2012年01月23日

『トムソーヤーの冒険』ー40年ぶりの原典

「トム、トム」。返事がない、、、この名句ではじまるトムソーヤーの冒険。初めて訳文を文庫本で読んだのが、確か中学1年か2年か。まだ冬になればたっぷりと雪の降る札幌に居た頃だ。そして、原文で読んだのは、京都で大学時代を過ごし始めた1年目ではないかと思う。それからかれこれ40年近くが経つが、これも、ふと思いついただけのこと、その原典をもう一度読み返すことにした。"nigger"などの差別用語を古典文学からも削除する動きがアメリカで活発になっているといった記事を目にしたためであろうか。簡単に手に入る内にもう一度原典の見事さに触れておくことにした。例のごとく、通勤電車を書斎代わりにした読書で読み上げた。心に残るのは、「インジャン・ジョー」が洞窟で死体で発見される場面の記述だ。鍾乳石を切ってポトンと落ちる水滴をためて飲み水にした、その光景。
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ピラミッドがまだ完成したばかりの頃、トロイが陥落した頃、征服王ウイリアムがイギリスを創建し、コロンバスが航海に出た頃も同じリズムでたゆむことなく水滴を垂らして、鍾乳石と石筍を作り上げる自然の悠久の営みを、トムが生涯恐れなければならなくなったインジャン・ジョーの死の背景に織り込む見事さ。この後の1万年の間もやはり水滴をしたたらせ続けるのであろうか、と問う。少年トム。イタズラと機知と、悪賢さと正義観とがひとつになった「アメリカン・ボーイ」。将来は、軍人と法律家になるのがよいと、ベッキーの父であるサッチャー判事は願う。むろん、その将来は語られていない。少年トムは永遠にそのままであり続ける。うらやましい。もう生涯でこの作品を読み返すことなく、一生を終えることとなろう。よき作品だ。
posted by justice_justice at 13:07 | TrackBack(0) | ●教養ー読書 | 更新情報をチェックする

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