2013年12月22日

■JR福知山線事故ー控訴審について

■「JR尼崎脱線、指定弁護士が控訴、歴代3社長の無罪不服、『注意義務分析全くない』」日経2013/10/08(大阪,朝刊)
 上記表題の記事は,2004年4月に,尼崎市で起きたJR福知山線脱線事故(乗客106人が死亡し562名に及ぶ多数が負傷した事件)について,指定弁護士が,一審の無罪判決を不服として,控訴したことを報ずる。
 この裁判は,検審がJR西日本の井手正敬元相談役(78)ら歴代3社長に対する業務上過失致死傷罪で強制起訴したものだ。神戸地裁の裁判では,3名は無罪を宣告された。これに対して,検察官役の指定弁護士は平成25年10月7日、大阪高裁に控訴した。
 指定弁護士の取材について,こんな記事となっている。

***引用***
 未曽有の事故に対する経営トップの刑事責任の有無が争われた裁判は舞台を高裁に移す。同日に記者会見した指定弁護士の河瀬真弁護士は一審判決を『大規模な鉄道事業者のトップとしてどの程度の注意義務を負っていたのか、という最も根本的な分析が全くなされておらず、私たちが主張してきたことに正面から答えていない』と改めて批判。『到底納得できず、上級審で改めて審理を求めるべきだとの結論に至った』と説明した。
 控訴によって井手元相談役や南谷昌二郎元会長(72)、垣内剛元社長(69)の歴代3社長を引き続き刑事被告人の立場に置くことについては「被告人の負担は重く受けとめなければならない」としつつ、「被害の深刻さや遺族の『真相に近づきたい』という思いなどを踏まえた」と説明した。
 河瀬弁護士は追加立証に向けて補充捜査を検討することも表明。「一審で提出した証拠を改めて評価し直せば別の結論に至る可能性もある」と控訴審での有罪立証に自信をのぞかせた。
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 この記事に何名かの識者のコメントが掲載されている。
<識者のコメントー引用>
■制度見直し必要
 元東京高検検事・高井康行弁護士の話 刑事訴訟で訴追側の控訴は一審判決を覆す証拠があってなされるべきだ。補充捜査で証拠が得られる見込みがないのに控訴したのであれば不適切と言わざるを得ない。強制起訴制度の仕組みを抜本的に見直し、一審で無罪判決が出れば指定弁護士は控訴できないようにすべきだ。控訴の乱用で冤罪(えんざい)が生まれる可能性もあり、制度への信頼が揺らぎかねない。
■安全意識を醸成
 船山泰範・日本大教授(刑法)の話 指定弁護士の控訴は、企業に安全確保が求められる時代において自然な流れだ。具体的な予見可能性がなかったと判断した一審判決は、JR西日本の歴代3社長の過失責任を狭く捉えており、時代遅れと言える。トップ企業として安全な鉄道を目指すための対策が十分だったのかどうかを控訴審で問い続けることが、他の会社の安全確保意識を醸成することにもなるだろう。

■編者のコメント−「逆転判決厳しく」
 甲南大法科大学院・渡辺修教授(刑事訴訟法)の話 指定弁護士は、鉄道経営者に求められる予見可能性の水準は通常より厳しく捉えるべきだと考え、控訴に踏み切ったのだろう。だが、現行の刑法で業務上過失致死傷罪はあくまで一個人としての刑事責任を問うもの。予見可能性の範囲も常識に照らして判断されるべきで、一審判決の法解釈は妥当だ。控訴審で判決が覆る可能性は極めて低いと考える。

posted by justice_justice at 06:37 | TrackBack(0) | ■裁判ー起訴された事件 | 更新情報をチェックする

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