2015年08月09日

乳児「窒息死」事件と逮捕権限濫用

残念な記事が大阪読売2015年8月6日(朝刊)に紹介されている。
 「乳児『窒息死』と特定/新潟地検/施術の元理事長逮捕」
 「新潟県の男児(当時1歳)にマッサージのような施術をして死亡させたとして、新潟地検がNPO法人元理事長を逮捕した事件で、同地検は5日、検察審査会による『起訴相当』の議決後に男児の死因を窒息死と特定できたことが逮捕の決め手になったことを明らかにした。同地検はいったん元理事長を不起訴にしていたが、大阪地裁が4日に別の男児の事件で有罪判決を言い渡した直後に逮捕した。
 新潟県の男児は2013年2月、同県上越市のNPO法人(解散)元理事長・姫川尚美被告(57)の施術を受けた後に死亡。新潟県警が同年11月、姫川被告を業務上過失致死容疑で書類送検し、新潟地検が翌12月、不起訴(嫌疑不十分)にしたが、新潟検察審査会が今年6月5日付で「起訴相当」と議決した。
 新潟地検の稲葉一生検事正は不起訴の理由について「司法解剖など必要な捜査はしたが、当時は死因の特定が困難だった」と説明。議決後に捜査をやり直した結果、窒息死と特定できると判断し、施術が死亡を招いた業務上過失致死の疑いが強まったとした。ただ、窒息死とする根拠は明らかにしなかった。
 一方、姫川被告は今年3月、神戸市の生後4か月の男児を死亡させたとして業務上過失致死容疑で大阪府警に逮捕され、4月から大阪地裁で公判が始まっていた。今月4日午前、禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決が言い渡されて釈放されたが、閉廷から数時間後、新潟地検検事が大阪地検の庁舎内で逮捕したという。
 検察審査会法は、議決から原則3か月以内に起訴するかを判断するよう検察に求めており、新潟地検は今後、刑事処分を決める」。
■ 新潟地検の逮捕は暴挙であり許し難い。刑事裁判は真相解明を前提にして,犯行の重み,被告の処罰の要否を判断して量刑を決める。今回の執行猶予付有罪判決でも過失の重みを判断する際に新潟の事件を経験したことも考慮され,量刑でも言及されているなどしており,重ねて裁判にかけて有罪にすることは,実質上二重処罰に等しい。
 同時に審理すれば,二度同じ事件を繰り返した被告にふさわしい量刑も期待できたはずで,執行猶予であったとしても禁錮ではなく懲役に,またより長期の刑罰が科された可能性も否定できない。
 国家機関である検察庁が強制捜査を予定しておきながら,同種事件の裁判の終了を待って直ちに被告の身柄を拘束するのは,被告の防御の利益を踏みにじる一方で,刑事裁判で真相を明らかにし事件全体にとって相応しい厳正な刑罰を実現することを期待する国民の信頼を裏切るもので,訴追権の濫用だ。被告側は,起訴されても,公訴権の濫用として手続打ち切りを強く求めるべきだ。
 市民が参加する検察審査会の意向を反映して再捜査をするのは検察庁の当然の責務であるが,法律のプロとしての責任で行うべきで,裁判所が反省し更生の余地があると認める被告を,再度同種事件で逮捕するなど正義の実現にはほど遠いし,被告の改善更生にも全く役に立たない。必罰を狙う今回の措置は納得できない。
■ 掲載コメント
 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「二つの事件を併合して審理していれば、執行猶予が付いても禁錮刑より重い懲役刑になった可能性がある。一方で、別々に審理されると被告が事件全体を踏まえた主張をしにくくなり不利益にもつながる。大阪、新潟両地検はもっと連携して対応すべきだった」と話している。
posted by justice_justice at 08:13 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。