2008年11月30日

舞鶴女子高生殺害事件ー捜索・差押手続 by Gishu


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いくつかの新聞などで2008年5月に舞鶴市で高校1年生女子が殺害された事件に関連して、遺体発見現場付近に住む60才の無職男性の自宅について死体遺棄容疑で家宅捜索がなされたことが報道されている。毎日新聞08年11月28日(夕刊)によると「京都府舞鶴市で今年5月、高校1年の小杉美穂さん(当時15歳)が殺害された事件で、府警舞鶴署捜査本部は28日午前、殺人、死体遺棄容疑で現場近くに住む無職の男(60)=窃盗罪で起訴=の自宅の捜索を始めた。捜索には男の弁護人が立ち会った」という。
 今回の捜索・差押については、マスコミ報道を手がかりにしながらいくつか考えさせられることがある。
(1)60才男性は現在窃盗罪で起訴されて勾留中である。仮に、殺人や死体遺棄で取調べを行うと、典型的な別件逮捕勾留、不当な余罪取調べになる。かつては、強引な取調べ、虚偽自白、えん罪の温床ともなった捜査手法であるだけに、警察がそうした手法をとらないことを期待したい。
(2)万が一にも、「任意に」殺人、死体遺棄について事情を聞くとしても、被告人たる地位と矛盾せず、かつ勾留されている状態を積極的に利用した形にせず、しかもその供述が後に証拠になった場合に「任意性」について争われることのないようにこれを実施すべきである。とすると、今回の特殊な場合に限ることではないが、結局、弁護人の取調べ立会と取調べ全過程の録音録画をおこなうべきだろう。
(3)基本的には、殺人、死体遺棄について証拠を収集し、犯人性を裏付ける合理的な証拠が集まった段階で逮捕勾留につなげた上で事情を聞くべきであろう。もっとも、この場合にも、弁護人立会、全過程録音録画は不可欠である。
 そのためにも、今既にこちらの事件についても、窃盗被告事件の弁護人が弁護人として選任済みであるのならば、警察、検察に継続して全過程録音録画申し立てを行い、このプロセス自体も後に公判で証拠にできるようにしておくべきだ。
(4)捜索差押許可状の執行に「弁護人」が立会していると報道されている。おそらくマスコミ取材が正しいものと思われるが、念のため、少し疑問は留める。
 @「弁護人」が立会していると報道されてている。これが事実であるとすると、60才男性はすでに死体遺棄、殺人も視野に入れて自分で弁護士に弁護依頼をしていることが前提となっている。とすれば、捜査機関は、捜査段階の捜索差押許可状執行に「弁護人たる資格」での立会を認めたこととなり、これは画期的なことだ。捜査の秘密保持の必要上、条文上捜査段階の捜索差押にあたり、被疑者・弁護人の立会は認められていない。これをくつがえす運用となろう。
 A当然のことであるが、家宅捜索を受けた者(被疑者であれ第三者であれ)は固有の立会権をもつ。容疑者との間で「委任契約」を結び、その「代理人」たる弁護士として立会することは、まれではあっても、これまでもあった。
 B捜索差押許可状執行前に準抗告(法429条1項2号)が申し立てられることは実務上珍しい。捜査の秘密上捜索差押許可状請求自体が秘密であって、その執行にあたっても、被疑者・弁護人は立会権はない。裁判執行前に裁判に不服を申し立てることは事実上できない。今回は、マスコミ報道で「捜索・差押予定」が報道されたので、弁護士は対応しやすかったと思う。またそうした情報に即して直ちにしかるべき措置を選んだ弁護士は先見の明があると思う(ウ)。
 C準抗告や特別抗告は直ちには執行停止の効果を生じない。裁判官・裁判所が一旦執行停止にしておくのが妥当と判断してそう決定しない限り、警察は、捜索差押許可状の執行に着手してもよい。ただ、後々手続の混乱と押収された証拠を法廷で使うことを考えたら、事実上裁判所の結論が出るまで執行手続には移らない方がよい。その意味で、今回の事件での作業は適切であったと思う。
 D一部識者の見解やマスコミのトーンの中で、窃盗事件でも捜索・差押を実施しているのに、2度目の捜索・差押は不当であるとするトーンも見られた。しかし、容疑事実が異なれば捜索・差押の範囲も異なる。また同一容疑でも、捜索・差押の回数が制限されているものもない。むしろ、捜索・差押によって犯人性を明らかにする証拠を確保し、その上で取調べを実施することは妥当でさえある。
 
 そこで、こうした問題点の一部について次のようなコメントを掲載した。
***********08年11月28日毎日新聞(朝刊)****************
 ◇「証拠集めは当然」−−渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話
 起訴後に拘置を続け、別件の殺人容疑で取り調べをすることは建前は任意でも実際は強制的になる。虚偽自白や冤罪(えんざい)を生む。警察はしっかりと証拠を集め、改めて殺人などの容疑で逮捕、事情聴取すべきで、そのための家宅捜索は当然だろう。
posted by justice_justice at 09:58| ■(ケース)舞鶴女子高生殺害事件■ | 更新情報をチェックする
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