2009年04月08日

■舞鶴女子高生殺害事件ー被疑者逮捕 by Gishu

 舞鶴事件で、警察は、窃盗事件で先に有罪判決を受けて服役中の男性を逮捕した。色々な意味で興味深い経過をたどった事件である。
(1)捜査機関は窃盗事件でいち早く男性の身柄を確保した。しかも、起訴し処罰に値する事件で立件した。「別件逮捕」という非難を浴びる隙のない第1歩であった。
(2)さらに、窃盗逮捕勾留中を利用して、通常であればよくみられるパターン、本件である殺人事件容疑について、厳しく追及する、取調べ中心捜査を方針としなかった。
 身柄のみ確保、後は、物証中止捜査を方針としたと、外からみることのできる状況となった。
 それ自体刑訴法の原則に従った慎重な捜査といえる。
(3)窃盗被疑事件で捜索差押許可状を得ていったん男性宅を捜索している。おそらくは、その段階で後に殺人容疑での捜索差押許可状を執行した際に、押収したいものの目星もつけていたのかもしれない。
 また、少なくとも、殺人容疑で捜索差押許可状を請求できるたけの資料は発見していたのかもしれない。
 しかし、ここでも、「別件捜索・差押」のそしりを受けるような拙速な押収手続はとっていないようだ。
 むしろ、慎重を期して別途被疑者不詳のまま殺人容疑で捜索差押許可状をとって数日に及ぶ物証探しをした。
(4)加えて、この令状執行の際、異例なことが起きたと推測する。捜査機関が、令状執行の予定をマスコミにリークしてしまったのではないか。令状執行前であれば、被処分者は準抗告を申し立てることができる。窃盗事件の弁護人は、これに気づいて、直ちに行動を開始した。窃盗事件の当時まだ被疑者であった男性と相談の上、本人の代理人として準抗告を申し立て、さらに、特別抗告に及ぶ、、、。
 これはおそらくは捜査機関には予想外のできごとではなかったか。
 とまれ、その延長線として、窃盗事件の弁護人が、自宅の捜索を受ける男性に代わって立会に関する委任を取り付けて、現に立会することにもなった。
 今から振り返ると、このことが、捜索・差押のプロセスが適正公正に行われていることを裏付けることともなっている。
(5)それから年を越して、この4月のタイミングでの逮捕。時間がかかったといえばかかっている。しかし、無理な取調べによる虚偽自白を得る、といった拙速司法は避けた以上、やむを得ない。鑑定、科学捜査というのは、時間がかかる。「被疑者取調べ」は、効率司法の実現に不可欠の武器なのだが、その分えん罪の危険を伴う。今のところ、このおそれはない。
 そうして、種々の状況証拠を集めて令状請求には踏み切れたのであろう。
 物証中心捜査の勝利といってもいい。
(6)しかし、勝負はこれからではないか。
 マスコミ報道の限りでは、事件前の被害者と男性の接点があったことー自転車を押す男性と被害者が一緒の容子が監視カメラに納められていることーこれを軸とした証拠しかなさそうだ。犯行そのものと男性を結びつける証拠、犯行態様自体を裏付ける証拠があったかどうかは明らかではない。
 ここまでマスコミ注目事件で、捜査機関が長時間の記者会見を覚悟する事件なのに、社会を納得させることのできる有力証拠があるのに明らかにしない、というのも理解しがたい。間接証拠とはいえ、犯人性、犯行態様を浮き彫りにできる有力な証拠はないのだろうと推測する。
(7)とすると、自ずから捜査の勝負どころが浮かび上がる。被疑者取調べである。
 ここでは、従来通りの問題の懸念がでてくる。「密室で適正な取調べが確保できるか」。
 むしろ、と思う。思い切って、全過程を録音録画してしまえばよい。
 否認なら否認のままを、自白に転ずるならその容子を、すべて後から検証できるようにしておくとよい。さらに言えば、さまざまな物証を男性につきつけて充分合理的な説明ができるのか説明を求めたらよい。
 もっとも重要なのは、被害女性と一緒の場面だ。「そのあと、どうしたのか」。居酒屋にいって家にももどって寝たという従来からの説明との矛盾はないか。店に本当にいったのか。被害者と一緒であったことを否定するその言動の不自然さこそ有力な証拠になるのではないか。
 録音録画は、真相解明につながる。捜査機関はそう発想方法を転換すべきだ。
(8)5月21日を待たない起訴。裁判員裁判対象となるのを結果的には回避することとなる。
 捜査機関、検察庁がこれを意図していたかどうかは定かではない。ただ、外見には、これは、そのほうがよかろうと思う。
 というのも、明白でわかりやすい証拠がないのに、現段階で敢えて裁判員に事件を委ねる必要はあるまい。裁判員も充分に合理的な判断はする。しかし、マスコミ報道から推測できる範囲内の間接証拠のみの積み重ねで、殺人事件の故意から実行行為まで見通すことを期待するのは、酷であろう。
 しかも、男性に殺人の前科があることを考えると死刑求刑の可能性なしとしない。仮に、検察官が死刑求刑をしなくとも、被害者参加人が独自にこれを求めることもある。どのみち、無期懲役という重い刑罰の当否を判断しなければならない。
 間接証拠のつみかさねによって、いずれについても確信をもって「合理的疑いを超える証明」がなされていると言えるかどうか、、、市民には難しい選択となる。
 裁判官であれば、間接証拠から犯罪性と犯人性を推認するといった証拠の取扱いにはなれている。とすれば、裁判員裁判制度に移行する直前にあって、準備が整うのであれば、裁判官裁判を選択するのはそれなりに納得できる。
 4月のこのタイミングの逮捕には、そんな含みがあるとみてもよい。
(9)報道では、すでに弁護人が逮捕後の初回接見を終えているようだ。弁護も慎重でなければならない。「手抜き弁護」は「えん罪」を生む原因の一つだ。日常業務とこうした重大事件の弁護を両立させるのはなかなか困難ではあるが、捜査の監視、十分な防御準備にはすき間のない弁護活動が求められる。
 例えば、すぐにでも、被疑者取調べは始まる。実際のところ、弁解録取手続はもう終了していると思うが、男性が語るすべての場面の録音録画を直ちにそして継続して申し立て、そうしないことの問題を後の公判で摘示できる準備、公判を見据えた弁護活動の展開が求められている。

ともあれ、捜査機関、検察官ならびに弁護人いずれのサイドからも市民社会が納得できる、慎重かつ適正な活動によって、事案解明に至ってほしい。
posted by justice_justice at 07:28| ■(ケース)舞鶴女子高生殺害事件■ | 更新情報をチェックする
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