2010年10月06日

■特捜検事証拠かいざん事件ーマスコミ・コメント(3)ー接見等禁止処分つかず

■刑事訴訟法81条にこんな規定がある。

 「裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項〔弁護人又は弁護人になろうとする者〕に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。」

 いわゆる「接見等禁止」処分規定だ。

■この規定は、捜査段階で、被疑者が勾留されているときにも適用される。
 そして、検察官が申請すると、ほぼ自動的に「接見等禁止がつく」(こんな業界用語で表現する)。
 この処分はきつい。
 留置場または拘置所の中で、必ず独居になる。食事運動なんであれ、他の在監者との接触の場面はない。
 そして、家族などとも会えないし、手紙のやりとりなどもできなくなる。

■「密室取調べ」。これを強化するため、勾留=接見等禁止があたりまえである日本の法文化。
 これを打破するため、現場の弁護人はいろいろな工夫と苦労を必要とした。
 なぜなら、家族との連絡、社会とのパイプもすべて弁護人の役割になるからだ。
 それを嫌うことは許されない。
 しかし、そもそも例外的にのみ認めるべき措置があまりにも当然のように使われている。
 
■ところで、報道によると、証拠改ざん事件であらたに逮捕、勾留された特捜部部長、副部長について、この接見等禁止処分がつかなかったという。
 朝日新聞のネット配信、asahi.comの記事によると、「前特捜部長らの接見認める/地裁、否認事件で異例の判断」と題して、次のように紹介している(2010年10月6日3時1分)。

「大阪地検の前特捜部長らが部下の証拠改ざんを隠したとされる事件で、大阪地裁が、前部長の大坪弘道容疑者(57)と前副部長の佐賀元明容疑者(49)=いずれも犯人隠避容疑で逮捕、大阪拘置所に勾留(こうりゅう)中=に対する最高検の接見禁止処分の申し立てを却下した。
 弁護側によると、2人は最高検の調べに「主任検事による証拠改ざんは意図的なものではないと認識していた」などと容疑を否認している。否認事件の場合、容疑者が外部と連絡を取り合って証拠を隠す疑いがあるなどと判断されて接見が認められないケースが多く、今回の地裁の判断は異例。
 最高検は地裁の決定を不服として準抗告したが、佐賀前副部長の弁護人によると、地裁の裁判官3人が合議で検討した結果、前副部長について「取り調べがある程度行われて客観的な証拠も集まっており、関係者が口裏合わせなどをする可能性は低い」として退けたという。地裁は大坪前部長に対する準抗告も同じ判断を示したとみられる。 」
 大坪前部長と接見した弁護士の一人は「犯人隠避罪にあたるのか裁判所が疑念を持ったのではないか」と指摘。自白強要を防ぐために取り調べ状況などを記す「被疑者ノート」を差し入れたという。一方、最高検側は「事件関係者が検事ばかりなので、仮に接見を認めても証拠隠滅の共謀者になることはないと考えたのではないか」としている」。

■いろいろな見方ができる。
(1)一般人なら厳しく接見等禁止をつけるのに、なぜ検事ならこれをつけないのか。きわめて身内に甘い体質を裁判所も露呈している。検察庁へのおもねりでしかないーこんな側面も透けて見える。
(2)最高検の「密室取調べ」へのいらだちを読み取るのもよい。密室で虚構の犯罪を生み出し、これを裁判所に持ち込んだ特捜。その捜査もふたたび密室で行っている。可視化=取調べの全面録音録画をしているとの報道もない。
 であれば、被疑者にも充分に弁解を伝える機会を与えておくのが事実上の可視化になる。ー検察庁の密室取調べへの裁判所の批判、こんな面もある。
(3)法を厳格に解釈すると、両検事が逃走することは現実的にありえない。
 では、隠滅をおそれるべき罪証がまだ客観的にあるか。
 実はない。
 どこかに凶器が隠されている、といった事件ではない。
 特捜内部の人間関係を記述する「供述」が証拠なのだが、これは各自の頭の中にある。
 事実をそのまま表す言葉なのか、どこかで、作りかえたうその供述なのか、その見極めを、ある程度残っている客観資料と、人の動きから「推認」するしかない。
 ここまで来て、積極的に口裏合わせに応じる内部の検事もいまい。

■一般人の面会は、刑事収容施設の職員が必ず立会する。信書なども検閲する。
 逃亡、罪証隠滅などに関わるおそれがあるときには、会話を禁止され、接見を中断させることもできる。
 そんな一般人面会を、完全に禁止するべき必要性など実際にはあまりない。
 それだけに、従来の司法の運用がかたくなすぎたし、端的には、検察官のいいなりになりすぎていた。
 今回の事態を踏まえ、今後81条の運用の見直しをぜひすすめるべきだ。

■朝日新聞の要請に応じて、次のようなコメントを掲載してもらっている。

**********
朝日新聞(朝刊)2010年10月6日
「対検察、慎重に」
 甲南大学法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)の話
「検察側は接見を禁ずることで容疑者を弁護士以外の誰とも会わせず、密室での取り調べで心理的に追い詰めて有利な供述を引き出してきた側面がある。厚労省元局長の公判では、検察が自ら描いた構図に合う供述調書を作り上げていたことが批判された。大阪地裁が前特捜部長らの接見禁止処分を認めなかったのは、裁判所が検察の捜査に対して以前より慎重な姿勢を強めようとしている表れといえる」。
posted by justice_justice at 08:28| ■「特捜崩壊」 | 更新情報をチェックする
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