2014年01月21日

■平田信事件と死刑囚の証人尋問ー正々堂々たる裁判員裁判を期待して

■「再開・オウム裁判:きょうから死刑囚尋問」ーネット配信記事・毎日新聞 2014年01月21日 東京朝刊

 平田信事件の続報であるが,今日から,死刑囚の証人尋問がはじまるという。
 記事は,次のように紹介する。

***引用***
 東京地裁(斉藤啓昭(ひろあき)裁判長)で審理中の元オウム真理教幹部、平田信(まこと)被告(48)の裁判員裁判に21日、中川智正死刑囚(51)が証人として出廷する。2月上旬には井上嘉浩(44)、林(小池に改姓)泰男(56)両死刑囚の尋問も予定されている。教団の非合法活動の実態を知る3死刑囚が何を語るのか注目される。
 2011年に死刑が確定した中川死刑囚は元医師で、松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(58)の世話をする「法皇内庁」トップだった。平田被告が逮捕監禁罪に問われている仮谷清志さん(当時68歳)監禁致死事件(1995年2〜3月)では、仮谷さんに麻酔薬を注射して死に至らせ、遺体を焼却したとされる。検察側は冒頭陳述で、中川死刑囚が平田被告に「(仮谷さんは)もういません」と伝えたと指摘している。
*****

 問題は,次の文だ。「死刑囚の尋問は異例で、裁判員裁判では初。地裁は死刑囚の心情の安定に配慮し、傍聴席との間に遮蔽(しゃへい)板を置くほか、不測の事態に備え防弾パネルの設置も検討している」。
 しかし,他の新聞などの情報では,証人等は,遮へいは嫌っているという。勝手な想像であるが,かつてオウム真理教の幹部として活動した誇りにかけて,彼らは正々堂々と自己の過去を清算し,謝罪すべきは謝罪する姿勢を取っているのではないか。
 これに対して,「死刑囚の心情保護」という観念論を振り回しているのは,法務・検察・公安警察ではないか。
 少なくとも,検察当局の見解として,証人予定の3名が,当局にも,遮へいなりビデオリンクを強く希望したといった報道には接していない。そして,その点の面会調査をしていないか,本人らの「不要だ」との意見に接しているか,どちらかだろうと勝手に推測する。
 裁判員裁判の正当性という点でも問題だ。
 証人本人等が,特別な配慮なく,堂々と,公開の法廷での証言を臨んでいるのに,これを無視して,裁判員が,裁判官に加担して,勝手に囲い込みをして証言を聞き,これを有罪無罪,量刑の材料にする,という事実は,残すべきではない。遮へいを認める要件にもそぐわない。
 なによりも,裁判員たる市民が,市民社会にかつて起きた,「テロ犯罪」にどう立ち向かうか,真しに検討するべきときに,国家権力を支配する官僚組織の意向の介在を許してはならない。

 もうしばらくすると証言がはじまる。
 次のように望む。
 第1に,弁護人から,遮へいなどの措置への異議申し立てを強く期待したい。
 第2に,裁判官は,裁判員もまじえて,その当否を検討するべきだ。訴訟指揮に関する事項に,裁判員の発言権・決定権は保障されていないが,彼らの意向を無視した訴訟指揮はするべきではない。
 第3に,裁判員らが,遮へいの措置不要とする賢明な判断をプロ裁判官に示す勇気を期待したい。

 市民参加の正義を実現する場にふさわしい,そして,我が国の未曾有のできごとであるオウム真理教関連事件の裁判員裁判にふさわしい証人尋問を強く望む。

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2014年01月20日

■「黙秘権」を考えるー日米の違い

■「ボストン爆破黙秘権で論議/危険差し迫れば告知せず/容疑者重傷/別の事件の恐れ低く/日本はずさん/『権利として認識を』」東京新聞2013/04/24(朝刊)
 黙秘権を巡るアメリカならではの記事が載った。興味深いものであった。
 長いが検討材料にもなるので,引用する。

***引用***
 米ボストン・マラソン連続爆破テロ事件で、米連邦裁判所に起訴されたジョハル・ツァルナエフ被告(19)に対し、黙秘権を告知するか否かが論議の的になった。捜査筋の話から一時は「黙秘権を認めず」といった報道もあったが、結局は告知された。告知するか否かには、どんな境界があったのか。(出田阿生)
 米国では、警察官が取り調べ前に容疑者に黙秘権などを告知しなければならない「ミランダ警告」というルールがある。これは身体拘束が伴う事情聴取に適用される。
 ボストン事件では当初、「米連邦捜査局(FBI)がジョハル容疑者に対し、ミランダ警告の手続きを省く方針」と米紙などが報じた。最終的には二十二日、入院中の容疑者の病室に裁判官が出向き、ミランダ警告を伝えた。裁判所の記録によると、ジョハル被告はのどを負傷して会話はほとんどできないが、うなずいて確認したという。
 ミランダ警告には次の内容がある。「黙秘権がある」「供述は法廷で不利な証拠として用いられることがある」「弁護士の立ち会いを求める権利がある」「自ら弁護士を依頼する経済力がなければ、公選弁護人をつける権利がある」−だ。
 きっかけは一九六六年の米連邦最高裁判決にある。強姦(ごうかん)罪などでアリゾナ州裁判所から有罪判決を受けたアーネスト・ミランダ被告が「弁護士同席の権利を知らされず、自白を強要された」と訴え、有罪判決は破棄された。その後、告知が義務付けられた。
 警告なしでは自白は裁判で使えない。だが特例がある。「公共の安全」に差し迫った危険性が認められるケースだ。刑事弁護に詳しい高野隆弁護士は「今回の容疑者は重傷を負い、続けて別の爆破事件が起きる恐れも低い。警告の例外とならなかったのは別に不思議ではない」とみる。
 例外中の例外がある。二〇〇一年の米同時中枢テロ後、ブッシュ政権が設けた「敵性戦闘員」扱いだ。「テロリスト」とされた人々をキューバのグアンタナモ米軍基地に無期限に拘束した。今回も同様の扱いを求める声もあったが、国際テロ組織アルカイダなどとの関連は確認されず、適用外にされたとみられる。
****
 記者は記事の最後に「日本でも黙秘権は、権利として憲法や刑事訴訟法で保障されている。しかし、米国ほど厳格に認識されたり、扱われていないように見える」とコメントを挿入している。
 「黙秘権」が軽い理由。それは,簡単なのだ。「お上に白状する文化」。これが少なくとも江戸時代以来確立した刑事裁判を巡る我が国の伝統になっている。「白状」。そして「反省と後悔」,更生への決意。これが,お上の裁きのありかたであり,だから,白状しない者は懲らしめなければならない。「お上はなんでも知っている」。その筋道にそった自白を強要するのは正しいことだー日本的な拷問正当化の理由。
 裁判員裁判がはじまった。ところが,およそ米国型陪審ではありえなかった。そもそも,争っている事件でも,裁判員は全員が,「被告人の説明」を期待している。彼・彼女が「黙秘する」などとは想像だにしていない。つまり,有罪を立証するのは検察官の責務であり,被告人は,法廷を見守るだけでよい等という形は,想定外であろう。
 ミランダ警告など,日本では夢のまた夢である。
 「無理に言わんでもいいけれどな,正直に話ししや」。取調べにあたる警察官等の認識はこの程度だろう。「権利」として尊重する意識は薄い。
 それもやむをえない。
 テロを辞さない確信犯は滅多にいない。実はオウム真理教関連事件でも,完黙を貫いた例は聞かない。
 「黙る文化」はないし,尊重されない。
 黙秘権を軽く扱っているというよりも,刑事裁判の背景文化が全く異なるとみたほうがいい。
 せめても,黙秘権の意味を理解してもらうため,次のコメントを出した。

■甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑訴法)は「犯罪行為について口をつぐむことと誤解されがちだが、そうではない。市民が冤罪(えんざい)被害から身を守る最低限の権利だ」と説明する。身に覚えのない犯罪で逮捕され、曖昧な記憶で供述すると、捜査機関に「でっち上げ」の材料を与えることになりかねない。曖昧さを逆手に取られ「犯人」とされるケースだ。渡辺教授は「供述しないことが『権利』であることはあまり知られていない。だからこそ告知は重要」と話す。
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2014年01月19日

■裁判員裁判と審理長期化ー市民主義の挑戦

■「裁判員裁判/審理長期化懸念8割超/岡山弁護士会/会員アンケート/被告に選ぶ権利を/公判前手続きの延び指摘」
山陽新聞2013/05/18(朝刊)
 岡山弁護士会でしばらく前に,2009年に導入された裁判員制度が3年目の検証時期を迎えたことから、改善に向けた提言をまとめるアンケートを実施したという。裁判員裁判を経験した弁護士70人を対象に行ったもので,39人が回答したという。
***引用***
 「裁判員制度導入で審理期間は長くなった」―。岡山弁護士会が、所属弁護士に対して行った裁判員制度に関するアンケートで、8割以上がこう答えた。これを受け、同会は「迅速な裁判を受ける被告の権利が保障されていない」として、被告に裁判員裁判を受けるか選ぶ権利を与えることなど制度の見直しを提言している。・・・起訴から判決までの審理期間が長期化したと答えたのは33人。最大の原因として公判前に事件の争点を絞り込む「公判前整理手続き」を挙げ、6割超の23人が「迅速かつ充実した争点整理ができていない」と回答。理由には「検察官の証拠開示が遅い」と指摘する声が多かった。
 岡山地裁では、初めて裁判員裁判が行われた09年10月から今年3月までに71件で判決が言い渡され、審理期間が最長だったのは、女性への性的暴行をめぐる事件で、1年半を超える546日だった。
 この傾向は全国的にも顕著となっている。最高裁の調査によると、平均審理期間は制度導入前(06〜08年)の裁判官裁判の6・6カ月に対し、昨年7月末までの裁判員裁判は8・5カ月。公判前整理手続きの平均期間だけで6・0カ月と、3カ月以上延びている。
 実際に裁判員裁判を担当した岡山弁護士会所属の30代男性弁護士は「起訴内容を認めている被告が審理期間が長いと、不満を漏らしたことがある」とし、別の弁護士は「自白して争点が乏しい場合は、被告が裁判員裁判を望まないケースもあった」と明かした。
 こうした結果を受け、同弁護士会は被告人に裁判員裁判か裁判官裁判かを選択できる権利を与えるべきと提案している。
****
 こんなコメントを当時出した。

■甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「被告は短期化よりも、納得できる充実した審理を望んでいる」と強調。その上で「逮捕直後から十分に接見し、有利な証拠の調査も行い、被告とチームで裁判に向かう姿勢が重要」と刑事弁護の質に注文を付ける。
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2014年01月18日

■警察と市民ー「お上」意識のぬけない警察について

■「警官、女性に不適切聴取 大阪府警が謝罪」
産経新聞2013/06/14(朝刊)がこんな現場のひとこまを紹介した。
***引用***
■虐待疑いの女児連れ交番へ→母親の前で個人情報尋ねる
 児童虐待が疑われる子供を一時的に保護し、警察に通報した女性(28)とその子の母親を、大阪府警東淀川署が交番内で同席させたうえ、その場で女性の住所や連絡先などを聴き取っていたことが分かった。女性は産経新聞の取材に「相手の母親に個人情報を知られ、非常に心配。なぜ別々に調べてくれなかったのか」と警察の対応に強い不信感を抱いている。同署は「署員の判断で同席させたが、配慮を欠いていた」として女性に謝罪した。
 女性が子供を保護したのは、4月18日午後4時半ごろ。大阪市東淀川区内の公園で自分の子供を遊ばせていた際、見知らぬ女児(3)が「おなかすいた」「のど渇いた」と大声で泣いているのに気づいた。
 季節外れの汚れたセーターを着て、腕やすねにはあざもあり、汗のにおいも鼻をついた。保護者は見当たらず、女性は虐待や育児放棄を疑い、児童虐待ホットラインに通報。応対した市こども相談センター(児童相談所)の担当者から「職員派遣に時間がかかるので、いったん近くにある東淀川署の交番に向かってほしい」と指示された。
 女性は女児を連れて交番に行ったが、警察官は不在。本署に通報して警察官の戻りを待っていたところ、女児を捜していた母親がたまたま通りかかり、「そこで何してんの?」と交番に入ってきたという。
 その直後に署員2人が交番に到着。母親がその場にいることを知りながら、女児を保護した経緯を女性から聴き取り、住所、氏名、職業、連絡先を尋ねた。女性は母親の存在を気にして即答をためらい、うつむいて黙り込んだが、署員から「早く答えて」と促され、答えさせられたという。
 同署によると、署員らは女性を帰宅させてから、遅れてやってきた児相職員とともに女児の身体を確認。目立った外傷はないとして、身体的虐待の可能性は低いと判断する一方、「育児放棄の疑いは否定できない」と児相に書類通告し、以後の対応を引き継いだ。
 同署は一連の経緯について、同日午後4時過ぎに母親から「自宅で寝ていたら子供がいなくなった」と署に届け出があり、署員らと付近を捜索していたと説明。そこに女性からの通報が舞い込んだため「母親から女性に保護のお礼を言ってもらおうと考え、同席させた」としている。
 署員らは虐待の疑いがあるという通報内容も認識していたが、「女児は母親になついており、可能性は低いとみていた」とし、「結果的に通報者の不安をあおる形になり、非常に申し訳ない」と釈明した。
****
 記事では,「女性は取材に『警察官に高圧的な態度で個人情報を聴かれ、答えるしかなかった。私が悪いことをした気分になった』と不快感をにじませた」。さらに「女児を交番に連れて行った日の夜、知らない小学生くらいの子供が突然自宅に来て『女の子をどうしたんですか。誘拐ですよ』とまくし立てられたといい、『個人情報が漏れているかもしれず、本当に不安だ』と話した」という。全く警察の落ち度としかいいようのない事件だ。
 そこで,こんなコメントを出した。

■甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)も通報者のプライバシーを守ることが捜査の大前提としたうえで、「児童虐待やストーカーに対しては被害を最小限にとどめる『予防警察』が求められる時代。警察組織はリスク管理のモデルであるべきなのに、意識が低すぎる」と話した。
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2014年01月17日

<BOOK>John Grisham Litigator  2011 <BOOK>John Grisham Litigator  2011

<BOOK>John Grisham Litigator  2011
 キャリーバッグの中に必ず原書の小説が入っている。中でも,グリシャムの法律家小説は安心感をもって読めるので,よく行動を共にする。もっとも幾つかの作品を厳密に読み込むと,駄作と圭作になる。だが,クリアな(日本人にも分かりやすい)英語で,テンポの早いストーリー展開によって,法の世界のフィクションをまとめている。だから,海外の本屋であれこれ悩むくらいなら,と彼の本を選んでキャッシャーに運ぶ。
 もっとも,その割に,ポケットブックを開き始めてから,電車の行き帰りなどに読むだけなので,最後の頁に来るまでに2月〜3月と時間のかかる,のんびりした読書にもなるが,まあ,やむをえない。
 さて,”Litigator”。
主人公David Zincは,トップローファームに就職できた,ハーバード出身のトップローヤーであったはずだが,ある日,時間制で稼ぎを積み上げなければならない,その生活に嫌気がさして飛び出してしまう。
 向かった先は,しがない中年男ふたりが,Ambulance Chaserなどで仕事をするうさんくさい法律事務所。なにを思ったのか,ある大手製薬会社販売のある薬が副作用を起こすと見込んで,集団訴訟を構える。が,とんでもないガセネタつかみで,訴訟費用ばかりかさむが,勝訴の見込みなし。連邦地裁での陪審員裁判も放棄。未経験のDavidが後始末をするはめになり,事務所経営は破綻。先輩格ふたりの人生も破綻する,,,,
 その伏線として,Davidは,メイドの孫,ミャンマー人の子どもが,鉛中毒になっており,その原因が外国製のおもちゃであることを突き止めている。そして,この輸入元は,アメリカの大手玩具メーカー。見込みのない薬害訴訟で落ちこんでいる一方で,主人公は,玩具メーカー相手に訴訟をほのめかす。
 薬害訴訟には敗訴となるが,玩具メーカーは,巨額の和解に応じて一件落着。しかも,密かに,ライバル会社の問題ある玩具のリストの提供も受けた。かくして,古き良きFineley & Figgは解散し,ロートル2人は,和解金の分け前で隠退。Davidは,独立して,Class Actionの専門家として意気揚々と明日に臨む,,,,
 こんなストーリーだ。おもしろいし,元気が出てくる。また,海外に出たときに,グリシャム本を数冊ため込んでおこう。
book litigator.jpg

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2014年01月16日

■川崎・集団強姦犯逃走事件(4)ー携帯電話「微弱電波探知」について

■逃走容疑者の居場所、借りた携帯の電波で特定
Yomiuri On Line(2014年1月10日08時19分 読売新聞)
 上記記事は,杉本容疑者の身柄確保のきっかけが,同人が友人から入手した携帯電話の発する微弱電波の探知によったことを紹介している。
***引用***
 横浜地検川崎支部から逃走し、9日午後に集団強姦ごうかんなどの容疑で改めて逮捕された無職杉本裕太容疑者(20)が、複数の友人に手助けさせ、神奈川県内を転々としていたことが、捜査関係者への取材で分かった。
 川崎市多摩区の友人宅に潜伏していたほか、車で移動していたことも判明。しかし、大規模な捜査網をかいくぐった杉本容疑者の居場所を警察に知らせたのは、友人から借りた携帯電話の微弱電波だった。
 友人の携帯電話を使い、車で移動している――。神奈川県警が交友関係からその情報をつかんだのは、逃走翌日の8日。杉本容疑者は自宅がある川崎市の高校を中退しており、中学時代の親しい友人らに接触を図るとみてマークしていた。・・・県警は8日夜から、友人が所有する車のナンバーや、杉本容疑者に貸した携帯電話の番号を次々と割り出した。そして9日午前、携帯電話の微弱電波を捉えた。発信場所は横浜市泉区だった。
******
 そして,このあたりに捜査員が大量投入されて,結果的にこの地域に潜む容疑者の身柄を確保できたという。

■では,記事で簡単に紹介されている微弱電話探知は適法か。
 実は,実体そのものが明らかではない。各都道府県警察で,本部長決裁手続によって緊急かつ重要事犯の捜査のために使っているようだ,とは分かる。おりおりの新聞記事で,微弱電波探知で,容疑者や被害者(場合によっては遺骸)の発見に至ったことを紹介する記事も散見される。
 が,基本的にはベールに包まれた装置と措置。刑事裁判でも,こうして犯人逮捕に至った経過自体が証拠に出てくることはまずない。
 では,捜査として許されるか。スイッチをオンにした携帯電話が各個体ごとに異なる周波数の微弱電波を発しているとしよう。そしてこれを探知できる高性能のレーダーがあるとしよう。
 これによって,携帯電話の所在を確認する捜査は,誰のどんな権利を侵害するのか?
 市民は,捜査機関が濫りに市民の携帯電話の所在場所を探り出さないことを期待するプライバシーの権利はある,と云えばある。しかし,逃走容疑者が自己の所在を捜査機関に知られないこと,これを法的に保護に値する利益とは考える必要はない。
 だから,特段あらかじめ法律で「微弱電波探知」という法的手続を定めておかなければできないと考える必要はない。
 他方,本件では,集団強姦犯として疑われている容疑者が逃走したものであって,所在確認をする上で,携帯電話を所持している間に,またスイッチをオンにしている間に,急いで微弱電話を探知して所在を確認する緊急性がある。
 また迅速に所在を確認して身柄を確保するのには,現に携帯を身につけていることが合理的に予想できるのであれば,携帯の所在を確認し,身柄を確保する方法を採る必要性も認められる。
 しかも,常時行動監視のために使っているのではなく,留置中逃走した容疑者について,現に友人から携帯電話を受け取っているという情報がある範囲で,身柄確保の目的で,携帯電話の微弱電波の発信源を確認するものである。プライバシー侵害の程度は極めて限定されている。
 他方,捜査目的も明確で限定されている。その意味で,捜査機関がかかる目的で微弱電波を辿って容疑者の身柄を確保する方法は社会的にも認容されるものであって相当である。
 こう考えると,今回の微弱電波探知措置は,適法な任意の捜査と考えるべきだ。
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2014年01月15日

■平田信事件ーオウム真理教関連犯罪と裁判員裁判

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1 「オウム真理教」関連裁判がまたはじまる。平田信元信者に対する仮谷さん逮捕監禁事件と某大学元教授宅爆弾事件。南青山総本部火炎瓶事件だ。
 こうした一連の教団関係事件の象徴は,1995年3月に発生した地下鉄サリン事件だ。そして,同月末の当時警察庁長官であった国松氏狙撃事件が発生。これも,警察サイドは,有力な別の容疑者がいたが,教団関係者によるものとして捜査。
 96年4月の元教組麻原彰晃の初公判。やがて2006年にはその麻原彰晃の死刑判決が確定し,2010年には警察庁長官狙撃事件が時効を迎える。事件がはじまり,終局していった。
 東京など各地の地裁に事件係属中,当時勤務してた大学のゼミ生とともに上京するなどして裁判を傍聴した。20世紀末を象徴する事件の意味を若者達とともに探るために、、、
2 21世紀が1/10進んだ今,オウム真理教の教団を育んだ精神風土はどうなっているのか。世紀末から「新世紀」への時代の変わり目は,日本社会の精神構造の革新をもたらしつつあるのか。それとも,社会心理の病理は,さらに深化してるのか。
 過去を振り返る平田信元信者の裁判を通して,我々は,現代と近未来を見通す知見を得なければならない。
 この集団を,20世紀末に発生した「カルト」集団と呼ぶのはたやすいし,地下鉄サリン事件は,狂気の犯罪としかいいようがない。
 が,信者には有名大学を出て将来エリートとして日本社会をリードすることを期待できた者が多数いた。彼らが数々の凶悪犯罪を計画的に大胆に実行した。だから,世紀末の社会病理の深さを暗示させた。衝撃は大きかった。だが,解決策の目途がたたないまま裁判のみ終局した。
3 それから四半世紀が立つ。今度は,市民が刑事裁判の主人公となる新しい時代に,平田信の事件が裁かれる。死刑囚である井上嘉弘,中川智正,林泰男が証人に立つ。平田信が起訴されている假谷清志さん逮捕監禁事件と島田元教授宅爆弾事件は,オウム真理教事件の伏線となるものであり,当時の教団の考え方と組織原理がよく表れている。
 お布施をする財産のある信者を教団施設に囲い込んで逃さない強引さ,自作自演の犯罪を起こしてでも教団を守ろうとするしたたかさ,教祖の指示に従い世俗の法を無視して大胆に犯罪を実行する帰依心の強さなどなど。
 それを裁くのは,市民だ。
 20世紀末から21世紀初頭にかけて,刑事裁判は装いを大きく変えた。「市民主義」裁判の導入だ。市民は裁判員として自ら裁判に関与する。被害者は,被害関係人としてやはり法廷の主人公となる。
 かえって事件を冷静にみることができる。
4 地下鉄サリン事件発生当時連日マスコミを賑わしたオウム報道は遠い記憶となっている。社会が被った惨劇という意味ではその後の東日本大震災,東電原発事故などが現在も大きな爪痕を残している。その意味で,オウム真理教に対する予断・偏見が全面にでる裁判にはなるまい。それに,ここ数年の裁判員裁判の経験から,市民が法律家とともに冷静に証拠を評価し,厳正に量刑をおこなっている実績が積み上げられている。市民良識は,強靱であって,一過性のマスコミ報道に強く影響されることはない。
 市民の別のグループ,被害関係者は,今や傍聴席から法廷へと席を移し自ら刑事裁判の主体となっている。被害関係者の刑事裁判への参加の権利の発展する時期と一連のオウム真理教関連事件の裁判が進行する時期とも重なる。
 ただ,被害者が求める「真相解明」は,刑事裁判で解明すべき真実とはもともとずれる。
 しかも,オウム真理教関連事件では,麻原彰晃元教組が心を閉ざして久しい。教団の内実を解き明かすことは無理だ。
 それでも,まず,平田被告がなぜこの教団に属したのか,その理由と内部にいて感じたもの,一連のオウム真理教関連犯罪を内側からどうみていたのか,なぜ事件周辺にいることとなったのか,そして,今容疑を否認するにしても,では,主たる犯罪の容疑者ではないのに,17年間逃走を継続したのは何故か,その信念がなにか問い質したい。元教組あるいはオウム真理教の教義への帰依心があるのか,なぜ消えたのか。今は何を支えに活きているのか。今は,一連の事件についてどう受けとめているのか。こういったことも「市民」の目線でぜひ問い質してほしい。
 次に,3人の元教団幹部が,今はカルトの影響を離脱できたのか,それはどうしてか,今は一連の事件をどう思っているのか,市民が自ら問い質す最後の最良の機会としてほしい。
5 20世紀末に「狂気の犯罪」を招いた原因ー「人と人とのつながりの希薄化」ーこれが,21世紀日本社会にはもっと拡散している。個人がしっかりとした家庭基盤,地域基盤,社会基盤をもちながら,企業に属して労働に従事する健全な個人主義社会は,未確立のまま,「少子高齢化」という国家消滅のリズムに入っている。
 それだけに,20世紀末のオウム真理教教団による組織犯罪を一過性の特異な「カルト犯罪」などとして歴史の彼方に置き去りにすることはできまい。若者達を集めた集団が結果としては凶悪な犯罪に走ったことは,強く非難すべきだ。だが,その根底にある社会のありかたへの警鐘,この国の社会のあやうさ,もろさ,教組の命令を絶対と受けとめて行動する教団内部の精神構造が生まれた基板等など,これからの日本社会を考えるにあたり,真剣に解き明かすべきテーマは多い。。
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2014年01月14日

■川崎・集団強姦犯逃走事件(3)ー犯人逃走と犯罪の成否

報道によると,杉本容疑者の逃走には,友人等の助けがあったようだ。
以下,引用する。
***引用***
■川崎・容疑者逃走:友人が手助けか 杉本容疑者、46時間後に逮捕
毎日新聞 2014年01月10日 東京朝刊
 横浜地検川崎支部(川崎市川崎区)から逃走した同市多摩区宿河原、無職、杉本裕太容疑者(20)が9日、46時間半ぶりに発見され改めて集団強姦(ごうかん)容疑などで逮捕された事件で、神奈川県警は杉本容疑者が逃走中に知人の携帯電話を入手していたことを明らかにした。逃走直後に知人のスクーターに同乗して同級生宅などに向かった疑いも浮上。県警は友人らが逃走を手助けしていたとみて事情聴取を進め、経緯を調べる。【河津啓介、一條優太】
 杉本容疑者は、地検川崎支部から南西に約20キロ離れた横浜市泉区和泉町の和泉川河川敷で発見された。
 県警によると、杉本容疑者には所持金がなく、現場周辺で目立った衣類や現金の窃盗事件も発生していないため、協力者がいるとみて捜査。杉本容疑者が小中高校時代を過ごした川崎市北部を中心に、友人ら20人以上から事情聴取していた。
 その過程で8日、逃走中の杉本容疑者が知人の携帯電話を所持していることが判明。9日早朝から携帯電話が発する電波をもとに位置情報の割り出しを進めたところ、横浜市西部の泉区、瀬谷区付近にいることが分かったという。
 さらに9日未明、中学時代の友人の車が川崎市から泉区、瀬谷区に移動していることを把握。同日午前には瀬谷区で中学時代の友人男性2人(ともに20歳)が乗っているのを発見した。
 これらをもとに両区に捜査員を大量投入したところ、県警泉署員が東海道新幹線線路近くの和泉川河川敷で杉本容疑者を発見。川に入って20メートルほど上流に逃げたが、向かい側から別の泉署員2人が挟み撃ちのように駆け付けたため観念し、本人であることを認めたという。
*******
 では,【Q】3:本人が逃走したことは犯罪か。
■いくつか関連条文を掲げる。
 第97条(逃走) 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。
 第103条(犯人蔵匿等) 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
 第60条(共同正犯)二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
 第61条(教唆)人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
 第62条(幇助)正犯を幇助した者は、従犯とする。
■こう整理できる。
(1)本人が,逮捕後,まだ勾留されていないとき,つまり,裁判官・裁判所の「裁判」を根拠とする身体拘束から逃げたといえないときには,逃走罪は成立しない。
 逮捕状も一種の裁判なのだが,性質上,『許可状」であって,捜査機関が裁量によって執行するかしないかを判断できる性質のものだ。だから,「裁判の執行による拘禁された」ものではない。
(2)犯人蔵匿,犯人隠避の罪は,その犯人自身は含まれないのが当然である。
 ただ,今回は報道によると,友人などの助けがあったようだ。バイクによる逃走,携帯電話の入手,着替えの入手などなどが報道されている。
 もし,知人・友人が,容疑者(被疑者)として逃走中であることを知りながら,なにがしかの手助けをした場合には,犯人蔵匿または隠秘として処罰される。
 そして,友人・知人等に事情を打ち明けて助けをもとめた場合,容疑者(被疑者)本人は,「正犯」としては処罰できないものの,教唆犯としては処罰できる。自分を助ける友人・知人が助けやすいように協力した点を幇助に問う余地もある。
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2014年01月13日

■クラッシックとジャズー音楽の温泉

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 1月11日(土)。
 兵庫県芸術文化センター。ラデク・バボラークのコンサート。前半は,バボラークが自らホルンを奏する。後半は指揮者として登場。神戸女学院小ホール。席は,夫婦で一列目と二列目。手の届くすぐそこがステージで,プレイヤーが楽器とともに座っている。音がダイレクトに体に染み込む。ホルンの謎も解けた。右手はなにをするのか? チューブの中にげんこつにして入れている。それが目の前に見える。ハイドンの『軍隊』は迫力であった。
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 1月12日(日)
 神戸。ソネ。昼下がりのジャズコンサート。ピアノ,朱恵仁。ボーカル,平野翔子。このコラボは,ぜひ『観たかった』。朱恵仁のジャズピアノは見事。全身でピアノと一体となってジャズのリズムを鍵盤から叩き出す。そして,平野翔子。そのピアノをバックにして,しっかりした声量でテンポの実に早いジャズを歌う。バス,ドラムも混じるステージ。
 ことに朱恵仁のピアノ。
 平野翔子の歌をしっかりと包み込んで,もっとテンポをはやめ,リズミカルにし,平野翔子の持ち味をさらに外に出させる不思議な力がある。「ジャズ力」を高めるピアノだ。すごいと思う。2時間があっという間であった。座ったテーブルのすぐ向こうがドラマーの座る場所。ボーカルもすぐそこで歌う。ジャズが体に染み込む。
  
 「音楽浴」について
 さて,かくして,どちらのコンサートもライブでしかもステージが手の届く場所で聴けた。音楽が,直接体全体を包む感じになる。ちょうど,温泉にゆっくりと浸かるのと同じ体感となる。疲れが,音の響きによって体から抜けていく。温泉と同じく,肩の凝りがとれ,疲れが流れ出る。
 ピアノの朱恵仁,ボーカルの平野翔子。ふたりのテンポの早いジャズ。今は,肩の凝りがとれると感じられるのだが,年を取るにつれてうるさく感じるようになると思う。そのときには,ソネのいつものスケジュールで,ゆったりめの静かなテンポの曲を聴けばよいのだろう。 
 もっとも,昨日のコンサートには,編者よりもはるかに年齢上のジャズファンが大勢居たことだ。しばらくは,ふたりの追っかけ(?)をしてみよう。
 なお,下記の平野翔子さんの写真は,彼女のブログ,2013年2月分からの転載である。

 http://shoookooo.jugem.jp/?month=201302

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2014年01月12日

■川崎・集団強姦犯逃走事件(2)ー二度目の逮捕について

【Q】2:報道では,再び指名手配をして逮捕したという。逮捕状はどうなっていたのか。
(1)今回の事件で,杉本容疑者(被疑者)は,逮捕された後,警察へ引致されて,その後検察官が勾留を裁判官に請求する準備のために,検察庁の支部に身柄が連行されているうときに起きた。検察官への送致後,なお留置中の逃走である。
 では,二度目の逮捕の根拠はなにか。
(2)そもそもの逮捕が,通常逮捕,緊急逮捕どれなのか報道の限りでは定かではない。6日の午前3時に逮捕となっている。とりあえず,あらかじめ令状が出ていたとしよう。
 警察は,現場で,容疑者(被疑者)に令状を提示して,逮捕状を執行する。「逮捕」という法的な状態となる。要するに,本人には法的に自由を拘束された状態=勝手に行動できない義務が課され,これに反しても実力行使ができる。
 逮捕状には,通常引致すべき場所が指定されている。
 つまり,「逮捕⇒引致」は逮捕状によって一体として行える自由の拘束である。
 引致という身体の移動のためだけの令状審査はしない。逮捕状発付あるいは適法な逮捕がなされたことに伴う法定の強制処分である。
(3)「引致」までは,逮捕の効果の延長なので,通常逮捕の場合,この間に逃走したときには,あらたな令状は要らない。今の令状の執行の枠内で,再度拘束していい。
 次に,「引致」すべき場所に連行された容疑者(被疑者)は,「留置」の段階に入る。これも,適法な逮捕にともなって法定されている身体の拘束である(この場合にも特別の令状審査はない。強制処分として法定されている)。
 「留置」とは,引致後,法定の手続をとり,留置要否の判断をする期間拘束できる処分をいう。
 警察捜査の場合,身体拘束から検察官に送致するまの48時間,検察官が受理してから勾留請求するまでの24時間,身体拘束から計算して勾留請求するまでの72時間を限度とする身体拘束である。
 なお,検察官が勾留請求をしてから,勾留状発付⇒勾留状執行まで若干のタイムラグがあるが,この間の身体拘束も,留置に伴うものとして法定強制処分と扱うべきである。
(4)容疑者(被疑者)が,「引致」されて「留置」の段階に入ると,逮捕状の効力は消滅する。したがって,この後,勾留されるまでの間に逃走した場合には,再度逮捕状の発付を得て身体拘束をしなければならない。
 ここで,次の問題が生じる。
 同じ被疑事実で,二度も逮捕していいのか。
 捜査機関が誠実に捜査をしても,1巡目の逮捕勾留では起訴不起訴を決定できない場合を否定はできない。この場合,刑事訴訟法も同一被疑事実での逮捕勾留を否定はしない。実例もある。
 他方,今回の事例は,当初の逮捕状の効果が容疑者(被疑者)本人の逃走で失効してしまったものだ。再度の逮捕状発付とその執行による身柄確保は当然に許される。

<犯罪捜査規範31条(指名手配)>
1 逮捕状の発せられている被疑者の逮捕を依頼し、逮捕後身柄の引渡しを要求する手配を、指名手配とする。
2  指名手配は、指名手配書(別記様式第二号)により行わなければならない。
3  急速を要し逮捕状の発付を受けるいとまのないときは、指名手配書による手配を行つた後、速やかに逮捕状の発付を得て、その有効期間を通報しなければならない。
posted by justice_justice at 06:21 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする
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