2013年01月25日

■国際テロリストと国外犯ー「国家警察」なき日本の限界

産経ニュース MSN(2013.1.25 11:09)
 「国外犯規定に基づき神奈川県警が捜査へ/現地情勢不透明、難航か」
 アルジェリア人質事件に巻き込まれて死亡し、25日に政府専用機で帰国したプラント建設大手「日揮」の日本人スタッフ9人については、日揮の本社が横浜市にあるため、今後は神奈川県警が司法解剖して詳しい死因などを特定する。県警は刑法の国外犯規定に基づいて、殺人や逮捕監禁容疑などで捜査する方針だが、現地の情勢は不透明なため捜査は難航しそうだ。
 警察当局によると、9人の遺体は羽田空港内で検視し、神奈川県内と東京都内の9カ所の病院で司法解剖して死因を特定するほか、殺害に使われた凶器についても特定を進める。
 県警は国外犯規定で捜査を進めるが、政治情勢や治安状況が不安定な国や地域へ捜査員を派遣するのは困難なうえ、日本の警察が国外で強制捜査に着手する権限はない。このため、現地の警察当局による容疑者の取り調べの立ち会いや情報交換などにとどまるのが実情となっている。
 今回の事件についても情勢が不安定なため、「現地の捜査機関がどれほど協力してくれるか、不透明な状況だ」(警察庁幹部)という。
 国外犯への刑法の適用は通貨偽造など日本の法益を損なう場合に限られていたが、平成15年に殺人や傷害、逮捕監禁、強制わいせつなどの凶悪事件にまで拡大。昨年8月に内戦状態にあるシリアを取材中に銃撃されて殺害された、ジャーナリストの山本美香さんの事件についても警視庁が捜査しているが、実行犯の特定などの捜査は難航している。
 警察庁は18日から、日本人がテロなどの被害に遭った場合に現地で情報収集や捜査支援にあたる国際テロリズム緊急展開班(TRT−2)を派遣、日本人犠牲者の身元の特定などの作業にあたってきた。

■「テロ犯人が、アルジェリアで、日本人を殺害する」。

 これは、日本の刑法上、殺人罪にあたる。
 当たり前といえば、当たり前だが、他方、グローバル化した「世界」は、まだ「世界法」が規律する世界ではない。
 「主権=国家」を単位に、国の及ぶ範囲が限定されている。日本の警察が、日本の裁判官の発した逮捕状を持参して、アルジェリアに乗り込んで、犯人を捜査し、その執行のため、アルジェリア人の住宅に踏み込むことは、、、できない。
 主権尊重。この国際秩序をやぶるとき、戦争を覚悟することとなる。
 さて。
 刑事訴訟法は、観念的には、世界に適用されていると解釈してよい。ただ、より強い力でその効力が阻まれている。繰り返すが、主権である。
 ただし、国内法上適法に捜査することができるから、アルジェリアの司法当局に対する捜査の協力、情報提供の要請、外交ルートでの了解を踏まえた捜査員の派遣と取調べなどへの立会などは、可能になる。
 ただし、当然であるが、これは、日本の警察が、そして、日本の国家が、国際テロリスト組織と直接対峙することも意味する。その覚悟と、これを遂行する力の保障を必要とする。
 とすると、なによりも、いち早く、警察庁のもとに執行部隊としての国家警察を創設するべきだ。自治体警察中心主義で、国際犯罪、国際テロには対応できない。
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2013年01月24日

『生きているうちに見つけてくれた』ー心に残る言葉

 Book Asahi Com に、芥川賞を受賞した、黒田夏子さんの受賞記者会見の模様が掲載されている([掲載]2013年01月17日)。そのシンボルとなったことばが、胸にほんとうに響く。

 「生きてるうちに見つけてくれた」

――まず今のお気持ちを一言。
 大変感謝しています。ずっと、こういう年齢になってから、ということにためらいがありまして、若い方のお邪魔になってはいけないと思ったんですけれども、もし例外的な年齢でこういうことになりまして、それが他にもたぶんたくさんいらっしゃる、長年隠れているような作品を見つけるきっかけになるならば、それがひとつの私の役割なのかと思って、喜んでお受けしたいと思います。生きているうちに見つけて下さいまして、本当にありがとうございます。

 彼女の本、ぜひ読もう。
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2013年01月16日

■貝塚高1自殺事件の波紋ー「過去形警察」の失敗/「未来形」警察の待望

■1:「大阪の高1自殺で19歳を書類送検/窃盗教唆容疑」朝日新聞2013/01/16(朝刊)を引用する。
 「大阪府貝塚市で2011年10月、府立定時制高校1年のK・T・・・さん(当時18)が自殺した問題で、府警は15日、中学時代の元同級生の少年(19)を、Kさんらにひったくりを指示したとする窃盗教唆容疑で書類送検し、一連の捜査を終えたと発表した。元同級生は黙秘しているという。
 府警は、特別少年院送致が相当との意見をつけた。遺書には、元同級生からの金銭要求をうかがわせる記述があったが、具体的な証拠が集まらず、府警は恐喝容疑などでの立件を見送った。自殺の原因については「断定できなかった」(少年課)としている。
 元同級生の送検容疑は09年12月、別の元同級生(18)を通じてひったくりを指示し、Kさんと大工の少年(19)に60代女性から紙袋を奪わせた疑い。Kさんの父親(43)は「自殺の原因がはっきりしなかったのは納得できない」と話している」。
■2:この記事の背景を簡単に知るための記事をもうひとつ紹介する。「ひったくりを指示、専門学校生認める/きょう書類送検/貝塚18歳自殺【大阪】」朝日新聞2012/11/22(朝刊)だ。
 「大阪府立高校定時制1年の男子生徒(当時18)が昨年10月に自殺し、大阪府警が再捜査に乗り出した事件で、生徒ら2人にひったくりを強いた疑いがもたれている中学時代の同級生の専門学校生(18)が、府警の事情聴取に「ひったくりを指示した」と話していることがわかった。
 大阪府警は専門学校生を22日、実行役の生徒と別の少年(19)とともに2009年12月上旬、バイクを使って同府泉佐野市内の路上で、60代女性から紙袋をひったくったとする窃盗容疑で書類送検する。また、生徒の遺書で名指しされた別の元同級生(19)の関与についても調べる。専門学校生を介し、最初にひったくりを命じた可能性もあるとみている。
 生徒は泉佐野市のKTさん。昨年10月27日、同府貝塚市内の空き地で首をつって死亡しているのが見つかった。父親(43)らによると、残された携帯電話のメモには「一生金ヅルはしんどい」など、日常的に金を要求されていたことを示唆する遺書が残されていた。専門学校生と元同級生から、かけトランプゲームの借金返済などの名目で金を要求されていたといい、返済の一環でひったくりを強要されていたとみられる。
 Kさんの携帯電話には遺体発見前後に、専門学校生から少なくとも約20回の着信記録やメールが残っていた。現金を要求するためだったとみられる。
 府警は、専門学校生や元同級生ら十数人の少年から任意で事情を聴いたが、恐喝容疑などを裏付けられず、昨年末にいったん捜査を打ち切った。その後、父親や友人らから、ひったくりを強いられていたとの新たな証言が寄せられ、7月から再捜査していた。」

■3: 恐喝の被害者である自殺者が、恐喝されていたかどうか、これを現段階で立件することは相当困難だ。というのも、恐喝の成立には、脅迫などによって被害者が「こころ」の「畏怖」状態にありながらも、なお一定の自由意思で財産上の処分(主犯にひったくりをしたものを渡す)という一連の事情を証拠で裏付けなければならない。
 被恐喝者が取調べなどで被害状況の供述を残してでもいない限り、「合理的疑いを超える証明」に耐える証拠はあるまい。立件見送りはやむをえない選択だ。
 とは言え、自殺に至った真相は、社会的な意味では解明されないで終わった。
 主犯格と名指しされた少年が本当にひったくりを強要したかどうかは、現段階では「疑い」がある程度で、刑事手続を発動できるまでには至っていない。逆に、少年の人権のためにも、安易な憶測はしてはならない。
 ただ、社会の犯罪抑止力が減退する中、ストーカー的な「まとわり」、執ような「囲い込み」、心の弱みにつけ込む「コントロール」などを特徴とする異様な犯罪が発生している。
 今回の事件のきっかけも、「いじめ」と軽い名称を与えていた。だが、実は「小犯罪」の蓄積という「悪質な犯罪」がストーカー的まとわりつき、執ような囲い込み方犯罪の特徴だ。
 伝統的な犯罪観では認識できない悪質さがある。これに社会が鋭敏に反応できる力がなくなっている。しかも、こうしたささいな事件が積み上がるような事件では、なかなか「警察・検察・司法」という巨大な国家権力が直ちに対峙するべきターゲットとは扱われてこなかった。「組織」が動かない。他方、家族ーその周辺の血縁ーこれらのユニットが住む地域ー地域の核となる学校などなど「個人」が心のよりどころとなるべき絆が、ない、中で、異様な犯罪が起き、対処しきれないでいる。
 かくして、犠牲者が出る−「自殺」。
 統計的には犯罪認知件数が減っているが、体感としての「治安」への不安はむしろ強くなっていると思う。それは、社会の脆弱性がより深刻になっている一方、その隙間をねらったような「がん細胞的犯罪」が蔓延っているからではないか。
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2013年01月15日

■国松元警察庁長官狙撃事件異聞ーアレフに対する名誉毀損と警察の情報捜査

■1:ネット配信、MSN産経ニュースによると、「『刑事司法を根底からゆるがす』と非難/警察庁長官狙撃の捜査結果公表/都に100万円支払い命じる/東京地裁」と題する記事を掲載している(2013.1.15 15:23 )
 以下引用する。
 「公訴時効が成立した平成7年の国松孝次警察庁長官(当時)銃撃事件で、警視庁が「オウム真理教信者による組織的テロ」とする内容の捜査結果を公表したことで名誉を傷付けられたとして、教団主流派「アレフ」が東京都などに5千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、東京地裁であった。I・H裁判長は結果公表について「重大な違法性を有する行為」と認定。都に100万円の支払いと、アレフに謝罪文を交付することを命じた。
 警視庁は平成22年3月の時効成立を受けた会見で「オウム真理教の信者グループが、教祖の意思の下に、組織的・計画的に敢行したテロであった」と捜査結果を公表。・・・I裁判長は「犯人を『オウム真理教』『教団』と直接的に指し示していないが、一般読者はオウム真理教が組織的・計画的に事件を実行したとの印象を受ける」と指摘。アレフの施設建設に伴う住民の反対運動などを挙げ「アレフがオウムと同様の危険性を有する宗教団体と認識されていることは明らか」として、アレフの名誉が毀損されたと結論付けた。・・・
 判決はさらに、不起訴処分とした事件の捜査結果公表について「無罪推定の原則に反するばかりでなく、我が国の刑事司法制度の基本原則を根底からゆるがすもの」と厳しく非難した」。

■2:記事を読みながら、こんな感想を抱いた。
(1)警察は、今までも、見込み捜査を真実と発表することでマスコミを利用し、容疑者など事件関係者に圧力をかけて、自白を強要し、えん罪を生んできた。その体質をふたたび露呈したもので、これを強く批判した判決は正当だ。
(2)警視庁刑事部では当時元オウム真理教関係者以外の有力な容疑者を対象に捜査していた。
 刑事警察の手法を用いて地道に証拠を重ね、状況証拠による事実認定を慎重に行っていけば、案外、真相解明、真犯人到達に至った可能性もあった。
 あくまでも、オウム真理教関係者の犯行という見立てにこだわったのは、公安警察だ。が、捜査は失敗。
 あたかも、これを覆い隠すため、非難の矛先を元オウム真理教の後継組織である、アレフに向けさせようと世論操作しようとしたことは明白だ。
 許し難い情報操作だ。
(3)公訴時効を迎える時点で犯人を特定できる証拠はなかった。だが、公安部の見込み捜査が真実であるかのように発表し、公安の捜査を正当化するため世論操作に利用しようとしたものだ。
 これは、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事手続の原則、容疑者の名誉侵害を禁ずる刑訴法の原則を無視した権力濫用・人権蹂躙の典型だ。
(4)最近も、JR西日本の執行役員が痴漢事件で逮捕された事実を大阪府警が広く公表した後、釈放中自死したことも記憶に残る。
警察による「マスコミ利用」。
 「マスコミ操作」に便乗するマスコミの側の力量不足にも問題が残るが、やはり権力の側の情報操作力は強い。
 その控制を考えるべきだ。今後、逮捕した事実の取扱いも含めて、捜査情報の公平かつ公正な公表のありかたを第三者もまじえて検討するべきだ。
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2013年01月06日

■警察官脅迫罪の加重処罰ー個人情報ビジネスの弊害

■「娘の名告げ加害示唆/警官脅迫容疑で風俗店経営者ら逮捕/愛知県警が描く警部脅迫事件の構図」(朝日新聞デジタル2013年1月5日20時49分)

 「愛知県警で暴力団捜査を担当する警部に、捜査をやめるよう求める脅迫電話がかかってきた事件で、県警は5日、名古屋市を拠点とする大手風俗店グループ「ブルー」の実質的経営者のSY容疑者(55)=同市昭和区福原町2丁目=ら男3人を脅迫の疑いで逮捕し、発表した。県警は、指定暴力団山口組弘道会と資金的なつながりが深いとみるSY容疑者が捜査妨害を狙ったとみて、背後関係を調べる。3人とも容疑を否認しているという。
 役所や企業が管理する個人情報が闇市場で売られる「個人情報ビジネス」は、警部への脅迫事件の捜査がきっかけで明るみに出た」。

警察を守ること。
 日本社会がまだ健全である理由は、公務員の倫理性の高さにある。
 特に、警察官・検察官・裁判官など司法に携わる職業人の倫理意識の高さには敬意を表するべきだ。
 それだけに、特に暴力団など社会の「ダーク・サイド」に接することの多い警察官は、同時に、誘惑も脅迫も多いと推測する。巧妙な罠が仕掛けられることもあるのではないか。そして、上記記事のように、ダイレクトに、家族というもっとも弱い部分を狙った脅迫もある。
 司法権力を持つ警察官などが権限を濫用する場合、ことのほか重く処罰すべきだが、他面で、警察官の公務に関連した脅迫には、重罰を科すべきではないか。一般市民に対するのと同じ脅迫罪しか適用がないというのは、考えものだ。
 公務員を特権階級にする必要はないが、民主主義社会の骨格を担う公務員を保護するのも社会の責務だ。
 (なお、その公務員が無駄なく、効率的に職務に専念できる首長や政治家(せいじか。せいじやではない)を選ぶこともまた市民の責任だ。いい加減な選挙をしていい加減な政治家しか選ばずにいて、公務員組織の過不足・質量を問題にしても本末転倒であろう。このことと、警察の倫理性保護とは別の課題でもある)。

■ 刑法222条(対公務員・加重脅迫罪) 
1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
3裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者に対して、その職権に関連し第1項または第2項の脅迫を行った者は、3年を超え15年以下の懲役に処する。

(参照ー現行刑法)
第222条(脅迫) 
1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
第194条(特別公務員職権濫用)
 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。
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■2012年後半映画鑑賞記(2)ーロシア映画2作/判定C

□1:『3デイズイントレンチ』movie_threedays in trench.jpg
○監督:アレクサンドル・ダルガ
○出演:アレクセイ・ヴォロビョフ、クセニア・スルコヴァ、ヴラディミール・ゴスチョクヒン
 「激戦地帯で戦う男たちの決死の姿と友情を描いた戦争アクション」だというが、「で18歳にして小隊の指揮官に任命されたソ連軍中尉・。のだが、、、大変間延びしたドラマ。
 「3デイズ」=3日間。
 第二次大戦中、独ソ戦線最前線。士官不足に悩むソビエト軍では、18才のクラヴツソフ中尉が任官初日から最前線に配置される。そこでは、士官は3日で死ぬといわれているところ。
 戦闘経験豊富な兵士たちは未熟な指揮官に反発するが、極限の状況下で次第に結束を強めて、前線近くの風車小屋にあるドイツ軍観測所を3日目にして奪還し、無事生き延びる話。伏線に、戦場になったその地に住む老人とその孫娘。老人が小隊を風車小屋へ案内する。孫娘と主人公の小隊長中尉との間にほのかな恋が芽生える。奪還直後の風車小屋へ彼女がおじいさんを探しにいったりする、ありきたりの『ロシア風戦場メロドラマ』が伏線にしかれた戦争もの。
 しかし、今は、ファシズムとの戦い、東西対立の緊張といった思想的背景が出てこない。それだけに、緊張感の全くない、たいへんつまらない戦争物になってしまっている。
 ロシア映画には不思議がある。
 ソ連時代、つまり思想闘争と統制の厳しい時代から、『戦場メロドラマ⇒一件落着』パターンが是認されていることだ。
 「戦場のど真ん中での、恋愛」。この一体化という心情にロシア国民はことのほか落ち着きを感じるのだと思う。
 ハリウッドの『マスコミ暴露』パターンと同じ様なものと分類しつつ、興味深くは思っている。

□2:『戦火のナーシャ』
movie_戦火のナーシャ.jpg
○監督:ニキータ・ミハルコフ
○出演:ニキータ・ミハルコフ/ ナージャ・ミハルコフ/オレグ・メンシコフ/ビクトリア・トルストガノワ/セルゲイ・マコベツキー
 「ロシアの巨匠ニキータ・ミハルコフの代表作で、カンヌ国際映画祭グランプリ、アカデミー外国語映画賞をダブル受賞した『太陽に灼かれて』(1994)の続編。1934年5月、KGB幹部のドミートリ大佐は、モスクワのスターリン私邸に呼び出され、銃殺刑にされたはずの元英雄アレクセイを捜索するよう命じられる。ドミートリは複雑な思いにかられながらも、アレクセイの消息をたどる。第2次大戦下のソ連を舞台に、男女3人の数奇な愛憎を描く戦争ドラマ」なのだそうだ。要するに、元英雄の娘が、父は活きていると信じて、自ら戦場に出向く話。
 戦火のナーシャも同じ。父を捜して戦場を巡るある少女の話を描いたもの。ひきしまった緊張感のない映画。
 ともにC級。
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2013年01月05日

■2012年後半映画鑑賞記(1)ー『デインジャラス・ラン』/判定B

B級とC級の見極め。引き締まったB級映画をみつけること。こんな関心で映画をツタヤから借りる。例えば、今新作で並ぶ『デインジャラス・ラン』。原題は、"Safe House"。原題とは無縁の日本語タイトルであるが、内容をよく反映したタイトルではある。movie_safe house.jpg 

 デンゼル・ワシントン扮するCIAの元工作員。秘密情報を売買して儲ける裏の商売に手を染めて、各国諜報機関から追われる身であったが、実は、CIAを含む西側各国の腐敗工作員を暴いた調査ファイルを極秘に入手していた。このため、表と裏の理由でCIAからも追われる。CIA腐敗幹部は暗殺とファイル奪還を狙う。ライアン・レイノルズ演ずる新米CIA工作員が南アフリカの「秘密基地」の管理を任されているところへ、この元工作員が連れ込まれて安全確保を命じられる。だが、腐敗工作員の密命を受けたCIAの暗殺部隊が襲撃。警備隊は全滅。一人で元工作員を探し出し、逃走した後もこれを発見してあくまで米国へ連れ戻そうとする。次のsafe houseに逃げ込んだが、最後の襲撃を受け、デンゼル・ワシントンも撃たれて死ぬ。秘密ファイルを主人公受け取って帰国。これをマスコミに暴く、といった展開。
 アクションのテンポはいい。が、よくみていると、最後のsafe haouseの管理人が主人公等を殺そうとした理由が不可解。ここでの格闘の意味は不明。秘密ファイルを匿名でマスコミに流して終わり、というハリウッドならではの終わり方もありきたり。日本流水戸黄門が、アメリカ流「マスコミ暴露⇒一件落着」パターンだ。が、まずまず面白い。ひきしまったB級映画だろう。
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2013年01月04日

■尼崎連続不審死事件(5/End)ーえん罪リスクの高い「シャドウ・ビジネス」

*この項目、五回目で一旦終了する。今後の捜査と裁判の展開にあわせて再開する。

■1: NHKの1月1日のネット配信ニュース(NHK WEB NEWS1月1日 4時46分)、「死体遺棄事件 女性殺害も本格捜査へ」が気になる捜査方針を報道している。
 以下の内容だ。
 「捜査関係者によりますと、去年10月、尼崎市の住宅の床下から遺体で見つかった3人のうち、NK・MR子さん(29)について、一部の親族が『平成20年秋に、角田容疑者のマンションのバルコニーにあった物置に1か月以上にわたって監禁した。物置の内部に取り付けた監視カメラで仲島さんが衰弱する様子を見ていた』と供述しているということです。
 NKさんは高松市で家族と生活していましたが、S・M容疑者らとのトラブルに巻き込まれて一家が離ればなれになり、その後、S・M容疑者のマンションで集団生活をしていました。物置に監禁された際に暴行を受けて死亡し、住宅の床下に埋められたとみられています。NKさんの事件について、捜査当局は今月にも殺人の疑いで親族らの本格的な捜査に乗り出す方針を固め、死亡した状況や遺体が埋められた経緯を解明することにしています」。

■2:これに関連して、毎日新聞(朝刊)2012年12月27日の「兵庫・尼崎の連続変死:橋本さんを監禁暴行、殺人罪で6人起訴」に追加された、次の「残る4件も殺人視野」と題する「解説」記事も気になるところだ。以下、引用して紹介する。
***
 6人の遺体が発見された兵庫県尼崎市の連続変死事件で、神戸地検はH・Jさんの死亡について殺人罪の適用に踏み切った。有識者によると、監禁による死亡で殺人罪を認定した判例はなく、先に発覚したOO・KZ子さん(当時66歳)のドラム缶詰め遺体事件でも傷害致死罪にとどめていた。今回の判断は、残る4人の事件についても極刑の選択肢がある殺人容疑を視野に捜査を続けるという、捜査当局の強い意志の表れといえる。
 Hさん監禁の実行役だったとされるR・MSNR被告は調べで、S・M元被告の指示に従っただけで殺意はなかったと強調したという。S・M元被告の供述調書も『全て私が悪い』という弁解録取書以外になく、監禁場所だった物置が撤去されるなど物証も乏しかった。
 だが、捜査当局は取り調べを録音録画する中で、Hさんの過酷な監禁状況についての供述を得たほか、監禁小屋の再現実験などで客観証拠も積み重ね、殺人罪での起訴にこぎつけた。
 一方、残る4人の事件はいずれも3年以上前に発生しており、供述に頼る捜査はさらに困難になることが予想される。S・M元被告の死亡の影響も否定できないが、捜査幹部は『S・M元被告の供述がなくても立件できる捜査をしてきた』と述べた」。

■3:現状をまとめる。
 S・M容疑者(64)はすでに自殺したが、彼女の関わりのある者ら6人が遺体で見つかり、3人が行方不明になっている。このうち岡山県の海から遺体で見つかったH・Jさんについて、S・M容疑者の親族など6人が殺人罪などで起訴された。
 この場合、刑事裁判における事実認定が思わぬ「落とし穴」に引っかかる危険がでてくる。「シャドウ・ビジネス」だ。
 メカニズムはさほど難しいことではない。S・Mの他6人の共同生活で監禁の事実があり、病死や自然死ではない異常な死に方をした者が複数名いる。遺体も埋葬ではなく、遺棄されている。一人の被害者の殺害について「ある程度の証拠」がある、これで、6名全員に対する殺意のある殺害行為について共謀共同正犯を疑う状態にする。が、「合理的疑い」を超える立証に至るかどうかは、微妙である。このとき、2件目、3件目と同じ状態の証拠を積み重ねる。「影に影を重ねる」。そうすると、影が濃くなる、という幻想を事実認定者が持つ。
 偏見と予断が無意識に働く立証構造の作出である。
 むろん、案外それが社会的にみれば、真実であるのかも知れない。ごく自然なものの見方であるのかもしれない。しかし、刑事裁判では、小さな犯罪を大きな犯罪と見誤る「大小」型えん罪も防がなければならない。
 そのとき、ひとつひとつは影の薄い罪を重ねる立証方法がもつ、潜在的な効果には慎重な配慮が要る。
 「疑わしきは処罰する」原則は、裁判官裁判とともに葬りさらなければならない。
 「シャドウ・ビジネス」。影を巧みに利用した有罪認定の作業は、許すべきではない。
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2013年01月03日

■尼崎連続不審死事件(4)ー「幸せ」否定観/「無縁社会」「孤死社会」の結末/「衰退国家」の「滅亡の哲学」

■1:「滅びの哲学」。
 こんないやなことばが、この事件の記事を読む度に頭をよぎる。
 かつてのオウム真理教をめぐる社会現象をひと言で言えば、”救済を急ぎすぎた歪み”が逸脱を生んだ。が、今回の事件の思想的なひもときができない。肝心の主犯格が自殺した。そんななかで、次の記事が参考になる。
*「昔の瑠衣ちゃんに戻って/尼崎連続変死、娘2人が被害者と容疑者【大阪】」
 朝日新聞2012/12/19(夕刊)
 「6人の遺体が見つかった連続変死事件で、遺族の一人、兵庫県尼崎市のT・Aさん(60)が朝日新聞の取材に応じた。長女と実兄、義母が遺体で見つかり、身を隠した元妻は病死。次女は、自殺したS(・・・)M子容疑者(64)らとともに殺人容疑などで逮捕された。『お父さんも何でもするから、早く立ち直ってほしい』と呼びかけた」。
 彼は、主犯格の精神構造をこのように分析する。
「Sは、頼ってきた人間は懐柔するが、敵対する人間はとことん徹底的にやり尽くす。常に誰かを痛めつけている。
 いま思うと、Sは人の幸せを否定するんですよ。社会的に、いいとされていることを否定したがっていた。RIの成績がいいと聞くと学校を辞めさせたり、おばあちゃん(・・・)が高松の家に贈ってくれた花壇の花を全部切ったり。何でそんなことをするのか、理解できない。」 
■2:「幸せ」否定観。
 おそるべき精神構造だ。
 だが、21世紀に入り、国家日本の、経済、外交、人口、教育、福祉、エネルギーなどなどいろいろな面での「破綻」が目立つ。
 「衰退」、このことばがつきまとう。
 そうした国家社会の精神構造を語ることばこそ「幸せ」否定観ではないか。「衰退」国家の「滅びの哲学」。それが蔓延る社会構造、、、。そして、そうした異様な集団生活が日常の中に溶け込んでしまって、浮かび上がらせることのできない、脆弱な社会基盤。社会の歪みを、社会自体の自浄力では正すことがもはやできない。社会の軋みが、社会の破壊に至るまで放置される状態。
 その病理は、個人を労働力のユニットとして扱い、家族・家庭をそうしたユニットを生み出す自動販売機のように扱ってきた戦後日本の資本主義の精神に求めるべきだろう。「独占資本主義」を巨大化させる一方、そこに蓄積された富を社会に還元して、個人・夫婦・家庭・地域・自治体の「豊かさ」を創造するためには投資しなかったツケが今回ってきた。もはや質の高い労働の担い手となる個人を拡大再生産する力を、日本の社会は失いつつある。
 「無縁社会」と「孤死」がそのシンボル的な表現だ。その狭間で、異様な人間関係が形成されていく。社会の「癌」に例えてもよい。「幸せ」を否定する哲学。「健全」であること自体を嫌悪する情緒。そこに、犯罪が生まれた今回の事件を甘くはみないほうがよい。
 類似の事態が、実は、日本のそこここで進行しているか、進行しようとしていることを予想しなければならない。
 「終末」に向かう社会の崩壊現象の一コマとみておくべきだ。
■3:「正義、建設、勤労、努力、希望、幸福、責任」
 健全であることを揶揄する文化が蔓延り始めたのはいつ頃からか。それを払拭することが、不可欠だ。今、価値観の立て直しをまともに考えて、実践しなければ、崩壊を食い止められない。
 
 尼崎連続不審死事件は、日本社会の根深い病根につながっている。
 それを、じっくりと見極めることが「真相解明」の土台となる。
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2013年01月02日

■尼崎連続不審死事件(3)ー「過去形警察」の失敗/「未来形」警察の待望

■1:この事件を理解するのに次の記事が参考となる。
「兵庫・尼崎の連続変死:男女不明の直後、警察相談応じず−−香川、兵庫の3署」
 毎日新聞2012/10/17(夕刊)
「兵庫県尼崎市の連続変死事件で、行方不明になっている男女2人の親類の男性が16日、取材に応じ、「行方不明になった後、警察に相談したが相手にされなかった」と話した。
 2人はSM被告の息子の妻のS・RI被告(27)の姉(29)と伯父(68)。2人ら家族は高松市内に住んでいたが、親類男性によると、2人は03年ごろ行方不明になったという。
 直後に姉の父親と男性の2人で香川県警高松東署と高松南署、兵庫県警尼崎東署を訪れ「娘と兄が連れて行かれた」と相談したが、「事件ではないので動けない」などと言われたという。父親は、ドラム缶詰め遺体事件発覚後、改めて兵庫県警に相談し、捜査が進展した。
 香川県警は「事実関係を調査している」としている。」
■2:かつてオウム事件があった。20世紀末に発生した未曾有のテロ事件だ。日本の警察は事前にこれを「抑止」できなかった。地下鉄サリン事件発生まで、警視庁も、山梨県警もどの「自治体」警察もオウム真理教関連組織に対する本格的な捜査着手に踏み切らなかった。それどころか、松本サリン事件では、真犯人を見誤る積極ミスを犯した。少し良識を働かせれば、サリンの合成が素人の手軽な家庭の化学でできるものではないことは明白で、事件の背後に巨大なるものがあると疑うべきなのに、長野県警は、Kさんを被疑者として扱って無駄な時間と人材の浪費をした。
 なぜか。
 今回も、市民の日常生活の片隅で異様な事態が進行していた。兵庫県警には、おりおり通報があったのではないか。しかし、たかをくくっていたのだろうか。要するに、「事件」性が「低い」から動かなかったのか。
 最後に、今回は、大阪府警が動いた。兵庫県警にも連絡して、重い腰を上げた。そうすると、とんでもない事件であることが判明した。だが、すべて手遅れであった。
 21世紀に於ける「警察」の機能とはないかが問われる。
■3:「有能な刑事」。つまりは、歴史家だ。過去におきた犯罪を繙く。ただし、日本の伝統では、密室で警察の見込みに従った自白をさせて、無理に歴史を作る。そんな取調べ技術に長けた者が高く評価されてきた。経験科学に従った真相解明にはならない。
 「予防警察」。その有能さを評価するのは実は難しい。「なにもない状態」。これを維持すること。「刑事力」ではなく「警備力」こそ評価するべきだ。
 「警備力」。今までは、公安警察・政治警察の文脈で捉えられがちだ。しかし、違う。今の社会と時代は、「孤立」を特徴とする。夫婦不存在、夫婦関係希薄、親子崩壊、家庭消滅、血縁・地縁疎遠、地域力皆無、、、、「人」は会社など組織にエネルギーを吸収される労働力提供のユニットにすぎない。巨大な「資本主義」の組織のごく小さな歯車、、、。
 せめても、国家がダイレクトに「個人」を守るしかない。
 起きた事件を後で迅速公正に解決する「刑事力」ではなく、起きうる犯罪を未然に確実に抑止する「警備力」。これを柱にした警察組織が求められている 難しいことは分かる。机上の空論であることも認識している。「政治家」には笑い話だろう。だから、「学者」が指摘するべき点なのだ。
鬼平犯科帳00.jpg
(追加)ときどきコンビニで『鬼平犯科帳』を買って電車の中で読むのだが、火盗改の活動として描かれている多くは、実は、過去の犯罪自体の捜査よりも、探索と密偵を使った将来犯罪の探知と直前予防である。物語の世界ではあるが、あってほしい警察とは、このようなものではないか。
posted by justice_justice at 06:31 | TrackBack(0) | ■(ケース)尼崎連続変死事件 | 更新情報をチェックする
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