2014年01月04日

<弁護人として>ある殺人事件と裁判員裁判の「破棄」

■裁判員裁判=「感情司法」の打破と控訴審の機能ー控訴審弁護人の防御活動
 以下は,ブログ編者が控訴審弁護人として担当した事件の報道だ。
 一審の裁判員裁判では,以下の量刑理由で被告人を懲役20年にした。
 「不合理な弁解をして被害者の妻を始めとする多くの証人を法廷に引っ張り出すなど裁判を長引かせる一方で,被害弁償金を提供することにより,経済的に苦しい立場に置かれていると思われる被害者の妻を長らく板挟みの状況に置き,精神的に追い詰め苦しめていることは,行為責任の枠内で被告人の責任を重くする方向に働く」。
 これを「感情司法」と断じて,その破棄を求めた。
 他に,故意と共謀という刑法上の法律概念を適切に被告人に伝えない一審の法律家達の怠慢のため,被告人は自己の記憶する事件に関する認識では,故意もなく共謀もないと善意で信じてしまった。この点も,控訴審では問題視した。
 結果として,1項破棄ではなく,2項破棄となった。しかし,控訴審弁護人の目指すべき防御方針,一審判決の破棄,さらには刑の減軽には成功した。
***
■「大阪・阿倍野のネパール人殺害:2審、懲役19年判決/高裁、反省考慮し1年減刑/大阪」毎日新聞2013/11/28(大阪,朝刊)
 大阪市阿倍野区でネパール人の飲食店経営者を殺害したとして、殺人罪などに問われた建築工、I・H被告(23)の控訴審判決が27日、大阪高裁であった。米山正明裁判長は、求刑通り懲役20年とした1審・大阪地裁判決を破棄し、懲役19年を言い渡した。遺族と刑事和解が成立して弁償金が一部支払われたことを考慮し、「被害弁償の努力は軽視できず、反省が深まったと認められる」と判断した。
 判決によると、I被告は昨年1月16日、S・D被告(23)=1・2審で懲役19年、上告棄却で異議申し立て中=らと共謀し、阿倍野区の路上でDさん(当時42歳)を倒し、殴る蹴るの暴行を加えて殺害。さらにDさんの財布を盗んだ。
 1審でI被告は殺意を否認していたが、控訴審では殺人罪を認めていた。

《参考@ー一審の判決》
「ネパール人殺害、建築工懲役20年/大阪地裁判決【大阪】」
朝日新聞2013/03/29(朝刊)
 大阪市阿倍野区の路上で昨年1月、ネパール人の飲食店主が殺害された事件で、殺人と窃盗の罪に問われた建築工のI・H被告(22)の裁判員裁判の判決が28日、大阪地裁であった。河原俊也裁判長は「被害者を人間と考えていないような強烈な暴行を加え、財布を盗む卑劣な行為に及んだ」と述べ、求刑通り懲役20年を言い渡した。
 判決によると、I被告は昨年1月16日未明、帰宅中のDさん(当時42)を約200メートル追いかけ、顔や頭を殴ったり蹴ったりしたほか、自転車を顔に投げつけるなどして殺害した。被告側は殺意を否認していたが、「顔や頭を狙って攻撃している」と、判決は退けた。
 判決後、被害者参加制度を使って公判に出席したDさんの日本人の妻(38)が大阪市内で会見。「被告が罪の重さを分かっているとは思えなかった。刑が軽い、というのが正直な気持ちだ」と話した。

《参考Aー共犯者の事件》
「大阪・阿倍野のネパール人殺害:求刑年数上回る懲役19年確定へ」
毎日新聞2013/11/26(大阪朝刊)
 最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は21日付で、大阪市で昨年、ネパール人男性を殺害したとして、殺人罪などに問われた彫り師、S・D被告(23)の上告を棄却する決定をした。求刑を上回る懲役19年とした1、2審判決が確定する。
 裁判員裁判だった大阪地裁は「たまたま通りかかった被害者に何の理由もなく突然襲いかかり理不尽。執拗(しつよう)に暴行を続けており、特に悪質だ」として懲役18年の求刑を上回る判決を言い渡し、大阪高裁も支持した。
 1、2審判決によると被告は男らと共謀し、昨年1月、大阪市阿倍野区の路上でDさん(当時42歳)の顔や頭を殴り、自転車を投げ付けて殺害した。
posted by justice_justice at 07:21 | TrackBack(0) | ◇「弁護人」として | 更新情報をチェックする

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