2010年09月04日

■任意捜査の限界ー取調べ中心主義の破綻

■朝日新聞10年8月31日(朝刊)は「任意調べ、何が問題/「実質、逮捕と同じ」/奈良・殺人事件、逮捕の2人釈放/奈良県」と題する記事を載せている(奈良、地方版)。
 記事によると、こんな捜査がなされたという。
 奈良市内で66才の女性が殺害されているのが発見されたが、直ちに同居の娘とその交際相手が重要参考人として身柄を確保されている。但し、すぐに逮捕されたものではない。
 「任意同行」として、ホテルで宿泊しつつ、日中警察が取調べを行なう捜査がなされた。 ホテルはむろん警察が監視する。
 この結果どうなったか。記事は、次のようにその後の成り行きをコンパクトに紹介している。
 「事件は7月20日夜に発生。県警は同居家族で、警察官が訪れた際に自宅にいた長女と男性を重要参考人として、午後11時ごろから事情を聴き始め、日付が変わった午前2時ごろにいったん聴取を終えた。ただ、自宅が事件現場であり、双方の親族が受け入れに難色を示すなどしたため、県警は、ホテルに宿泊させた上で警察署で任意の取り調べを続け、7泊させた後の27日に殺人容疑で2人を逮捕した。
 しかし、男性の弁護士が準抗告し、奈良地裁は「勾留(こうりゅう)の前提となる逮捕手続きに重大な違法がある」として勾留を取り消した。奈良地検は8月4日に男性を、女性についても勾留期限の7日に釈放した」
 どうみるべきか。こんなコメントを掲載してもらった。
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 ●法の許容を超過
 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)の話 7泊も警察の監視下に置いている以上、逮捕・勾留されたのと同じで、続いて正式の逮捕・勾留を行って取り調べをすると、刑事訴訟法が許容する強制的な取り調べの時間的制約を大幅に超過する。
 今回の事件は殺人罪で起訴されれば裁判員裁判で審理される。行き過ぎた取り調べであるとの疑問が消えない自白をもとに裁判員に重い刑罰の選択を迫ることになり、市民の良識を生かした信頼できる判断にはならない。
 今後は身体拘束を伴わない任意の取り調べになるが、状況証拠による立証を重視し、否認・自白を含めた容疑者の供述状況全体を証拠にして有罪を立証するべきだ。状況証拠について十分な説明をできない容疑者の態度も含めて、取り調べでの質疑の全状況を録音録画し、その言動によって犯行への関与を推認できるかどうか、裁判員の常識に判断を委ねるべきだ。
posted by justice_justice at 23:48| ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする
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