、、、こんな運用が実現すること、ここに通訳問題がある。
 つまり、「誤訳」がダイレクトに直ちに評議室の中に持ち込まれて、そのまま誤った判断を導く危険性が出てくる。
・・・
 ではどうするか。
 「通訳人の居る法廷」を法律家が常に認識すること。他方で、「質の高い通訳人」を確保すること。
 シンプルな原理に戻ることだ。
 そして、そのためには、通訳人サイドについて言えば、継続研修ー自己研鑽しかない。
 その場を提供していきたいと思う。
・・・
 次回9月26日、27日には東京で開催する。

http://www.t-ikeda.com/houtei-tsuyaku.html

2008年12月14日

■裁判員裁判ー手話通訳者の居る法廷 by Gishu

■朝日新聞が連載している「裁判員時代」の08年12月8日朝刊掲載分には、「法廷の手話通訳、難題 用語難解、要員足りず/山口地裁で試行」というタイトルがついていた。
 山口地裁で試行された手話通訳を必要とする裁判員裁判の模様について、次のように、紹介している。
 記事によると、今月2日までに全国の地裁で開かれた模擬裁判は524件。うち聴覚障害者が裁判員役で参加したのは今回で4件目。九州・山口では初めてだった。そこで、次のようなコメントを載せた。
***朝日新聞(朝刊)08年12月5日****
  渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「手話は具体的なものを表すのに適しており、観念的なことを伝えるのは難しい。手話通訳士が法律問題について体系的な研修を受けられるよう態勢を整える必要がある」と話している。

2008年07月05日

■外国人と裁判員裁判ー司法通訳 by GISHU

■外国人の居る法廷。
 朝日新聞(大阪本社版)、2008年7月3日朝刊に、同誌が連載している「裁判員時代」と題する記事が載った。今回のテーマは外国人裁判である。
 実は、ブログ編集者の研究テーマの一つである。今年6月から8月にかけて簡単な勉強会を連続でやってみることにした。

■記事引用紹介。
 そのことも含めて、次のような記事になっている。やや長いが引用して、紹介する。
***<朝日新聞08年7月3日33頁引用>***

saibanin_foreign.jpg 甲南大法科大学院(神戸市東灘区)の模擬法廷に今月初め、関西一円の裁判所で働く法廷通訳ら約20人が集まった。裁判員裁判で外国人が被告や証人になれば、どんな問題が生じるのか。模擬裁判を通じて課題を検討する初めての勉強会だ。
 放火事件で目撃者となったペルー人への証人尋問を想定。通訳の女性は、裁判官と裁判員役が並ぶ法壇に背を向けて、証言台で証人が話すスペイン語を口頭で訳した。
 すると、通訳から最も離れた位置に座った裁判員役から注文が出た。「証人が通訳の方ばかり向いて話すので、表情がよく見えない。証言を信じていいのか、判断に困ることもある」
 勉強会を呼びかけた渡辺修・甲南大法科大学院長は「裁判員裁判は法廷でのやりとりが中心。通訳が訳した言葉や座る位置が適切かどうかで、裁判員の心証を大きく左右するだろう」と指摘する。
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■裁判員裁判と司法通訳ー雑感
 このこと、今後とも継続して検討する。研究会を通じて気のついたことを少し挙げておく。
(1)通訳人の位置が難しいー律儀な日本の裁判官は、従来型にこだわると推測する。しかし、被告人の目の前に通訳人をおくと、外国人は通訳人とアイコンタクトをとりながら話をする。
 つまり、裁判員とのコミュニケーションがとれなくなる。また、外国人のアイラインを法律家がコントロールできなくなる。自ずから、プレゼン力が弱くなる。
(2)たたみ込んだ反対尋問。
 弁護人が証人に反対尋問をするとき、証言の信用性が確かに崩れた、と裁判員にもわかってもらうのには、一定のリズムとテンポが必要だが、それが、通訳が介在するために、緩慢になる。反対尋問の効果が薄らぐ。
(3)礼儀正しい被告人。
 register
つまり、外国人の話す言語の「次元」と同一の日本語に置き換えるのは、きわめて困難だ。理由のひとつは、教養の高い通訳人に、ブロークンな日本語を使った通訳を期待できにくいことだ。
 そこに、原語と訳語のギャップが生まれ裁判員は、日本語のみ基礎に心証を形成するため、被告人の本当の姿との間にズレがでてくる。

■外国人の居る裁判員裁判の問題は各方面で検討が始まったばかりである。
 今後に期したい。
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