2010年08月11日

■ヤギ被告事件の不幸ー刑事司法変革の時代の狭間で

■中国新聞2010年7月29日(朝刊)は、「あいりちゃん事件無期判決/奇行一転/淡々と/ヤギ被告判決に沈黙」と題する記事で、広島市を中心に社会を不安と怒りの中に巻き込んだヤギ被告事件で、第2次控訴審が、結局、一審の選んだ無期懲役を維持したことを紹介している。

「あいりちゃん事件無期判決
 奇行一転 淡々と
 ヤギ被告 判決に沈黙
 遺族と終始顔合わせず」

 こんな小見出しを並べた上で、記事は、「木下あいりちゃん事件の差し戻し控訴審で、広島高裁は28日、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(38)に再び無期懲役を言い渡した。ヤギ被告は奇行が目立ったこれまでの公判とは打って変わり、淡々と判決に聞き入った」と紹介する。
 「午後1時半すぎ。ヤギ被告はカーキ色のTシャツにジーンズ姿で、両手を顔の前に合わせながら入廷。傍聴席に目を向けないまま、うつむき加減で着席した。
 これまでの法廷では、奇声をあげ、靴下を丸めるなど不可解な言動が目立った。このため、竹田隆裁判長が判決言い渡し前に「静かに聞いてください」と注意を促し、ヤギ被告も終始黙っていた。
 「今は落ち着いた気持ち。何も隠していないから」。閉廷後に弁護人は、ヤギ被告のコメントを紹介した。判決前に接見した弁護人に対し、「起こったことはすべて話しました。心からごめんなさい」などと話したという。
 約3時間半の公判の間、被告人席でうなだれながら判決理由の朗読に耳を傾けていたヤギ被告。最後まで傍聴席の遺族と顔を合わせることはなかった」。
■同記事を引用しつつ、今回の審理を巡る混乱を整理しておこう。
 木下あいりちゃん事件の裁判をめぐっては、20
 06年の一審・広島地裁は、裁判員裁判導入に向けて立法により導入された公判前整理手続を実施。公判も集中審理方式で実施した。そして、5日連続の集中審理を行い、同年7月に無期懲役を言い渡した。
 この判決に対し、検察、弁護側双方が控訴。
 08年の二審・広島高裁は、特に、犯行場所の特定につながる可能性のある被告の捜査段階の供述調書を証拠として調べなかった点について審理不尽ー公判前整理手続での争点と証拠の整理をした裁判所の訴訟指揮に瑕疵があると判断し、この点の対応に焦点をあてて審理をやり直すことを命じた。
 09年の最高裁は、一転して、一審審理に不備はないとする。検察官が当事者の責任で、問題となる供述調書を証拠上どのように位置付けて利用するのかを判断する責務がある。これを情状にのみ利用し、犯行場所特定など罪体証拠にしなかったからといって、職権でこれを調べるでき責務ないとし、控訴審判決を破棄した。
 かくして、審理は、この点の訴訟指揮に不備はなくそれ以上の証拠調べは不要とする最高裁の判断を前提にして、第2次控訴審に委ねられた。
 となれば、結論は見えている。一審を積極的にくつがえすことのできる材料などない。 かくして、一審判決是認となった。
 同誌には、こんなコメントを載せてもらっている。

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 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 永山基準や過去の判例に照らせば、無期懲役は妥当だ。ただ、犯行の計画性などを明らかにする上で重要な犯行場所が特定できなかったのは裁判所と検察側のミス。裁判員裁判の導入をにらみ、迅速化を意識しすぎた結果ではないか。真相解明が不十分に終わった審議の経過からすれば、判決が妥当かどうかは疑問だ。
posted by justice_justice at 05:30| ■裁判ー起訴された事件 | 更新情報をチェックする
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