2010年09月26日

■特捜検事証拠かいざん事件ーFD改ざんと上村裁判

■前田検事のFDの改ざん事件。
では、刑事裁判には影響があるのか。
実は、微妙である。
村木事件はすでに無罪で決着が付いた。

■河野氏は、偽造の証明書を受け取って使った事実の限度ですでに罪を認めて、執行猶予の判決がでている。控訴はしているが、厚労省の側から、偽造の証明書を受け取ったという限度で、事実は動かない。厚労省内部で何があったのかは、直接河野氏の罪責に影響しない。

■もっとも、上村事件では、罪名を代えなければならない。
 今は、刑法156条(虚偽公文書作成等)により、「公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したとき」にあたるとされている。起訴状もそう記載があると思う。
 しかし、村木さんが無罪になった以上、上村氏との関連では、証明書の作成権限者がいなくなる。
 だから、刑法155条(公文書偽造等)、つまり、「行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者」にあたることとなる。
 検察官は、訴因を変更しなければならない。
 この限度で、控訴している河野氏の裁判にも影響がある。

■倉沢氏は無罪になった。ここでも、厚労省内部のできごとがなんであっても、適法に作成された証明書と思っていた事実は動かないから、FD偽造事件はなんら影響を持たない。

■上村裁判はどうか。
 罪名は修正を要する。
 ただ、FDの改ざんそのものが刑事裁判の内容に影響を与えるか、というと微妙になる。
 単独犯であったことが明らかになったのだから、責任は重くなる。
 他方、検事がFDを偽造してまでも村木さんを犯罪者に仕立て上げ、そのために利用されたことがはっきりした形となっている。その点は量刑上考慮せざるをえない。
 弁護人への影響もある。
 弁護人が還付されたFDを保管していたとしよう。
 弁護人が再度点検したとき、証明書のファイルが6月8日付けになっていることを知った場合、これが村木氏の指示の時期と一致することとなることは明白だ。
 そこで、弁護人は、職業倫理上の問題に直面する。
 有罪を証明する、自分の被告人に不利益な証拠を、職業倫理上守秘義務の範囲で、絶対に外にだせないこととなる。
 ましてや、万が一にもで、いったん還付されたFDを再度検察側が押収しようとしたなら、事務所を挙げて「押収拒否」の権利を発動しなければならない。
 当該弁護人とその委任を受けた弁護士が24時間体制で事務所を守る、、、という異様な光景になる。
 そして、なんらかの形で、このファイルがふたたび検察側にわたった場合、6月8日付けのファイルがあるものとして証拠調べを再度おこない、捜査報告書は誤記であると主張されたとしたら、、、

 そうスムーズに村木さんの無罪になったか、どうか危うくなる。
 
■その意味で、上村被告が起訴後真実を語り始めた事実が無罪判決確定に果たした役割は大きい。

 半面、FDの登場は必ずしも上村氏に有利に働くとは言いきれない。
 ただし、公務員であったひとりの公務員ができたことは、証明書偽造とその交付のみ。
 これを超えて、こともあろうに検事がストーカー行為リーを押し付けて調書をとらせようとし、さらに、本人に有利な客観証拠であるFDを使い物にならないようにした。
 こうした事情はすべて量刑で被告に有利に考慮しなければならない。

■上村氏は、検事に押し付けられた調書のまま、裁判を終えなかった。ここに、村木事件無罪の出発点がある。
 上村氏が単独で執行猶予を狙って証拠にも同意をしてしまえば、彼の刑事裁判は終了した。
 そうしなかった。
 その勇気と決断には拍手を送りたい。
posted by justice_justice at 12:24| ■「特捜崩壊」 | 更新情報をチェックする
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