2014年01月25日

■被害者氏名の秘匿ー逮捕状から起訴状へ

■「被害者保護に法の壁/逮捕状は匿名/でも起訴状は実名」
読売新聞2013/03/05(朝刊)
 被害者保護と被告人防御の対立する問題点再論。
 逮捕状=匿名
 起訴状=実名
 この矛盾(?)を解決する方法はない。
***引用****
 ◆刑訴法「事実を具体的に」 逗子ストーカー 教訓の対応に差  
 神奈川県逗子市のストーカー殺人事件を教訓に、被害者保護のため逮捕状では被害者の実名が伏せられた一方で、起訴状には記載されるという対応の違いが生じている。刑事訴訟法では、起訴状には起訴事実を具体的に記すと定めており、専門家からは、氏名や居場所を特定されたくない被害者のために何らかの対応が必要だ、との声も上がる。
 このケースは、茨城県警が1月に同県内で摘発した営利目的等略取未遂事件で生じた。男が面識のない少女に包丁を突き付けて、車で連れ去ろうとしたとされる。男は逮捕時、容疑を認めたという。
 県警は男の逮捕状を請求する際、書類で少女の実名を伏せ、「女子中学生」と記した。少女の居住地は人口の少ない地域であるため、県警は水戸地検と協議し、「名前が分かれば住所も容易に特定される」とし、地検も匿名で勾留請求した。
 しかし地検は、起訴状には実名を記載。「裁判所が『事実を特定できない』と起訴を認めず棄却となる恐れもある」との判断だった。
 起訴状は男に送られた。地検幹部は「勾留請求では、匿名で出しても、後で実名に訂正するなど取り返しはつくが、起訴状の場合はそうはいかない」としている。
 兵庫県警は昨年12月、ストーカー規制法違反などの容疑で男2人を逮捕した際、逮捕状の被害者名は伏せ、本人の顔写真を添えた。神戸地検姫路支部は、起訴状では被害者名を片仮名で表記した。同地検は逮捕状が匿名だったことに配慮したとしている。
 逗子市の事件は昨年11月に発生。被害女性は自宅アパートで元交際相手の男に刺殺されたとされる。これより前、神奈川県警が女性への脅迫容疑で男を逮捕した際、捜査員が逮捕状に記載された被害者の名字や住所の一部を容疑者に読み上げ、住所特定につながった可能性があるとされた。
 警察庁は昨年12月、性犯罪など再び被害を受ける恐れがある場合、逮捕状で匿名にするよう通達した。同庁幹部は、「その後の手続きは検察庁、裁判所の法解釈、判断に委ねられる」と話している。
******
 識者の意見も分かれるだろう。記事は,こんな見解を紹介する。
○「被害者名も含め、審理の対象を特定するのは刑事訴訟法の基本原則」(ベテラン刑事裁判官)。被告人には起訴事実に反論できる「防御権」があり、それは事実が具体的に示されてこそ担保される。
○諸沢英道・常磐大教授(被害者学) 「争いのない事件なら年齢や学年、住所など被害者を特定できる最小限の範囲だけを示すことは可能ではないか。事件の特殊性を考慮し柔軟に運用するべきだ」
○元最高検公安部長の馬場義宣弁護士 「被害者が誰か識別できれば実名を記さなくていい、との解釈はできる」,「柔軟な対応にも限界がある。法改正などの対応が必要」。

 被害者名が匿名である場合,示談はほぼありえない。被告側がしんしに反省していても,これを被害者に届けることは事実上無理。
 他方,氏名開示は,事案によっては,報復ーストーカー行為の危険が残る。
 しかも「無縁社会」が影響する。 被害者も社会に孤立して生活していることが多い。匿名性を確保しなければ,ほんとうに保護される囲みを失う。警察が直接保護しなければ本当に防波堤を失う。
 といって,防御の手がかりを被告人に与えない裁判は,えん罪の危険をはらむ。
 今現に裁判でえん罪の危険にさらされている被告人か,あるいは,将来,二次被害にあうおそれのある被害者か。選択が難しい。
 むろん,観念的には,事件の性質,被告人の性状など鑑みて,専門家が,二次被害の危険性の有無を判断して,警察・検察・弁護人に助言できるといいのかもしれないが,夢物語である。
 やっかいな時代になったものだ。では,どちらを優先するべきか。
 コメント時点では,次のように記事に掲載した。

■渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)
 「匿名では被告側は被害者との示談交渉ができず、否認の場合のアリバイ立証などの防御権を侵害する」と指摘。「検察の裁量だけで起訴状を匿名にするのは無理」
posted by justice_justice at 10:41 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。