2012年01月26日

■危険運転致死罪と自動車運転過失致死罪の狭間ー故意・過失二元主義の限界

■「兵庫・加西の兄弟死亡事故:危険運転致死適用を見送る」。
毎日新聞(朝刊)2012年1月1日は、こんな記事を載せる。昨年末の悲しい事故の処理に関するものだ。記事を引用する。
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 兵庫県加西市の県道で昨年12月10日夜、飲酒運転の軽トラックに小学生の兄弟がはねられ死亡した事故で、神戸地検は31日、同市下万願寺町、建築業、O容疑者(54)を自動車運転過失致死などの罪で神戸地裁に起訴した。起訴状などによるとO被告は同夜、複数の飲食店で飲酒後、呼気1リットル中0・4ミリグラムのアルコール分を含んだ状態で軽トラックを運転。午後11時5分ごろ、同市立北条小6年、I君(12)と同2年、T(たいせい)君(8)の兄弟をはねて死亡させたとされる。
 県警は、泥酔状態で正常運転が困難だったとみて、より罰則の重い危険運転致死容疑で追送検したが、地検は立証に足りる十分な証拠がないと判断したとみられる。
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 危険運転致死傷罪は、故意班である。犯人が、アルコールの影響で正常な運転ががきないことを認識しながら運転することが必要だ。その結果、人の死傷が生じたときに重く処罰する。ただ、「故意」を認定するためには、証拠上、こうした状態を行為時に認識していたと法的に評価することが相当でなければならない。
 しかし、犯罪の性質上、犯行時にはアルコールの影響で正常な運転ができない状態になっているのであるから、心の状態もこれに匹敵する状態、、、、正常な認識ができない状態にある。つまり、そもそも「故意」を認定できない状態を、故意犯として立法化しているようなものだ。
 本件のように泥酔状態であることが、事件直後の捜査で明らかになればなるほどそう言える。逆に、ほろ酔い程度だが、心と体をうまくコントロールできないことを現に認識しつつも、家路を急ぐために車を運転したところ、案の定、事故を起こして被害者を出した、、、といった場合は、事後に、取調べで自白を得ることもできるから、かえって重く処罰される。変な言い方であるが、泥酔すればするほど軽くなるーーー自動車運転過失致死傷罪でしか処罰できなくなる。
 上記の事件で、検察が、危険運転致死罪の適用を見送った事情は不明であるが、おそらくは、犯行前後の事情を積み上げても、運転時に、無謀運転の故意があると立証できないと判断したのであろう。
 むろん、例えば、運転開始直前に、飲み屋で店の人に止められたことを認識しつつ、運転を行ったといった事情があれば別だが、状況証拠での本件故意の認定は難しい。
 残された遺族の無念はわかる。立法の改革が必要だ。
posted by justice_justice at 08:15 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする

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