2009年04月29日

■舞鶴女子高生殺害事件ー起訴の意味

04月29日の各紙朝刊には、舞鶴市で起きた女子高生殺害事件で、すでに別件窃盗罪で有罪とされて受刑中の男を起訴したことが報じられている。
 この事件の注目点は、直接証拠、つまり、犯人が犯行に関与したことを直接推認できる証拠がないまま、起訴に至ったことだ。さらに、状況証拠による起訴といっても、例えば、毒入りカレー事件とは異なり、有罪性を示す有力な柱となるべき証拠もない状態であることだ。
 通常、状況証拠による立証の場合、時系列で事実をならべてみる。犯行前の被告人の言動を証明する証拠から、犯行関与を推認させるものがあるかどうか。犯行時の被告人の言動に関わる証拠から、犯行関与を推認させるものがどの程度あるのか。犯行後の被告人の言動に関わる証拠から、過去に遡って犯行関与をうかがわせるものがあるのかどうか。この三つの方向から事実を整理して積み上げていったときに、被告人が事件時に犯行現場にいて犯行に関与していると推認できる証拠構造になっているかどうか。しかも、「合理的疑いを超える証明」という立証の水準を満たしていることが重要だ。
 マスコミの情報を整理すると
 (1)犯行前に、被害者と被告人が一緒にいたことを示す監視カメラの映像や、目撃者の証言があると思われる。
 (2)犯行時に、被告人が主張するアリバイが裏付けられない状態であることが証拠上読み取れるようだ。
 (3)犯行後、監視カメラに写っている服を処分したと聞いた人がいたり、自転車の塗装をしたりなど罪証隠滅をうかがわせる事実があるていどあるようだ。
 ある新聞は、ポリグラフ検査結果も証拠調べ請求をする予定らしいと報道しているが、これは、きわめて安定性を欠く証拠だ。ある質問に対する体の反応の科学的な測定をし、その意味について技官が「判断」して、質問群の意味する問いについて、認識がある・ない、といった判断をするのだが、それが、犯行関与をどう裏付けるのか、冷静に考えないとかえって予断のみ与える。
 ポリグラフ検査の証拠調べの際、検察官の「立証趣旨」は案外難しい。検査結果から立証、推認できることはある質問時点の被告人の身体的反応の様子のみであり、それが、「有罪意識の存在」「犯行の事実の認識」などどいったことには直ちに結びつかないし、ましてや「殺意」などの立証にはおよそ使えない。
 そんな捜査の1資料にとどめるべきものまで証拠に使うとすると、検察官の手持証拠の底の浅さがうかがわれてしまう。
 ただ、検察官が起訴に踏み切ったことは評価したい。
 相当長期にわたり状況証拠を積み上げる捜査を遂げて検察官において有罪の確信をもったのであれば、この際、裁判の場で、事件を明らかにして有罪立証に努め、真相がなにか裁判所の判断を仰ぐべきだ。よくマスコミは、無罪になった事件をあとからふりかえってとんでもない起訴をしたように報道するが、誤った姿勢だ。
 もっとも、気になるのは、殺人罪のみの起訴にせず、強制わいせつ致死を加えたことだ。この犯罪の立証は、殺人罪よりもやっかいだ。
 「わいせつ目的」が必要だ。被告人の行為が、「殺人の実行行為」あるいは事後の罪証隠滅」ではなく、「わいせつ行為」といえる態様であったことが必要だ。どちらも状況証拠での立証は困難を極める。
 今後、公判前整理手続では、検察の手持証拠に対して、弁護人が徹底した類型証拠開示を求め、検察官の立証構造の強弱を十分に吟味することとなろう。証拠を整理し、争点を詰めて、審理の計画を策定するまで、相当の時間を要するだろうが、報道をみていても、証人として証言を求めるべき人数は絞られるようだ。捜査関係者や鑑定人なども一定数証人尋問を受けるだろうが、審理がはじまれば、10日ほどの集中審理で結審するのではないか。
 事件は、状況証拠の質量がどの程度であれば、犯罪の主観的要件と客観的要件、被告人の犯人性が「合理的疑い」を残さない立証に至っているのか、これを裁判員に示すモデルともなる。
 裁判員裁判は、裁判官裁判と異なる。状況証拠の示す小さな事実を万遍なく積み上げて有罪を認定する作業は、裁判員には困難だ。時間をかけることのできる裁判官であれば丹念にできる。この時期に起訴した理由のひとつもここにある。
 とまれ、今後の推移に注目したい。

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posted by justice_justice at 23:12| ■(ケース)舞鶴女子高生殺害事件■ | 更新情報をチェックする
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