2008年04月20日

■社会のできごとと「識者コメント」の責任ー二つのネット配信記事から

■ネットをみていると、本ブログ編者としても関心を持たざるを得ない記事をみつけた。
 まず、毎日新聞/2008年4月13日/2時30分(最終更新/4月13日15時53分。
 これによると、「入学式:入学金未納の2人、出席させず/千葉県立高」というタイトルのもとに、千葉県の公立高校で、入学金未納の新入生2人を入学式に出席させない扱いにしたとの「社会のできごと」が紹介されている。関係者のこの事態に対する見解も紹介された。なによりも、校長先生は、
 「『入学式当日に必要なお金は3月の説明会で伝えている。経済的問題があれば相談するよう話した。苦渋の決断だったが、当然の判断だと思っている』と説明」。
 と紹介されている。他方、県の公立高校教職員組合は
 「非教育的対応」
 と考えていると紹介されている。
■さて、ここでのテーマは、「識者談話」である。
 このネット配信記事には、次の識者の談話が付されている。
 「教育評論家の尾木直樹・法政大教授(臨床教育学)は「極めて機械的、官僚的対応。学校側は2人だけではなく、生徒、保護者に謝罪すべきだ」と話している」。
■このコメントに対する社会の反応は、そう甘くなかったようだ。夕刊フジ配信(2008年4月19日16時47分)によると、上記コメントに強い批判があるという。
 例えば、、
 ○「規則を守らない保護者に謝罪しろとは何事か」
 ○「(尾木氏が教鞭をとる)法大は入学金未納でも入学式に出られるのか」
 ○「規則を執行するのに苦渋の選択と言わしめた校長の方が気の毒」
■編者の最大の関心事は、こうして自分の「識者コメント」が強く社会に批判されたときの、その識者の対応である。上記夕刊フジでは、尾木氏は、次のような説明をしたという。
***<引用>*****
 尾木氏は、滞納者に対する校長の気持ちも理解しており、授業料を払わずとも最後まで面倒をみろというつもりはないという。また、大学などと同様、入学式前までに振り込み期日を指定し、無連絡で未入金の保護者に事情聴取することで、今回の事態は回避できたと考えている。一方、「謝罪」の真相はこうだ。
 「謝罪というのは、今回の対応の真意と、騒動に発展した経緯を、全校生徒と保護者にきちんと説明するべきという意味で、単に『謝れ!』という意味で話したのではありません。特にネット配信の記事では、記者の編集という背景が理解されず、謝罪という言葉だけが一人歩きしてしまう結果となり、大変残念です」
*************
 しかも、上記記事では、「尾木氏だが、夕刊フジの取材に、『あの記事は記者の署名が入ったもの。本来は20分近く話した私の発言を、記事内容に即して編集した記者に聞いていただくのがスジですよ』とした」という。
■つまり、20分の取材で提供した情報を編集した記者ーしたがって、当該記事をチェックしたデスクそして毎日新聞が悪いのであって、自分のコメントがこのように要約されることを是認した自分にはない、ということのようだ。これは、よく新聞に短めのコメントを出す機会をもらっている編者としては、聞き捨てならない。
 「無責任極まる」と言いたい。
■新聞記事にコメントを出すのには、慎重でなければならない。
 新聞の性質上、一行=12字*数行しか割けない。その中に「識者」の責任において、つまりプロの責任において、市民社会が事件をみるのに必要な視点・視座・知識・価値観を提供しなければならない。ならば、長文の専門的な論文や本を書くのと同じ覚悟で「ショートアンサー」を公にしなければならない、といつも思っている。
 ブログ編者は、刑法と刑事訴訟法に関連する事件や裁判についてコメントを出すことが多い。
 被害者、被疑者・被告人、社会などなど事件に拘わる人々は多い。喜怒哀楽を伴う生身の事件について、新聞の性質上比較的短時間の取材で責任のあるコメントをまとめなければならない。時には、一方の関係者には厳しい内容になることもある。
 そうだからこそ、コメントのための取材の後に、必ず担当記者に念を押し、釘を刺す。
 「もしコメントを採用していただける場合、最後に載せる案が固まったら、必ず連絡をしてほしい。法的な問題なので間違いがあっては関係者に迷惑をかける」。
 このチェックがあっても、誌面に載るまでに他の緊急配信記事との関係や、デスクの最終チェックなどで字句の置き換えや行数削除はありえる。
 それでも、なお責任をとれる範囲の情報にまとめて「GO!」というのが、こうしたコメントを出す「識者」の責任だと思う。
 幸い、司法関係の記者は、時間が遅くなってもこの約束を守ってくれる。だから、こちらも、可能な限り誠実に取材に協力するようにしている。
 それでも、掲載紙を送ってもらった後に確認したとき、編者の意に染まないものになっていることがないではない。しかし、その場合に、「編集した記者の責任だ」などどいうつもりは全くないし、「あれでは真意が伝わらない」と抗議することもない。
 社会に対しても公になった範囲での言葉に責任を持つつもりでいる。

 教育評論家の尾木直樹氏はおそらく斯界では著名な専門家なのだと思う。
 しかし、その「識者コメント」に対する基本姿勢については納得できない。
posted by justice_justice at 11:59 | TrackBack(0) | ●教養ー読書 | 更新情報をチェックする
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