2015年08月07日

■裁判員裁判の落とし穴ー審理のやり直しはできるか?

●中国新聞2015年7月7日朝刊は,次のような興味深い事例を紹介している。
 「東京地裁(田辺三保子裁判長)で開かれた強盗致傷事件の裁判員裁判が3月から約4カ月間ストップし、6日に一部の裁判員を選び直したことが分かった。裁判員の入れ替えは異例。審理中断は、被告が起訴内容を認めた後に新たな争点が浮上し、進行を見直す必要が生じたためだった。7日に再開する。
 再開後は、元の裁判員と新しい裁判員の前で冒頭陳述などをやり直す。既に終えた証人尋問は、やりとりを録画したDVDを法廷で再生する。
 被告のルーマニア人の男(26)は、東京都世田谷区の信用金庫前で、男性から現金4300万円が入ったかばんを奪ったとして強盗致傷などの罪に問われている。3月にあった公判に被害者の男性が証人として出廷。弁護側は、男性の証言はかばんの形状が実際と異なり、信用性に疑いがあるとして、起訴内容を争う方針に転換した。
 検察側がこれに応じ、追加の証拠提出などに時間を要するとしたため公判は中断。この後、裁判員と補充裁判員計8人中3人が辞任を申し出て地裁が解任した。開廷に必要な人数を下回ったため、地裁は今月6日、裁判員と補充裁判員計4人(1人追加)を選び直した」。
●やはり疑問が残る。そもそも強盗事件の被害品の存在と形状について客観的に食いちがいがあったのに,被告人が基礎内容を認め,後にその点が公判の進行途中で争点として浮かび上がってくると言うのは,公判前整理手続段階の準備不足の観を否めない。他に,やむを得ない事情があったものかどうかは,新聞取材の限りでは分からないようだ。ともあれ,理由がなんであれ,一部の裁判員のみ交代させる審理形式は適切ではない。プロの裁判官の交代と同じ発想方法で裁判員の交代を認めることは裁判員の間に情報の格差を生じるし,ないよりも,一緒の法廷で一緒に確認した情報のみを証拠とするという公判中心主義,そして,厳格な証明手続による立証を経て事実を認定する自由心証の根本を覆すものだ。
 相当期間の延期が見込まれた段階で,日本で言えば,いったん公訴棄却とするなど手続を打ち切る処置をするべきだ。また,将来は,かかる場合に備えて,「審理無効宣言」を宣告する裁判形式を採用するべきだあろう。
 とまれ,こんなコメントを掲載してもらっている。

●甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「被害そのものが公判開始後に議論になるのは公判前の準備不足だ。裁判員は既に有罪という前提で審理に臨んでおり、原理原則からすれば、起訴をいったん取り消して、完全にゼロから裁判を実施するのがふさわしい」と指摘している。
posted by justice_justice at 07:17 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする

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