2012年12月18日

■鳥取連続不審死事件(1)ー間接事実のつみあげと「合理的疑い」

□1:2012年12月4日、いわゆる「鳥取連続不審死」事件に対する判決公判が開かれた。
 鳥取県を舞台に、債務の返済を免れるために知人男性2人を殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われた鳥取市の元スナックホステスU・Y被告(38)の事件である。
 裁判員と裁判官は、検察官の求刑通り死刑を宣告した。
 U被告は、2009年4月、トラック運転手・Yさん(当時47歳)に睡眠導入剤などを飲ませ、鳥取県北栄ほくえい町沖の海岸で水死させて借金270万円の返済を免れた事件、同年10月には、同市の摩尼(まに)川で電気工事業・Mさん(同57歳)を同様の手口で水死させ、家電製品代約53万円の支払いを逃れた事件などで起訴された。罪名は強盗殺人である。被告側は、詐欺事件の共犯が真犯人であり、被告人は無罪と主張していた。

□2:今回の事件では、自白や目撃供述あるいはこれに準ずる犯行関与を直接裏付ける証拠はない。間接事実を積み上げて、犯行態様と被告人の犯行関与、殺意を立証する状況証拠型事実認定を要する事件であった。
 間接証拠ひとつひとつからどこまでの事実を推認し、それらを組み立てたときに、「被告人が、殺意をもって、被害者を溺死させた」という構図が、裁判員と裁判官の心証風景の中にくっきりと浮かびかがるかどうか。
 これが鍵である。
 そのとき、「合理的疑いを超える証明」という事実認定の水準が、飾り言葉としてではなく、心証形成を規制するルールとして本当に働いたかどうか。

□3:従来は、「「疑わしきは処罰する」という心証形成の事実上の水準がプロ裁判官の中に定着していた。これを裁判員裁判も継承するのか、それとも、「犯人捜し」ではなく、「合理的疑い」あれば慎重に有罪認定は避ける姿勢で臨むのか、こうした裁判員裁判時代の事実認定の水準が問われた裁判であった。

□4:これに加えて、被告側は、冒頭陳述で詐欺事件の共犯者で同居していた男性を殺人事件の主犯であり単独犯として名指しで指摘する異例の主張をした。しかも、これを裏付けるべき主要な証拠と言えば、被告人本人の供述となるところ、当初は長時間の被告人質問の時間を審理計画に組み込んでいたものの、直前になって黙秘権行使を裁判所に告知。
 質問に応じるように説得する程度の時間はとったが、結局、被告人は法廷ではなにも語らずに終わった。
 黙秘権行使は正当だ。しかし、そうであれば、公判前整理手続の段階から黙秘権行使が裁判員裁判でかえって被告人に不利な心証形成の基礎にならない防御準備が不可欠だ。その点でも課題を残した。

■そうして点について、各新聞にいくつかコメントを掲載してもらったので、転載しておく。
***
「裁判員「判断難しかった」/連続不審死/死刑判決ドキュメント=鳥取」
 ○読売新聞(朝刊)2012/12/05
 ◆「説得力ある事実認定」「検察側の立証成功」 識者に聞く 
 状況証拠による事実認定に基づいて死刑を言い渡した今回の判決について、識者に聞いた。
 □甲南大の渡辺修教授(刑訴法)は「状況証拠という点と点を適切につなぎ、説得力のある事実認定になっている」と評価。男性元会社員の証言に関し、信用性の一部に疑念を示したことには、「元会社員の話がどこまで信用できるのかを慎重に判断したのだろう」とする。また、「弁護側の被告人質問取りやめなど、上田被告側の不合理な行動を考慮することなく判断し、黙秘権を尊重した判決だ」とした。
posted by justice_justice at 07:38 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする

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