2008年08月16日

■三浦事件ー共謀罪と一事不再理効(続) by GISHU

■ "Yahoo!News"_Fri.Aug 15,9:47PM ETの配信で「1980年代の日本のビジネスマン事件の裁判、延期」と出ている。
 言わずと知れた三浦和義事件の続報である。
 まだ、入口である。今、身柄は、サイパンで拘束されている。被告側は、カリフォルニア州へ移送する手続で、身柄拘束の根拠となっている逮捕状自体が無効であり、移送申し立ては却下されるべきであると主張している。
 その根拠は、「二重の危険」である。
■ 1981年11月、ロス市郊外で起きた一美さん殺害事件。三浦和義氏は、こちらの事件では共謀共同正犯として起訴されたが、日本の裁判では「合理的疑いを超える証明」がないとして無罪となった。
 アメリカでも、逮捕状には、概ねこれと重なる殺人罪の被疑事実が掲げられている。この限度では、同じ事実そのものを2度処罰することを求めることとなるので、この事件のときに適用されるべき刑法の規定によって、二度同じ行為で処罰することはできない。
■ 但し、すこし説明が要る。
 一般には、「二重の危険」を受けない権利は、自分の所属する国に対してのみ主張できるものだ。アメリカにとって、日本が誰をどう処罰しようとも、アメリカが処罰すべき犯罪と犯人を処罰することにはなんら関係はない。
 ただ、一美さん殺害事件発生当時のカリフォルニア州刑法では、外国で有罪または無罪の判断を一度受けた行為についても、カリフォルニア州法上は二重の危険の保護を与えると規定していた。
 もっとも、この法律自体は、現在は改正されていて一国主義に戻っている。
 しかし、犯罪は、犯罪が行われたときの刑法で処罰するのが近代国家の原則だ。旧法が適用される。
 従って、日本で裁判を受けた対象となるのと「同一の行為」をあらためてカリフォルニア州で処罰の対象にすることはできない。
■ しかし、アメリカには、そして当然カリフォルニア州には、「共謀罪」処罰規定が昔も今もある。
 そして、これは日本には、昔も今も、ない。
 三浦氏に対する逮捕状には、「共謀罪」の被疑事実も載っている。一美さんを殺害しようとする謀議をしたことそのものを処罰するものだ。
 上記の記事によると、8月15日の審判では、ミシガン大学のマーク・ウエスト教授が証言し、日本の裁判でいう共謀共同正犯をアメリカ法でいうconspiracyと同義と扱うことはできないと摘示したという。
 正しい指摘だ。
■ LosAngelesTimes,Aug.16,2008の「1981年ロス市内妻殺しで訴追されている日本人の審理、続行」と題する記事では、ウエスト教授と、被告側の主任弁護人、ゲラーゴ弁護士とのやりとりはかなり激しいものであったようだ。
 「ゲラーゴ氏は、kyobo=共謀という語は、日本の裁判所の判決中何度も使われているものであるが、教授に対して、この日本語の共謀の意味を定義するように求めたあたりから、ウエスト氏に対する質疑は熱を帯びたものとなった。ウエスト氏は、このことばは、"conspire"と訳することもできるが、同時に"collude"あるいは"plot"の意味ともなると説明した。
 これに対して、ゲラーゴ氏は、日本の高等裁判所の判決の翻訳を示して、"conspiracy"の訳語が何度も当てられていることを摘示した。しかし、ウエスト氏は、意見を変えることはなかった」。
 「ゲラーゴ氏は見た目にもかなり興奮していた。ついには、ウエスト氏に対して、本件についてあらかじめ偏見を抱いていると思われると指摘したが、ウエスト氏は否定した」。
■ 手元にある資料をみると、三浦和義氏と一美さん殺害の共謀を結びつける事実は、日本で有罪・無罪の判断の対象そのものとされていないものと思われる。
 何故なら、少なくとも、日米で4名の人間に一美さん殺害を持ちかけて相談をしているとアメリカの捜査当局は断定している。
 通常は、これらを裏付ける証拠として、現に三浦氏から相談を受けた関係者の供述調書または供述書があると思う。
 であれば、なおのこと、日本が犯罪と判断するのとは異なる事実の側面が浮き彫りになる。
 カリフォルニア州の「共謀罪」は、殺人を相談する事実自体を悪質とみて処罰する犯罪だ。
 アメリカ側がここを重視するのであれば、三浦氏は、まだこの点について裁判は受けていない。
 カリフォルニア州の旧規定に従っても、一人の人間を同じ事実について、日本とアメリカで二度処罰しようとすることにはならない。

 もっとも、事態はまだ流動的である。
 手続の進展をみながら、さらに検討し、誤りは訂正していきたい。

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