2010年05月01日

■JR西日本元社長起訴ー起訴議決のゆくえ

■JR西日本の元3社長が検審の起訴議決に基づき、起訴されたが、産経新聞10年4月24日(朝刊)は、「公判長期化は必至/JR西強制起訴/聴取・補充捜査進まず/被害者の声どう反映」というタイトルでその問題点を報道している。
 「JR西日本の歴代3社長が強制起訴され、指定弁護士の活動は今後、公判へ向けた準備に移る。公判では3社長は起訴内容を否認するとみられ、指定弁護士側は公判維持に多くの困難を抱える。また、公判の長期化は避けられないとみられ、起訴議決制度における指定弁護士の負担の重さが早くも課題として浮上している」。
 記事を参考にしながら、整理しておきたい。
 まず、すでに二度目の起訴相当と判断されて起訴議決がでている前社長の山崎正夫被告は、無罪主張を前提にして公判前整理手続が続行中。おそらくこれに相当の日数を要しよう。第1回公判期日の指定は当分先のこととなるのではないか。この事件自体でも、交通事故などの身近な個人犯罪として捉えられる過失と同程度に、事故の具体的な予見可能性を本件事故に及ぼすことができるか疑問だ。
 ましてや、3代続く歴代社長について、その地位にあったことが予見可能性と結果回避可能性の根拠であるとする「過失」のとらえ方は、厳密には、現代社会構造を無視する暴論に近い。たまたま社会が「許さない!」と決めつけた組織の長がスケープゴートになる不平等訴追、不平等処罰を生むだけだ。自動車事故の多くは、メーカーの責任であり、歴代社長、副社長、工場長、技術関係者はあげて処罰されるべきこととなる。
 「役職責任」を「刑事責任」に置き換えることはできない。
 事故と事件は区別すべきだ。
 組織犯罪、企業犯罪を許さない、再発をさせない企業風土は、刑事罰では生まれない。
 市民社会の過剰反応は、社会経済の停滞につながる。市民社会が、21世紀の国際社会の中にある日本の現状をリアルに理解しながら、なお市民良識による統治を浸透させるためには、多様な社会病理に対応できる多様な手段と権限、手続と措置をてもとに置かなければならない。
 「刑罰一元主義」のままでは社会はもたない。市民社会は自壊する。

 そんな思いのまま、次のようなコメントを産経新聞で掲載してもらい、またNHKの取材に応えている。

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■産経新聞2010年4月25日(朝刊)
 ◆「過失責任広げ方、行き過ぎ」
 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話「市民の良識で罪に問えるかどうかを判断する検察審査会の制度改正は評価できる。ただ、今回の起訴状を読むと『社長であれば事故を予見しなければいけない』と言っているようなもので、過失責任の広げ方としては行き過ぎだ。現代社会の企業活動が過失を問われる可能性は無数にある。だが、歴代社長に過失責任を問うという今回の判断を今後の事件に当てはめると、企業の長が常に責任を負わなければならない社会になってしまう。過失責任について、法律のプロが国民の納得いく基準をきちんと出すべきだ」
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■NHKニュース

 ■NHKニュース、「歩道橋事故・強制起訴/刑訴法専門家/組織として不注意の責任負うべき」(2010/04/20)
 「きょうの起訴について、刑事訴訟法が専門で甲南大学法科大学院(コウナン)の渡辺修(ワタナベオサム)教授は、「警察というプロの組織の不注意が原因で起きた事故に対し、個人としてではなく、組織として責任を負うべきだとの遺族らの思いが反映された内容だ」と評価しています。
 また、検察審査会の2度の議決を受けて強制的に起訴する制度については、「裁判員裁判と同じように市民の良識を刑事裁判に生かし、市民と法律家が協力して正義の実現を進める新しい時代の幕開けだという点で高く評価できる。一方で、今後、ほかの事件でもこうした展開は増えることが予想されるが、法律の専門家ではない市民の判断には限界があり、必ずしも正しいとは限らないので、裁判の中で、慎重に真相解明を進める必要があると思う」と話しています」。

 ■NHKニュース、「JR西歴代社長・強制起訴 専門家 裁判では過失認定の範囲見極めを」(2010/04/23)
 「元社長3人の強制起訴について、甲南大学法科大学院(コウナン)の渡辺修(ワタナベオサム)教授は、「たくさんの人が亡くなったこの大きな事故の処罰をどうするのか、市民が考えが反映されたという意味では、評価できる」と話しました。その一方で、「3人には、社長としての責任はあるが、犯罪として罰していいのかは疑問が残る。裁判では法律の専門家が、過失として認定できる妥当な範囲を慎重に見極めなければならないと思う」と指摘しています。
posted by justice_justice at 07:45| ■(ケース)JR福知山線事故■ | 更新情報をチェックする
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