2014年01月20日

■「黙秘権」を考えるー日米の違い

■「ボストン爆破黙秘権で論議/危険差し迫れば告知せず/容疑者重傷/別の事件の恐れ低く/日本はずさん/『権利として認識を』」東京新聞2013/04/24(朝刊)
 黙秘権を巡るアメリカならではの記事が載った。興味深いものであった。
 長いが検討材料にもなるので,引用する。

***引用***
 米ボストン・マラソン連続爆破テロ事件で、米連邦裁判所に起訴されたジョハル・ツァルナエフ被告(19)に対し、黙秘権を告知するか否かが論議の的になった。捜査筋の話から一時は「黙秘権を認めず」といった報道もあったが、結局は告知された。告知するか否かには、どんな境界があったのか。(出田阿生)
 米国では、警察官が取り調べ前に容疑者に黙秘権などを告知しなければならない「ミランダ警告」というルールがある。これは身体拘束が伴う事情聴取に適用される。
 ボストン事件では当初、「米連邦捜査局(FBI)がジョハル容疑者に対し、ミランダ警告の手続きを省く方針」と米紙などが報じた。最終的には二十二日、入院中の容疑者の病室に裁判官が出向き、ミランダ警告を伝えた。裁判所の記録によると、ジョハル被告はのどを負傷して会話はほとんどできないが、うなずいて確認したという。
 ミランダ警告には次の内容がある。「黙秘権がある」「供述は法廷で不利な証拠として用いられることがある」「弁護士の立ち会いを求める権利がある」「自ら弁護士を依頼する経済力がなければ、公選弁護人をつける権利がある」−だ。
 きっかけは一九六六年の米連邦最高裁判決にある。強姦(ごうかん)罪などでアリゾナ州裁判所から有罪判決を受けたアーネスト・ミランダ被告が「弁護士同席の権利を知らされず、自白を強要された」と訴え、有罪判決は破棄された。その後、告知が義務付けられた。
 警告なしでは自白は裁判で使えない。だが特例がある。「公共の安全」に差し迫った危険性が認められるケースだ。刑事弁護に詳しい高野隆弁護士は「今回の容疑者は重傷を負い、続けて別の爆破事件が起きる恐れも低い。警告の例外とならなかったのは別に不思議ではない」とみる。
 例外中の例外がある。二〇〇一年の米同時中枢テロ後、ブッシュ政権が設けた「敵性戦闘員」扱いだ。「テロリスト」とされた人々をキューバのグアンタナモ米軍基地に無期限に拘束した。今回も同様の扱いを求める声もあったが、国際テロ組織アルカイダなどとの関連は確認されず、適用外にされたとみられる。
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 記者は記事の最後に「日本でも黙秘権は、権利として憲法や刑事訴訟法で保障されている。しかし、米国ほど厳格に認識されたり、扱われていないように見える」とコメントを挿入している。
 「黙秘権」が軽い理由。それは,簡単なのだ。「お上に白状する文化」。これが少なくとも江戸時代以来確立した刑事裁判を巡る我が国の伝統になっている。「白状」。そして「反省と後悔」,更生への決意。これが,お上の裁きのありかたであり,だから,白状しない者は懲らしめなければならない。「お上はなんでも知っている」。その筋道にそった自白を強要するのは正しいことだー日本的な拷問正当化の理由。
 裁判員裁判がはじまった。ところが,およそ米国型陪審ではありえなかった。そもそも,争っている事件でも,裁判員は全員が,「被告人の説明」を期待している。彼・彼女が「黙秘する」などとは想像だにしていない。つまり,有罪を立証するのは検察官の責務であり,被告人は,法廷を見守るだけでよい等という形は,想定外であろう。
 ミランダ警告など,日本では夢のまた夢である。
 「無理に言わんでもいいけれどな,正直に話ししや」。取調べにあたる警察官等の認識はこの程度だろう。「権利」として尊重する意識は薄い。
 それもやむをえない。
 テロを辞さない確信犯は滅多にいない。実はオウム真理教関連事件でも,完黙を貫いた例は聞かない。
 「黙る文化」はないし,尊重されない。
 黙秘権を軽く扱っているというよりも,刑事裁判の背景文化が全く異なるとみたほうがいい。
 せめても,黙秘権の意味を理解してもらうため,次のコメントを出した。

■甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑訴法)は「犯罪行為について口をつぐむことと誤解されがちだが、そうではない。市民が冤罪(えんざい)被害から身を守る最低限の権利だ」と説明する。身に覚えのない犯罪で逮捕され、曖昧な記憶で供述すると、捜査機関に「でっち上げ」の材料を与えることになりかねない。曖昧さを逆手に取られ「犯人」とされるケースだ。渡辺教授は「供述しないことが『権利』であることはあまり知られていない。だからこそ告知は重要」と話す。
posted by justice_justice at 05:17 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする

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