2008年02月27日

■「ロス疑惑」とカリフォルニア州刑事手続


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■「ロス疑惑」。
 日本では、無罪が認定されて被告人は「犯人」から「えん罪」の被害者に形を変えたが、今度は、舞台を変えて、アメリカでふたたび「被告人」となる。
 ロサンゼルス郊外で起きた殺人事件。
 当然、カリフォルニア州当局が、自らの犯罪として犯人を見つけ、処罰する責務を持つ。
 「日本で無罪になったのに、、、」。
 という弁解は、そもそも通用しない。刑罰権は、主権国家に帰属する。アメリカでは、連邦制度に関する犯罪を除き、日本で言う刑法とは、州法を指す。カリフォルニア州刑法に従って、州が、自らの地で起きた重大事件を裁く権限と職責は当然にある。
■カリフォルニア州法のいくつかの特徴として、
 ○まず、「第1級殺人(first degree murder)」など死刑や終身刑で処罰される犯罪については「いつでも訴追を開始できる」(カリフォルニア州刑法799条)。つまり、公訴時効はない。
 ○そして、「第1級殺人で有罪を認定された者は、死刑または州刑務所における服役をする終身刑もしくは25年から無期の懲役を科される」(カリフォルニア州刑法190条)。
 ○さらに「共謀罪」規定がある(カリフォルニア州刑法182条)。「2名以上の者」が、「なんらかの犯罪の実行」について謀議をした事実のみで処罰される。
 重罪を実行する謀議を行った場合、その重罪の法定刑の範囲で処罰される(カリフォルニア州刑法182条)。
 日本にはない犯罪類型である。また、犯罪の謀議自体を重く処罰するものなので、日本からみると現段階では違和感が残る。
 が、アメリカではごく当然の処罰規定である。
■今後、サイパン自治領からアメリカへの移送手続が実施されるのにしばらく時間がかかる。ついでロサンゼルス市を管轄するカウンティが陪審裁判を行うまでの手続が進められる。
 大陪審手続を経て起訴状を作成するのか、検察官が予備審問手続を申し立てて手続が進行するのかはわからない。
■証拠がどのようになっているのかは、大陪審以後か予備審問手続以降、検察官の証拠開示がなされるまではよくわからないこととなる。
 マスコミは「新証拠」という言い方をするが、それは、日本で既に裁判が終わっており、いわば「有罪のための再審」のように、アメリカの手続を見ているためであろう。
 アメリカにとっては、新証拠もなにもない。事件当時の捜査によって収集し、今後、再点検を経て信憑性を確認した証拠によって、手続を進めるだけであって、「新しい証拠がみつかったから、逮捕した」のではそもそもない。
 「なぜいまさら逮捕か?」という問いも愚問だ。
例えば、新婚旅行でタイにでかけた夫婦がけんかになって夫が妻を殺害した場合、タイ当局は国内の犯罪として粛々として捜査をし訴追し処罰する。
 そして、その夫が服役後であれ、仮に無罪になった後にであれ、日本に戻ってきたとき、すでにタイで裁判がなされたから、日本は関知しない、あるいは、なにもできないのか、と言えば、そうは行かない。
 日本人が日本国外で殺人事件を起こした場合、刑法が適用される(刑法3条)。
但し、外国で有罪判決を受けて刑に服した事実を特別予防の観点から考慮に入れる規定を置いている。
 「外国において確定判決を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する(刑法5条)。
 日本は、いわば「寛刑主義」で刑法を定めている。しかし、日本国自体の刑罰権は当然にある。
■ 証拠状態がどうなっているのかわからないので、予想の限りではないが、少なくとも、「共謀罪」での有罪認定、しかも、陪審による有罪の確認は、相当可能性が高いと推測する。
 さらに、証拠状態如何によっては、アメリカで選任する(私選にできるか、国選かはさておき)弁護士は、おそらくは、「司法取引」を被告人にも示唆すると思う。その扱い如何では、「日本で無罪、アメリカでは軽微な罪状として有罪、そんなねじれ状態にもなりうるが、これは主権が異なる以上やむをえない。
 しばらく注目の事件となる。  


 


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