2013年01月16日

■貝塚高1自殺事件の波紋ー「過去形警察」の失敗/「未来形」警察の待望

■1:「大阪の高1自殺で19歳を書類送検/窃盗教唆容疑」朝日新聞2013/01/16(朝刊)を引用する。
 「大阪府貝塚市で2011年10月、府立定時制高校1年のK・T・・・さん(当時18)が自殺した問題で、府警は15日、中学時代の元同級生の少年(19)を、Kさんらにひったくりを指示したとする窃盗教唆容疑で書類送検し、一連の捜査を終えたと発表した。元同級生は黙秘しているという。
 府警は、特別少年院送致が相当との意見をつけた。遺書には、元同級生からの金銭要求をうかがわせる記述があったが、具体的な証拠が集まらず、府警は恐喝容疑などでの立件を見送った。自殺の原因については「断定できなかった」(少年課)としている。
 元同級生の送検容疑は09年12月、別の元同級生(18)を通じてひったくりを指示し、Kさんと大工の少年(19)に60代女性から紙袋を奪わせた疑い。Kさんの父親(43)は「自殺の原因がはっきりしなかったのは納得できない」と話している」。
■2:この記事の背景を簡単に知るための記事をもうひとつ紹介する。「ひったくりを指示、専門学校生認める/きょう書類送検/貝塚18歳自殺【大阪】」朝日新聞2012/11/22(朝刊)だ。
 「大阪府立高校定時制1年の男子生徒(当時18)が昨年10月に自殺し、大阪府警が再捜査に乗り出した事件で、生徒ら2人にひったくりを強いた疑いがもたれている中学時代の同級生の専門学校生(18)が、府警の事情聴取に「ひったくりを指示した」と話していることがわかった。
 大阪府警は専門学校生を22日、実行役の生徒と別の少年(19)とともに2009年12月上旬、バイクを使って同府泉佐野市内の路上で、60代女性から紙袋をひったくったとする窃盗容疑で書類送検する。また、生徒の遺書で名指しされた別の元同級生(19)の関与についても調べる。専門学校生を介し、最初にひったくりを命じた可能性もあるとみている。
 生徒は泉佐野市のKTさん。昨年10月27日、同府貝塚市内の空き地で首をつって死亡しているのが見つかった。父親(43)らによると、残された携帯電話のメモには「一生金ヅルはしんどい」など、日常的に金を要求されていたことを示唆する遺書が残されていた。専門学校生と元同級生から、かけトランプゲームの借金返済などの名目で金を要求されていたといい、返済の一環でひったくりを強要されていたとみられる。
 Kさんの携帯電話には遺体発見前後に、専門学校生から少なくとも約20回の着信記録やメールが残っていた。現金を要求するためだったとみられる。
 府警は、専門学校生や元同級生ら十数人の少年から任意で事情を聴いたが、恐喝容疑などを裏付けられず、昨年末にいったん捜査を打ち切った。その後、父親や友人らから、ひったくりを強いられていたとの新たな証言が寄せられ、7月から再捜査していた。」

■3: 恐喝の被害者である自殺者が、恐喝されていたかどうか、これを現段階で立件することは相当困難だ。というのも、恐喝の成立には、脅迫などによって被害者が「こころ」の「畏怖」状態にありながらも、なお一定の自由意思で財産上の処分(主犯にひったくりをしたものを渡す)という一連の事情を証拠で裏付けなければならない。
 被恐喝者が取調べなどで被害状況の供述を残してでもいない限り、「合理的疑いを超える証明」に耐える証拠はあるまい。立件見送りはやむをえない選択だ。
 とは言え、自殺に至った真相は、社会的な意味では解明されないで終わった。
 主犯格と名指しされた少年が本当にひったくりを強要したかどうかは、現段階では「疑い」がある程度で、刑事手続を発動できるまでには至っていない。逆に、少年の人権のためにも、安易な憶測はしてはならない。
 ただ、社会の犯罪抑止力が減退する中、ストーカー的な「まとわり」、執ような「囲い込み」、心の弱みにつけ込む「コントロール」などを特徴とする異様な犯罪が発生している。
 今回の事件のきっかけも、「いじめ」と軽い名称を与えていた。だが、実は「小犯罪」の蓄積という「悪質な犯罪」がストーカー的まとわりつき、執ような囲い込み方犯罪の特徴だ。
 伝統的な犯罪観では認識できない悪質さがある。これに社会が鋭敏に反応できる力がなくなっている。しかも、こうしたささいな事件が積み上がるような事件では、なかなか「警察・検察・司法」という巨大な国家権力が直ちに対峙するべきターゲットとは扱われてこなかった。「組織」が動かない。他方、家族ーその周辺の血縁ーこれらのユニットが住む地域ー地域の核となる学校などなど「個人」が心のよりどころとなるべき絆が、ない、中で、異様な犯罪が起き、対処しきれないでいる。
 かくして、犠牲者が出る−「自殺」。
 統計的には犯罪認知件数が減っているが、体感としての「治安」への不安はむしろ強くなっていると思う。それは、社会の脆弱性がより深刻になっている一方、その隙間をねらったような「がん細胞的犯罪」が蔓延っているからではないか。
posted by justice_justice at 13:51 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする

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