2010年03月27日

■裁判員裁判と司法通訳ー新潟の記事から

■ 毎日新聞 2010年3月14日(新潟版)扱いのネット配信記事で、ロシア人被告人が2009年7月に約4。7キロの覚せい剤を貨物船から陸揚げしたとして起訴された事件について、審理前の報道をしている。
 テーマは、「裁判員裁判:県内初、16日初公判 ロシア人被告、発言正確に伝わるか」である。
 記事によると、「県内初の裁判員裁判が16日から始まる。15日、裁判員6人と補充裁判員4人が選ばれ、16日に初公判、25日に判決が言い渡される。今回の事件の被告はロシア国籍の男で、ロシア語の法廷通訳人が1人選任される予定。短期間の集中審理で通訳人の負担は重いとみられ、「レベルを保つために、通訳は複数選任すべきだ」と指摘する専門家もいる。通訳を経た外国人被告の発言のニュアンスが、どこまで裁判員に正確に伝わるかが焦点の一つとなっている」。
 被告人は、運んだものが覚せい剤との認識はなかったと主張する予定であったとされ、現にその後の公判廷でも無罪主張であった。
 結果として、裁判員。裁判官は、「知らなかった」とする被告人の主張を退けて、有罪を認定。
 懲役10年、罰金300万円を宣告した(なお、検察官の求刑は、懲役13年、罰金500万円であった)。
■ところで、毎日新聞のネット記事の中で気になる取材内容があった。引用する。
 「選任される予定の通訳人は、休憩を含めて1日最大7時間、計6日間の通訳を1人でこなすことになる。新潟地裁は「全体の審理計画から裁判長が『1人で対応できる』と判断した」と説明する」。
 これは、疑問だ。
 「正確、的確な通訳」を保障する上で、はっきりいって無謀といっていい。
 疲労に伴う誤訳は最小限度避けなければならない。一人通訳人に委ねるのは、極めて危うい。
 そこで、こんなコメントを同紙に掲載してもらった。

■裁判の通訳問題に詳しい渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「通訳人がペアでチェックしなければ、漏れや誤りがそのままになる危険性がある」と不安視する。とりわけ今回のように起訴内容に争いがある場合、「通訳のゆがみが事実認定に影響する可能性もある」と指摘。「裁判官は休憩をこまめにとるなど、通訳人に十分配慮してほしい」と話す。

■同じ事件について、本ブログのコメンテイター、まきこ先生は、読売新聞2010年3月9日(新潟版、ネット配信記事)、「通訳公判中1人きり」と題する記事の中で、次のようなコメントを掲載している。
 「有罪・無罪、量刑を決める重要な材料になるのが被告の供述。通訳人が微妙なニュアンスを伝えられるかで、裁判員らの心証形成は左右されかねない。法言語学者らでつくる「法と言語 学会」が模擬裁判を通じて行った実験では、通訳人が誤訳なく作業できたのは30分間。30分を超えると通訳漏れが現れ始め、45分以上で、間違った単語を使うようになったという。
 昨年12月に千葉地裁で3日間、法廷通訳を務めた女性(39)は、「裁判員裁判は通常より2〜3倍疲れた。疲れるほど集中力が切れ、誤訳もあり得る」と振り返り、「誤訳すれば被告の一生を左右しかねない」と危惧(きぐ)する。
 法廷通訳に詳しい金城学院大学・水野真木子教授は、「通訳の情報漏れはミスリードにつながる。裁判所は法廷通訳の疲労が蓄積しないような審理をするべき」と警告する。第1号事件の通訳人は1人だが、水野教授は「ミスを防ぐためには最低でも2人は必要」と話す。」

■ 「即時、正確な通訳」。
 司法通訳の水準維持に関する法律家の感覚は日本では鈍すぎる。
 島国日本の鎖国文化がながく尾を引いてるのかもしれない。
 しかし、刑事裁判は、正義の場。被告人には、「質の高い通訳」によって裁判を理解する権利が保障されなければならない。
 それにふさわしい通訳人を確保すること。
 裁判員裁判で正義を実現するには、これが最低限の条件だ。
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