2012年08月26日

■「闇サイト」事件の闇ー二重処罰の回避と厳正処罰(下)

■ 最高裁は、実際に起訴されていない事件を量刑上考慮できるかについて、次のように述べている。
 (1)「刑事裁判において、起訴された犯罪事実のほかに、起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し、これがため被告人を重く処罰することは許されない」。
 理由は、次の点にある。 
 「刑事訴訟法の基本原理である不告不理の原則に反し、憲法三一条にいう、法律に定める手続によらずして刑罰を科することになるのみならず、刑訴法三一七条に定める証拠裁判主義に反し、かつ、自白と補強証拠に関する憲法三八条三項、刑訴法三一九条二項、三項の制約を免かれる」。
 むろん、既に処罰されている犯罪の場合には、憲法39条に違反する。
 (2)「刑事裁判における量刑は、被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等すべての事情を考慮して、裁判所が法定刑の範囲内において、適当に決定すべきものであるから、その量刑のための一情状として、いわゆる余罪をも考慮することは、必ずしも禁ぜられるところではない」
 但し、次のように釘を刺している。 
 「余罪を単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料として考慮することは、犯罪事実として認定し、これを処罰する趣旨で刑を重くするのとは異なるから、事実審裁判所としては、両者を混淆することのないよう慎重に留意すべきは当然である」。

■ 今回の事件でも同じだ。
 裁判員と裁判官が、今回起訴された事件の量刑で、「闇サイト」事件とセットで判断して極刑を選択することは許されない。
 既に無期懲役が確定している以上、二重処罰になる。「感情司法」という非難も受けかねない。
 だが、両事件を通して被告の人格を判断する等量刑事情として考慮することは許される。そこで、法律のプロである裁判官が評議の際「二重処罰」禁止に違反しないよう注意するべきだ。

■ さて、今回の事件について、概ね新聞報道の通りの事実が証拠で裏付けられ、H被告が犯人と認定されたとすると、彼は、共犯者2名のリーダーとなって、小学生2人のいる家で居直り父親の帰りをまって金庫の鍵を奪った上両親を殺害したこととなる。
 被害者の数、犯行の残虐性、共犯を組織した悪質性、社会的影響の重大性などからみてもそれ自体極刑に値する。
 加えて、07年8月にもネットで共犯者を募った同種手口による「闇サイト」事件の主犯でもある点を量刑事情に入れてよい。
 両事件を通じて共犯を集めて見知らぬ人を犠牲にして金品を奪おうとする手口の共通性と常習性がある。人の命を尊重する基本的でもっとも重要な規範意識の欠如も両事件から顕著だ。無期懲役を受刑することで今回の事件の隠れ蓑にしていた狡猾さも伺える。
 闇サイト事件の前にもっと残酷な犯罪を犯しておきながら自供しなかった以上、今後の裁判での反省の姿勢にはなんの説得性もなかろう。再犯の可能性も十分に認められ、これを否定すべき積極的な材料が今回の裁判で出てこないとすれば、「闇サイト」事件を重要な量刑事情に加えた上で、裁判員と裁判官が今回の事件では極刑を選択する可能性が高い。

■ 被害者の数を含む被害態様の重大性、残虐性を重視する最近の最高裁判例の傾向も参考にしながら、裁判員と裁判官が市民の納得する量刑を行うことが求められている。

posted by justice_justice at 06:42 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。