2009年04月09日

■舞鶴女子高生殺害事件ー各紙コメントから by Gishu

■今回の事件について、各紙にコメントを掲載させてもらった。
こうした現場の事件を検討する機会を研究室にいる教員が提供してもらえることは大変ありがたく、勉強になった。
 掲載の機会をもらえたことに心から謝意を表しつつ、以下紹介したい。

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○09年4月9日読売新聞(朝刊)28頁
ー舞鶴・高1殺害逮捕/識者はどう見る/手法の一つ、冤罪懸念、根拠不十分ー
■捜査手法  
 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「窃盗容疑での逮捕時に殺害事件の調べをしないなど、手堅い捜査をしたと思われる。証拠集めなど手続き上のミスを後から指摘されないようにしたと考えられ、捜査のあり方の一つだと言える」と話す。

○09年4月8日日本経済新聞(朝刊)35頁
ー「舞鶴・高1殺害、容疑者逮捕――経緯や動機、謎残る」ー
慎重な捜査評価
 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 弁護士を立ち会わせて家宅捜索するなど、物証中心の慎重な捜査で逮捕にこぎ着けており、手続きは評価できる。先行の窃盗事件はでっち上げでもなければ、起訴に値しないものでもなく、そこから何らかの手掛かりを得て大きな捜査方針を描くことには何の問題もない。ただ、報道などで明らかになっている証拠だけでは、有罪認定するのは難しいのではないか。今後取り調べに力点が置かれるだろうが、全過程を録音・録画するなど適正さが不可欠だ。
 *同一コメントは、09年04月08日四国新聞(朝刊)20頁でも採用されて掲載されている。

○09年4月7日毎日新聞(夕刊)9頁
ー「京都・舞鶴の女子高生殺害:容疑者逮捕(その1)/悲劇の謎、どう解明」ー
◇慎重な捜査の結果−−渡辺修・甲南大法科大学院教授の話
 (昨年11月に逮捕された)窃盗容疑での捜査も起訴に値する材料を集めているとみられ、軽い容疑で逮捕して取り調べで(本件の)自白を迫る形の「別件逮捕」ではない。殺人容疑での捜査も家宅捜索を重ねるなど物証中心主義で進めたと考えられ、(今回の逮捕は)慎重に捜査した結果ではないか。
 なお、同紙は、翌日の朝刊では「京都・舞鶴の女子高生殺害:容疑者逮捕/「コメント控える」30回/にじむ捜査難航」との大見出しの中でも同一のコメントを掲載している。

■今後の捜査と検察官の処分との関係では、5月21日に施行される裁判員法との関係が関心の的となる。
 この点については、まず、09年4月8日の朝日新聞(朝刊)に、「プロへ託す狙い」という見出しで次のコメントを載せた。

 「今回は状況証拠を積み上げて判断を下すことが求められる難しい事件で、5月に始まる裁判員制度で審理されることになると、裁判員にとって心理的な負担は非常に大きい。直接的な物証がないなかで、間接証拠による犯罪の立証は『あやしい』という印象だけで、有罪としてしまうおそれもある。そうした検察側の配慮が、この時期の逮捕に踏み切った背景にあるのではないか。この事件をプロの裁判官に委ねたいという思いは理解できる」。

 今後の捜査によっては、有力で、市民である裁判員にも解りやすい有罪証拠がでてくるかもしれない。そのときには、5月21日までなお慎重捜査をしてから起訴してもよい。その場合には、すでに別件窃盗で服役中なので、殺人容疑での勾留中にあえて起訴しなくともすくなくとも逃亡は防げる。無理な捜査をする必要はない。
 しかし、万が一にも、今マスコミで紹介されている範囲の間接証拠ー間接事実とその延長線上の証拠の積み上げによって犯人性、犯行態様をすべて立証しなければならないとすると、これはそうした証拠の取扱いと、きめ細かな事実認定に習熟しているプロの裁判官に判断を委ねるのが妥当だろう。
 どちらも選べる時期的な限界が、この4月の中旬ではなかったか。
 そんな判断を次のようなコメントにも託した。

□09年4月8日北海道新聞(全道)20頁
ー「舞鶴高1殺害/容疑者逮捕*「裁判員」にらみ急展開」ー
「月内の逮捕必要」
 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「プロの裁判官なら、間接証拠の積み上げで、一定水準以上の『合理的疑い』があれば有罪を認定するが、市民の裁判員に同じことができるかは未知数」と指摘。「今回の事件は、直接証拠が乏しいだけに、裁判官に判断を委ねるのは一つの選択だ」と捜査当局の判断を推察する。
 *同一のコメントは、4月8日の神戸新聞(朝刊)1面の他(原紙確認)、中日新聞(朝刊)29頁、静岡新聞(朝刊)27頁、東京新聞(朝刊)25頁、四国新聞(朝刊)3頁、熊本日日新聞(朝刊)23頁、東奥日報(朝刊)7頁にも掲載されている(日経テレコン検索)。

■産経新聞の報道について
 なお、誠に残念なことに、09年4月8日付け産経新聞(朝刊)に、「舞鶴・高1殺害 男逮捕 先行き見えぬ捜査 状況証拠で決断 公判維持いぶかる声」との大見出し中で、『弁護士の渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)』の肩書きにより、「『報道などで明らかになっている証拠だけでは、有罪認定するのは難しいのではないか」と指摘。そのうえで「(中容疑者は)窃盗罪で服役しており、逃亡の恐れはない。科学捜査や周辺捜査をもっと積み上げ、殺人容疑がさらに固まった段階で逮捕する、というのも選択肢の一つだったのでは』と話す」という記事があるが、なんらかの配信ミスではないか。
 第1に、産経新聞の取材はそもそも受けていない。
 第2に、仮に、産経が共同通信や時事通信からの配信を受けたとしても、両社にはそうしたコメントを出していない。それは、上記の各掲載誌中、日経、北海道新聞、中日新聞、静岡新聞等をみれば解る。
 第3に、弁護士という事件そのものの適正処理に責任を負う立場で、個別の事件について新聞コメントはしない。
 第4に、弁護士を名のるときには、渡辺修という学者のペンネームは使わない。
 第5に、窃盗罪服役中であることが殺人事件で逮捕勾留できない理由にはならない。
 学者の見解としてもこのような考え方(人単位説)は採用していない。そもそもかかる考え方は、法解釈・法理論として誤っている(各紙新聞記事の中でこうした見解を主張する学者がいることは承知している)。
 今後、こうした誤った掲載がなされないよう、事件取材に応ずるときには、ブログ編者も十分に注意したい。
posted by justice_justice at 14:05| ■(ケース)舞鶴女子高生殺害事件■ | 更新情報をチェックする
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