2011年12月07日

福井女子中学生殺害事件ー検察の不「正義」

■中日新聞ネット配信記事、「名高検、異議申し立て/福井の中3殺害再審」(11年12月6日01時33分)によると、名古屋高検は、11月5日に、名古屋高裁金沢支部による再審開始決定に対して、これを不服とする異議申立をしたことを紹介する。
***(引用)***
 高裁支部は11月30日付決定で、弁護側が新証拠として提出した法医学者の意見書などを基に、遺体には、確定判決が凶器と認定した被害者宅の包丁2本の刃幅よりも短い傷があったことから「別の刃物が使われた可能性がある」と指摘。事件当日に前川さんが乗った車のダッシュボードに血液が付着していたとする目撃証言では、被害者の血液反応が検出されていない点などから、確定判決が信用性を認めたこの証言に疑問を呈した。
 その上で、新旧証拠を総合的に検討し「関与を示す客観的事実は一切存在せず、前川さんが犯人であると認めるには合理的な疑いがある」と判断した。
 これに対し、名古屋高検幹部は▽現場全体の状況からすれば、第3の凶器が存在することは合理的な推認とはいえない▽高裁支部は、血液反応をめぐる弁護側の実験結果の価値を認めたが、その条件設定には誤りがあり、信用できない―と指摘。「高裁支部は、確定判決の根拠となった旧証拠を過小評価し、一方で、さほど証明力がない新証拠を過大に評価した」と述べ、高裁での異議審で全面的に争う姿勢を示した。
***(引用終了)***

■これに関連して、先に、北海道新聞11年11月30日(夕刊)、「福井中学生殺害/前川さん再審決定/時間かかりすぎた/時代に合った運用」に、次のようなコメントを掲載してもらっている。

 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 
 再審開始の決定理由で「新証拠」に照らして知人の供述の信用性が否定された背景には「密室の取り調べでうその供述を簡単に作り上げることができる」という認識を裁判官も認めざるを得なくなったことがある。今回の決定は、取調べの可視化、裁判員裁判という時代にマッチした再審の新しい運用として評価できる。

■ 検察は、自ら隠し続けた証拠があることを棚に上げて、再審の入口の場面で、証拠の信用性評価に問題があることを口実にして、真相解明にすすむことを拒んでいる。密室取調べを守ろうとする牢固たる意識が見え隠れする。
 裁判所による証拠の信用性評価に疑問が残るのであれば、再審公判で、あらためて新旧証拠の総合評価を行えばよい。むろん、裁判員裁判時代にふさわしく、再度、期日間整理手続を行い、証拠開示を徹底するべきであろう。
 20世紀・後半世紀にかけて、「密室取調べ=虚偽供述」を軸とする事件処理をし、証拠開示をネグレクトして、被告人に有利な材料を隠蔽して有罪判決に至る「えん罪の構図」が定着していた。
 その歴史的な事実を反省しつつ、「再審」なる制度を見返さなければならない。
 その意味では、再審の入口で、不服申立をして、真相解明の場に立たない検察の姿勢には、「官僚組織」の得体の知れない防衛本能しかみてとれない。
 地検、高検の「叡智」を集めた協議を踏まえ、決済された措置なのであろうが、「取調べの可視化、裁判員裁判時代」という21世紀型の「正義」のモデルには全くそぐわない。



posted by justice_justice at 06:27 | TrackBack(0) | ■裁判ー起訴された事件 | 更新情報をチェックする

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