2013年12月27日

■性犯罪の裁判と被害者の氏名の開示ー被害者のプライバシーと被告人の防御

■「被害者匿名の起訴状修正/地裁要請受け母の名追記/東京地検、女児わいせつ事件で」朝日新聞2013/09/12(朝刊)
 今年は,逮捕状,起訴状に被害者の氏名を記載するかどうかがおりおり問題となった。
 表題の記事では,次のように問題を提起している。
***引用***
 強制わいせつ事件の起訴状で、被害者保護の観点から被害児童の氏名を伏せた東京地検に対し、東京地裁(橋本健裁判官)が明記を求めていた問題で、地検は11日、代わりに母親の氏名と続き柄を追記する修正を行った。この日の初公判で地裁も修正を認めた。
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 性犯罪の起訴状で被害者を明記する必要性はどこまであるのか。
 もっというと,捜査段階で作成される被害者関係の調書などの捜査資料について,どこまで被害者の氏名などの特定事項を記載しておくべきか。
 実際に可能かどうかさておき,ファイルのトップにのみ被害者の特定事項を記載した書面を綴じ込み,後は事件番号で被害者を特定したり,甲乙丙などの記号で記すことも考えられる。
 ただ,被害の実在と被害者の実在,被告人の関与の立証にあたり,被害者の信用性を問題にするべき事件はある。その場合,被告側にとって,被害者の個人情報がないと防御ができにくくなる。少なくとも範囲が限定される。
 そのシンボルが,起訴状に被害者氏名を書くこと。が,防御上も重要か。
 被告側がそれまでの証拠開示で防御に十分な被害者情報があるのならば,敢えて起訴状の記載にこだわる必要はない。しかし,開示証拠でも被害者情報が不足し,防御に支障があるときには,起訴状も含めて被害者の特定を被告側は求めることとなる。これが明らかにならないのであれば,そもそも審判の対象が不明確であり,防御不能として,裁判手続自体の打切り(違法な公訴提起であるとして公訴を棄却すること)を被告側は求めることとなる。
 上記記事は続いて,次のように解説する。
***引用***  
 地検が起訴したのは、女児が公園の公衆トイレに連れ込まれ、わいせつな行為をされたうえ、撮影されたとされる事件。両親の強い要望や、女児が幼く、被告が面識のない男だった点などを考慮し、地検が5月に起訴した際、「被告がトイレに連れ込んだ児童」との表現にとどめていた。
 刑事訴訟法は「日時、場所、方法」によって起訴内容の特定を求めている。被害者名に関する定めはないが、従来は起訴状に盛り込むべき重要な要素とされ、記載するのが通例だった。このため、地裁は氏名の明記を検察側に要請。検察内部では「修正しなければ起訴の手続きが整っていないとして裁判が打ち切られる可能性もある」(幹部)との見方が広がった。
 東京地裁では8月、今回の事件の後に発生した別の性犯罪事件で、被害女児でなく、母親の氏名を記した起訴状で審理を認めたケースがあった。関係者によると、地検は今回も同様の対応をとれば地裁が許容すると判断。両親に理解を求め、追記したとみられる。
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■上記記事に次のコメントを掲載した。

<渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話> 
 母親の名前があれば被害者の特定は十分で、法律的には問題ない。被害者が完全な匿名を求める気持ちは分かるが、刑事裁判では被害者をきちんと特定することが必要で、被害者に関する一定程度の情報を被告側に示すのはやむをえない。被害者を保護しつつ公正な裁判を行うために、今回のような工夫を重ねることが必要だ。
posted by justice_justice at 07:59 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする

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