2014年01月06日

■裁判員裁判の「死刑」,裁判官裁判の「無期」ー市民v.裁判官(上)

 裁判員裁判制度の導入に伴い,市民が,市民に死刑を宣告する難しさがクローズアップされている。
 まず,こんなことがあった。

○「死刑に高裁が歯止め/裁判員判決破棄/先例重視踏まえる」
東京新聞(朝刊)2013/06/21
 
 この事件の経過を照会する。被告人は,1988年11月に千葉市内の自宅で妻=当時(36)=を刺殺した。さらに自宅に火をつけて娘=同(3つ)=を焼死させた。この事件で,千葉地裁は翌年11月、懲役20年を言い渡した。
 被告人は,2009年5月に服役を終え出所したが,同年11月に東京・南青山のマンションに侵入し、飲食店経営五十嵐信次さん=当時(74)=の首を包丁で刺し殺害した。
 この事件について,裁判員裁判となり,東京地裁は11年3月、死刑を言い渡した。
 ところが,裁判員裁判の死刑選択を,高裁が覆した。
 まず,記事を引用する。

***引用***
 強盗殺人罪に問われた伊能和夫被告(62)に死刑を言い渡した裁判員裁判の判決を破棄し、無期懲役とした二十日の東京高裁判決。これまで裁判員の「市民感覚」を尊重する立場を取ってきた司法だが、死刑という究極の刑罰を適用する場面で、行きすぎに歯止めを掛ける姿勢を示した。
 一、二審が割れたのは、伊能被告が過去に妻子を殺害し懲役二十年に服した前科に対する評価の違いから。一審は「二人の人生を奪った前科がありながら、強盗目的で被害者の生命を奪ったことは刑を決める上で特に重視すべきだ」と断じた。
 今回の高裁判決は「夫婦間の口論の末の無理心中であり、更生の可能性がないとはいえない」と指摘。「一審は前科を重視しすぎだ」と破棄の理由を示した。裁判員裁判で死刑判決が出た十九件のうち、二審で破棄されたのは初めてだ。
 裁判員制度の導入以降、一審尊重の傾向は明確だ。刑事裁判の控訴審で、量刑不当を理由に一審を破棄した割合は、制度導入前は5・3%だったが、導入後は0・6%に。
 ただ、この流れに反する今回の判決が出る素地はあった。最高裁の司法研修所は昨年七月、過去の死刑判決を分析した量刑評議に関する報告書を公表。死刑判断では先例を尊重すべきだと提言した。
 過去の裁判例では、被害者が一人の場合、無期懲役の仮釈放中だったり、私利私欲が動機の場合に死刑となったりする傾向が強かった。前科が有期刑だった伊能被告は明らかに違っていた。
******

■ 関係者のいろいろなコメントが興味深い。記事からまとめる。
 ○一審で裁判員を務めた男性ー「自分たちは評議を尽くしたが、プロの目で見て違った結論が出たのなら、それを受け止めたい」。
 ○原田国男・元東京高裁判事ー「死刑は他とは違う絶対的な刑だから、裁判員裁判を単に尊重するのではなく、必要なら見直すことも求められる」。
 ○伊能被告の裁判をほぼすべて傍聴した男性ー「死刑判断は慎重の上にも慎重を重ねるべきで、プロによる今回の判断は市民にとっても参考になる」。
 ○一審で無期懲役となった事件で裁判員を務めた別の男性ー「プロだけの判断で変わってしまうのなら市民参加の意味がないのでは」。

・ブログ編者のコメントは次の通りである。
■裁判員量刑尊重を
 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 東京高裁がプロの裁判官独自の量刑感覚を基準にして一審の死刑判決を破棄したのは不当だ。経験則・合理則に明らかに反する量刑判断の不当さを指摘できないのであれば、控訴審は裁判員裁判の量刑を尊重すべきだった。
posted by justice_justice at 07:19 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする

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