2014年01月01日

■ある放火殺人事件の顛末ー21世紀が少し進んだ時代の,刑事裁判

●記事をふたつ引用する。
■1:「起訴できる証拠ない」/富山殺人放火/加野元警部補/焦る地検/捜査継続/25日に別件判決/釈放も」
北日本新聞2013/07/19(朝刊)
***引用***
 2010年4月、富山市大泉の会社役員夫婦が殺害され住居に放火された事件で、殺人などの容疑で逮捕、送検後、2カ月近く処分保留が続く加野猛元県警警部補(54)について、富山地検の幹部は18日、北日本新聞社の取材に対し「現時点では起訴できるだけの証拠がない」と述べた。元警部補が別に問われている地方公務員法(守秘義務)違反罪の判決が出る25日まで1週間を切った。判決は執行猶予が付く可能性が高く、地検が同日までに殺人罪などで起訴しなければ、元警部補は判決後に即日釈放される見通しで、地検は焦りの色を濃くしている。
 県警の捜査関係者によると、加野元警部補は殺人などの容疑を「30年以上の付き合いの積み重ねでやった」と認めたが、凶器のひもや、現場から持ち去った可能性がある被害者の財布、週刊誌「週刊文春」に送ったとされる犯行声明文入りのCD―Rが作成されたパソコンなどは見つかっていないという。
 地検は先月26日、亡くなった福田三郎さん=当時(79)=、妻の信子さん=同(75)=の遺族に対し「(元警部補の)供述が重要な証拠と矛盾している」と説明。有力な証拠が乏しいとされる中、県警と連携して捜査を続け、上級庁の名古屋高検とも協議を重ねるが、起訴の可否の判断にはなお踏み切れない状況だ。地検幹部は「今の状態(処分保留)がいいとは思っていない。一日も早く処分を決めるため鋭意、捜査を続けている」とこれまで通りの説明を繰り返した。
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■2:「遺族が検審申し立て/富山・殺人放火/『市民目線で判断して』」
北日本新聞2013/08/03(朝刊)
***引用***
 2010年4月、富山市大泉の会社役員夫婦が殺害され住居に放火された事件で、遺族が2日、殺人容疑などで逮捕された加野猛元県警警部補(54)を嫌疑不十分で不起訴とした富山地検の処分を不服とし、富山検察審査会(富山市)に審査を申し立てた。その上で富山市の県弁護士会館で記者会見し、「遺族全員が地検の処分に強い憤りを覚えている。事件を市民の目線で判断してほしい」と訴えた。 【関連記事33面】
 検審の議決によっては、元警部補が強制起訴される可能性もある。最高裁によると、強制起訴となる起訴議決が出た事件はことし6月末までに全国で11件あるが、殺人事件では例がない。
 申し立てたのは、殺害された福田三郎さん=当時(79)=と妻の信子さん=同(75)=の遺族5人で、4人の子と娘の夫1人。申立書では、元警部補は昨年12月に殺人容疑などで逮捕された際に容疑を認め、事件当時のアリバイもなかったため事件への関与は明らかとしている。福田さんの娘の夫は会見で、「検察から不起訴処分の理由を説明されたが、納得いかないことばかり。突っ込んだことも教えてもらえなかった」と、申し立てに踏み切った理由を説明した。
 また、県警と地検に対し、元警部補を取り調べた際の録画映像を検審に提出するよう求めた。さらに、週刊誌に届いた犯行告白文入りのCD―Rに関し、新たに懸賞金を出して情報を集める考えも示した。元警部補は自宅のノートパソコンでCD―Rを作成したと供述したとされるが、地検は供述とデータに食い違いがある点を不起訴処分の理由の一つに挙げていた。
 元警部補は7月25日、別の地方公務員法違反事件で富山地裁から執行猶予付き判決を言い渡され、釈放された。
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●編者のコメントを二つ引用する。

■1:「元警部補を不起訴/富山・殺人放火/識者コメント/やむを得ない判断/渡辺修甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)」
◇北日本新聞(朝刊)2013/07/25
 渡辺修甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法) 供述を客観証拠で支えられない上、自白も揺らいでいる状況では、裁判員裁判で市民の裁判員を納得させるのは無理だ。地検の不起訴処分はやむを得ない。また、疑わしい人物を逃走や証拠隠滅を防ぐために逮捕するのは捜査上必要なことで、逮捕自体に問題があったとは思わない。ただ、初動捜査の証拠収集などが十分だったのか疑問は残る。

■2「富山・夫婦殺害/元警部補不起訴へ/検審申し立ても」
◇産経新聞(夕刊)2013/07/24
 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話「犯人性を立証できるなら起訴したはずだが、積極的に矛盾するか、あるいはあるべき証拠が欠けている状況と推測される。殺人罪で起訴すれば裁判員裁判となるため、合理的疑いを残さずに裁判員を説得できないと地検は分かっているのではないか。今後は遺族が検察審査会に不服申し立てをし、市民の目で検察の処分の当否が判断されることになるだろう」

●2014年。21世紀が1割4分進んだ今。2014年1月1日。
 歴史的にはどんな状況と説明すべきなのだろうか。
 このブログでは,「刑事裁判」というニッチな世界を基本視点にして,「世界,日本,歴史,文化,政治,経済」を観察し,コメントを続けてみたい。

 さて。

 富山の元警察官を犯人と疑う事件の行方。警察捜査を検察がどうみるのか。
 市民参加型の検察審査会=公訴権行使の監視と代替(基礎強制権限行使)ができる機関の働き具合は,21世紀刑事司法,そして我が国社会のこれからを占う「市民主義」の先行きを探る格好のバロメーターだ。

 今後とも,注目して行きたい。

posted by justice_justice at 00:44 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする

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