2008年08月27日

■グラシャム『最後の陪審員』ー「アメリカ」が解る本 by GISHU

■ John Grisham The Last Juror(2004)を読み終えた。
電車の行き帰り、新幹線の往復やちょっとした待ち時間に読み貯めたものだ.
7月23日から8月26日まで1月強かかった。おもしろかった。
■ アメリカ、南部、ミシシッピー州のフォード群、クラントン市が背景だ。シラキュース大学でジャーナリズムをちょっとかじった学生、ウイリー・テイラーが地元の小さな週間新聞社に雇われる。1年も経たずに会社が傾く。ウイリーは、祖母に頼んで買収資金を提供してもらって社主に収まる。当初のもくろみは、大学時代のあるきわめて優秀な学生ニックのこんなコメントであった。彼は、医学でも法学でも専門を極めればすぐれた能力を発揮すると思われたのに、父親が経営している地方のごく小さなローカル週間新聞の経営をするためにもどるという。何故なら、、、、
 「おやじが小さな週間新聞から毎年どれだけ稼いでいると思う。たった6千部だ。しかし、金鉱脈なんだ。地元のちょっとしたニュースのみ。結婚の案内、教会の集まり、表彰者、スポーツのイベント、地元野球チームの写真、ちょっとした料理のレシピ、ちょっとした訃報そして宣伝をたっぷり。少し政治を入れてもいいが、論争はさけておく。それでどれだけ儲かると思う。おやじは億万長者だ」。
 ウイリーの場合、結果として同じ道を歩む。1970年に買収し、79年には1500万ドルで大手新聞社に売却できたから。その過程で、「陪審」裁判が登場する。

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■ 子供ふたりがいる若き未亡人が、地方の闇の一族、パジット家の息子ダニーに強姦され殺害される。数世代にわたり、密造、大麻、木材、建設等表と裏の世界でうごめいている一族が法の網にかかった。70年代を背景に陪審裁判が進行する。一族が陪審員を買収するかと思われたが、有罪の評決。しかし、死刑と無期の選択で陪審員は別れた。結局、無期懲役。しかし、当時の州法では仮釈放は容易であった。わずか数年を経てダニーは地元に戻る。その後に事件が起きる。陪審評議で、死刑に反対した3名の陪審員をねらった殺人事件。2名が死亡し1名が家に届けられた爆弾でケガ。パジット一族の復讐と誰もが思った。シェリフは裁判官と相談してダニーの逮捕状を出した。予備審問(保釈の可否を決定する手続)が開かれる。ダニーが再び法廷に立たされた。狙撃音。ダニー本人が射殺される。陪審員をひとりひとり殺そうとしていると疑われた本人が凶弾に倒れる。犯人は意外なところに潜んでいた。ダニーが強姦し殺害した被害者に好意を抱いていた副検事。法廷でも検事側チームを組んでいた人物。ハンクフッテンは統合失調症でもあったためか、裁判後長く被害者とその子ども達の幻聴幻覚に捕らわれていた。そして、凶行を決意する。
■ 70年代の南部のごくふつうの生活風景、その中で開かれる陪審裁判。裁判を巡る街の人々の動き。コミュニティーの結束力がよくも悪くも強い時代の様子。ほとんどの住民が教会に通う敬虔さと、トラックの後ろにはライフルを積んでいるのが当然の銃文化。週間新聞が語る地方の人々。遠景に登場するベトナム戦争。この町から出征した兵士の戦死。黒人と白人の対立と高校の共学化。奴隷制の頃から始まるある黒人一家の話。7人の子ども達が学者に育つ物語り。主人公とその家の女主との友情。ポーチでのランチ。ジャーナリズムを武器に悪しきもの、よこしまなものにぶつかっていく若き主人公。そして、それが巨万の富をもたらすアメリカンドリーム。

 「アメリカ」が解る本であった。
posted by justice_justice at 09:19| ●教養ー読書 | 更新情報をチェックする
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