
■Eric A. Posner"Law and Social Norms"(2000,Havard University Press)ーポスナー『法と社会規範』を読んだ。法と経済学の分野では世界的に有名な学者なのだと思う、、、実は、よく知らない。幸い、専門が違う。どうせ大学へ通う電車の中でときどきあんパンをかじりながら読んだ、趣味の世界の本だ。うんちくは要るまい。
それより、本を読みながら、あれこれひらめきを感じていた。本の内容にマッチしているかどうかも関係ない。
■「21世紀に入り、国家が個人を守れなくなったのではないか」。
これが、この種の本をなんとなくひもとく基本的な疑問点だ。
本来国家の正当性は、個人を守ること、私的紛争による個人の生存の危機を防ぎ、秩序と安全を約束することにあるはず。だが、それができなくなっている、、、
その現象をどうみたらいいのか。
■個人を守るのには、より身近な地域社会のこぶりな動きがあったほうがいい。しかし、国家の存在は、ミニ共同体の社会規範をのけ者にする。
国家レベルでの「法律による制御」が個人を支配する。
経済を支えるのも、国家レベルでの「マーケット」であって、地域社会に根ざす共同体ではない。
福祉と一体となった社会規範にくるまれた個人ではなく、抽象化された個人が、利益を追求する市場の中で活動する姿、、、
国家秩序の枠組みの中で、プライバシーと法の支配に守られた個人。
一見すると、自由度が高く、解放性が広いようにみえた、、、20世紀までは、、、。
■ しかし、今や、「国家の守る個人」像は幻想になった。国家のまもるマーケットはグローバル化=肥大化しすぎている。巨大な動きの影で、押しつぶされる個人が無数に生まれ始めている。
国家の法律が、社会の規範を押しつぶす中で、個人の生存と福祉、安全と健康が脅かされている。
■「もし、法律の興隆が共同体の没落を意味し、法律が、社会的規制の機能不全状態に置き換わったのであったとすれば、共同体の没落は好ましい傾向とみていいはずだ」とポスナーは摘示する。
しかし、違う。
「マーケット」と「法律」
これが共同体の衰退をもたらした。そして、「共同体の衰退は、今や悔やむべきことと看做されており、これを阻むべきものと受けとめられている」
■ 「法律による規制」に対する「共同体による統制」。その復権、復活が、必要なのではないか、、、、
、、、という勝手な感想をもって本を読み終えた。少し時間がかかったが、読み応えのある本であった。