2012年02月17日

■弁護人依頼権「崩壊」−司法官僚の愚行

■「弁護人宛て手紙押収/『秘密侵害』国を提訴へ/大阪地検、拘置所から」。
 こんな驚くべき記事が出た。2012年1月29日朝日新聞(朝刊)である。 
強盗罪などで起訴されて勾留中の被告人について、裁判係属中、裁判官が拘置所の居室を捜索することを検察官に認めた。非常識も甚だしい。
 記事を引用する。
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「男性は2008年9月に大阪府柏原市内のパチンコ店で従業員に刃物を突きつけ、約1千万円を奪ったなどとして起訴された。捜査段階では容疑を認めたとされるが、一審の途中で「強盗の計画にかかわっただけだ」として起訴内容を否認した。しかし、10年11月の大阪地裁判決は男性の犯行と認めて懲役10年(求刑懲役13年)を言い渡し、男性が控訴した。
 控訴審で弁護人を務める山本了宣(りょうせん)弁護士によると、地検が大阪拘置所の単独室を捜索したのは、男性が否認に転じた後の10年7月。強盗容疑で約50点を押収した。その中には、一審の弁護人宛ての手紙1通や書き損じた手紙、弁護人が被告人質問に向けて質問事項をまとめた書面があった。手紙には共犯者とされる人物に関する記述があった。地検が捜索した時期は、検察の捜査や取り調べのあり方が問われることになる特捜部の証拠改ざん事件が表面化する約2カ月前だった。
 山本弁護士は「手紙には『先生』と敬称が付けられた名前があり、弁護人宛てのものと分かる。地検は否認に転じた男性の主張をつかみ、公判を有利に進めようとした疑いがある」と指摘。弁護人宛ての手紙を押収する捜索が許されれば、秘密性が高い弁護活動の内容が筒抜けとなり、公正な裁判が成り立たないと主張している。
 さらに山本弁護士は「押収品に制限をかけずに捜索令状を出した裁判官にも問題があった」とし、今春にも起こす予定の訴訟では裁判官の過失を問うことも検討している。」
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 被告人と弁護人の間のコミュニケーションは、「秘密」であること。これが、被疑者・被告人の防御権を守り、そのサポーターとなる弁護人依頼権を憲法が保障する大前提だ。
 憲法の明文では、被疑者・被告人の弁護人依頼権が規定されているが、その根底にある憲法原理は、被疑者・被告人が「包括的防御権」を保障されていること。弁護人依頼権はこれを実現する手段としての権利だ。
 そして、その法律家の助言を得るためには、「話し合いの場=接見」は秘密でなければならない。情報の「フロー」の秘密性だ。
 いわゆる秘密交通権と呼ばれるものだ。
 同時に、このフローによって得られる情報もまた秘密性を保障されなければならない。
 「ストック」の秘密性だ。
 部分的だが、弁護士たるものに、押収拒否権があるのはこのためだ。証言拒否権も同じ趣旨だ。
 同様に、弁護人とのコミュニケーション内容を被疑者・被告人もまた秘密に保管できることが不可欠だ。
 そんなことは、明文を俟つまでもなく憲法原理として、法律家の責務で守るべきものだ。
 なのに、この国では「官僚主義」がはたらく。「司法官僚」は、「ことばで規定されていない」限り、原理原則を守る勇気さえ持てない。検察官の請求のまま、さほど考えることもなく、被告人の居室の捜索と捜索・差押を許したのであろう。
 不見識も甚だしい。
 前掲の朝日新聞の誌面上はこんなコメントを出した。
 穏やかにすぎるが、真意は上記にある。
 ●捜査権乱用の可能性
 <甲南大学法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)の話> 拘置所の被告の部屋が捜索を受けるのは珍しい。検察側は否認に転じた被告が事件に関与したとする証拠を押さえたかったのだろうが、秘密性が高い弁護人宛ての手紙まで押収したのは捜査権の乱用にあたる可能性がある。捜索が実施されたのは証拠改ざん事件が表面化する前。検察に対して厳しく臨もうとしている現在の裁判所であれば、捜索令状の発付をもっと慎重に判断したかもしれない。
posted by justice_justice at 06:37 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする

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