2012年12月21日

■鳥取連続不審死事件(4/END)ー公判前整理手続と「黙秘権」行使の段取り

■「裁判長/弁護側に苦言/検察側/方針変更説明求める=鳥取」
 ○読売新聞(朝刊)2012/10/31
 男性2人を殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われた鳥取市の元スナックホステスU・M被告(38)の30日の裁判員裁判は、地裁(○○裁判長)で検察側がU被告に黙秘の理由などを質問するとともに、弁護側に黙秘に至った経緯の説明を求める異例の展開となった。
 ◇  
 検察側は、2件の強盗殺人事件について、弁護側が犯人と主張する元同居人の男性元会社員(49)=詐欺罪などで服役し、出所=との関係などを質問。「弁護側は元会社員が犯人だとするが、証拠はあなたの話しかないのでは」「あなたの言い分を述べなくていいのか」などと、U被告の反応を確かめながら問いただしたが、U被告は沈黙を守ったままだった。
・・・
 □甲南大の渡辺修教授(刑訴法)は「弁護側が被告の供述を基に立証を計画していたとすれば、急に黙秘に転じたことは理解に苦しむ。黙秘権そのものに対する不信感を強めることになるのではないか」と危惧する。
 一方で「弁護側の訴訟戦術と黙秘権の行使については切り離して考えるべきだ。質問に答えなかったことで、裁判員が悪い心証を持つことを防ぐためには、検察側質問は禁止されるべきだった」と話している。

■「U被告、黙秘貫く/検察の60問に答えず/鳥取連続不審死事件【大阪】」
 ○朝日新聞(夕刊)2012/10/30
 鳥取連続不審死事件で強盗殺人などの罪に問われた元スナック従業員U・M被告(38)の裁判員裁判の第16回公判が30日、鳥取地裁で開かれ、被告人質問があった。U被告は検察側の約60の質問に一切答えず、黙秘。このため午前10時過ぎから始まった被告人質問は、午後5時までの予定が大幅に繰り上がり、約40分間で終了した。
 検察側は、2009年に鳥取県内の海と川で、睡眠導入剤を飲ませた男性2人をおぼれさせて殺したとされる強盗殺人事件について質問。事件当時の同居人で、弁護側が公判で「真犯人」と名指しした元自動車セールスマンの男性(49)の証言に基づき、犯行現場近くでの様子などを矢継ぎ早に問いかけた。検察側は「事実と違うとあなた自身の言葉で述べなくてもよいのか」などと再三、供述を求めたが、U被告は一切、応じなかった。また、「真実から逃げているだけではないか」などの質問に対しては、弁護側が「検察官の意見にすぎない」と反論。○○裁判長も質問を制止し、やりとりのないまま終了した。最後に、裁判長が「裁判所からの質問にも黙秘しますか」と尋ねると、U被告は小声で「はい」と答え、うなずいた。

 □甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は、「黙秘権は、市民が有罪の疑いをかけられたときに自分を守る手段。黙秘の姿勢を表明している被告に検察からの質問を許しては、裁判員に『印象有罪』の心証を与えてしまう。黙秘権の侵害と言え、避けるべきだった」と指摘。「真犯人を名指しするなら、ある程度裏付けできる証拠を出す必要があった。裁判員も戸惑うのではないか」と話した。

■「(とっとりQ&A)連続不審死事件で黙秘権行使/憲法保障、刑事裁判の根幹/鳥取県」
 ○朝日新聞(朝刊)2012/11/05
・・・
 Q 鳥取連続不審死事件で、裁判員裁判が続いてるね。そもそもどんな事件だっけ?
 A 2009年、北栄町沖の日本海と鳥取市内の摩尼川で、男性2人の水死体が見つかって、遺体から睡眠導入剤の成分が検出された事件だ。被害者2人に借金などをしていた、元スナック従業員U・M被告(38)が、強盗殺人罪で起訴されている。
 Q もっとたくさん亡くなった人がいた気もしたけど……
 A 一時は、U被告の周辺の男性6人が不審死した疑いが浮上したからね。でも、2人以外について県警は、自殺や病死などと断定した。それでも、2件の強盗殺人罪と、16件の詐欺などの罪で起訴されており、県警史上最大の事件とも言われたよ。
・・・
 Q 被告は事件についてどう話しているの?
 A 捜査段階で強盗殺人について完全に黙秘していて、裁判で何を語るのか注目されていたんだ。弁護側は初公判で、U被告は無罪で、当時同居していた男性(49)が「真犯人」と主張したんだけど、被告人質問の直前になって、「被告は黙秘権を行使する」と明らかにしたんだ。
 Q 黙秘権?
 A 憲法にも保障された、供述を拒む権利だ。甲南大法科大学院・渡辺修教授(刑事訴訟法)は、「市民が自分を守るのに不可欠で、刑事裁判の根幹をなす権利」と説明しているよ。
 Q でも何にも説明せずに黙っちゃっていいの?
 A 確かに、「一般の人は『自ら弁明することから逃げた』という印象を抱いてしまう可能性がある」と危惧する意見もある。でも、今回の裁判で、○○裁判長は、「黙秘権の行使は被告の権利」と強調。質問した検察官にも配慮を求め、裁判員に理解を促したよ。
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2012年12月20日

■鳥取連続不審死事件(3)ー裁判員裁判と「黙秘権」

■「【沈黙】鳥取連続不審死、判決へ(下)長期日程、難しい事実認定」
 ○産経新聞(朝刊)2012/12/01

産経新聞は、被告人が「黙秘」した事実に焦点をあてる。裁判員が居る法廷で、事件についてなにも語らない選択をすることの意味。「黙秘権」として保障されるべき状態が、実際にもつ効果、、、。どうみるべきか。記事を紹介し、採用されたコメントを掲載して、考える材料にしたい。

*********

 ■裁判員心身に負担重く
 「本当にこの法廷で何も話さなくていいのか」
 10月30日。鳥取地裁で行われた被告人質問で、検察官がいくら追及しても証言台のY・M被告(38)は微動だにせず、裁判員らは一様に困惑した表情を浮かべた。
 公判を通じて「ほぼ完黙」だったU被告。被告人質問に一切答えないというのは、弁護側ですら公判前には想定していなかった事態だった。
・・・
 弁護側は9月25日の初公判で、事件当時にU被告と同棲(どうせい)していた元会社員の男性(49)が真犯人だと主張し、被告本人が法廷で何を語るのかに注目が集まった。公判前整理手続きでも弁護側は黙秘の意向を示していなかった。
 ところが被告人質問直前の10月25日、「現時点の証拠関係だけで弁護人が求める結論を得るのは十分だと判断している」と黙秘を突然表明した。
 検察側の被告人質問は実施されたが、約40分間にわたる60項目以上の質問に、U被告はひと言も答えなかった。結局、法廷でU被告が肉声を発したのは、初公判の罪状認否と最終意見陳述での「私はやっていません」だけだった。
 裁判の争点で検察側と弁護側の主張は大きく異なっており、裁判員にとって、ただでさえ事実認定は難しい。さらに75日間という過去2番目の長さの任期の末、死刑求刑事件を審理するとあって心身ともに重い負担がのしかかる。
 ただ、黙秘権は憲法や刑事訴訟法で定められた刑事被告人の権利でもある。
 平成10年に起きた和歌山毒物カレー事件の公判では、H・M死刑囚(51)が検察側の被告人質問に対して約2時間にわたり沈黙したが、死刑を宣告した1審判決には「黙秘は一切、事実認定の資料になっていない」と明記された。

 □鳥取のケースについて、甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「プロではない裁判員は被告に悪印象を持つかもしれないが、黙秘が不利益に扱われてはならない」と懸念。・・・

 「否認でも何でも、被告本人の言葉を聞いて判断したい気持ちがあった」
 殺人事件での裁判員の経験がある大阪府内の無職男性(68)はこう話す。自らの場合、被告は黙秘したわけではなかったが、「ひとつでも多く判断の材料がほしいというのが裁判員の心理だ」という。
 別の殺人事件で裁判員を務めた会社員の女性(26)も、鳥取の事件について「素人である裁判員にとって裁く相手が黙ってしまうのは苦しい。求刑が死刑ならなおさら。どうしていいか分からなくなり、結局は裁判官に頼ると思う」と重圧の大きさを吐露した。
 裁判員制度は、法律で「必要があれば見直す」とされた施行後3年が経過した。鳥取の事件は、難解な事件を裁判員裁判でどう扱うのか、今後の検討に影響を与えそうだ。
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2012年12月19日

■鳥取連続不審死事件(2)ー2人強殺事件と死刑判決

■「裁判員/至難の判断/U被告あす判決/状況証拠「合理性」カギ=鳥取」
 ○読売新聞(朝刊)2012/12/03
 ◇75日裁判・連続不審死事件
 鳥取連続不審死事件で、男性2人を殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われた鳥取市の元スナックホステスU・M被告(38)の裁判員裁判の判決が4日午前11時から、地裁(○○裁判長)で言い渡される。U被告は犯行を否認する一方、検察側は状況証拠の積み重ねで死刑を求刑。評議には6人の裁判員が参加するが、専門家からは「プロの裁判官でも判断が難しいケース」と指摘されている。有罪・無罪などの判断を巡る基準やルールはどのようなものなのか。・・・
 ■ルール 
 裁判員裁判の判決では、裁判官と6人の裁判員が同じ1票を持ち、有罪か無罪かを決める。原則として、過半数となる5人以上の決定で、有罪か無罪を判断する。だが、プロである裁判官3人全員が同じ判断をした場合、多数決が適用されない例外的なケースとなる。裁判員裁判の評議では、いずれかを判断した5人以上の中に、少なくとも裁判官1人が含まれることが条件となっているからだ。
 □甲南大の渡辺修教授(刑訴法)の話「供述や証拠が検察側ストーリーと矛盾しないだけで、証明が十分としてはならない。状況証拠については、裁判員らは最高裁判例にのっとり、冷静に各証拠を評価することが求められる」
■「連続不審死初公判/識者に聞く/審理計画/裁判員に配慮=鳥取」
 ○読売新聞(朝刊)2012/09/27
 男性2人を殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われた鳥取市の元スナックホステスU・M被告(38)の裁判員裁判。25日の初公判では、U被告を犯人とする検察側と、事件当時にU被告と同居していた男性元会社員(48)とする弁護側の主張が真っ向から対立した。裁判員は、状況証拠を基に有罪か無罪、有罪の場合は死刑も含めた量刑判断を迫られる。プロでも事実認定が難しい裁判を識者はどう見るのか聞いた。
・・・
 □状況証拠による有罪認定については、大阪の母子殺害事件の上告審(2010年)で最高裁が下した無罪判決での「状況証拠によって認められる事実の中に被告が犯人でなければ合理的に説明できないものがあることを要する」という点が基準となる。
 こうした点を踏まえ、甲南大の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「検察側の証拠と説明に矛盾がなければそれでよいという『必罰主義』に陥ってはならない。裁判員は、犯人と認定せざるを得ない事実があるのかという判例上の厳格な観点から判断するべきだ」と指摘する。

■「(熟議の75日/鳥取連続不審死事件裁判)初公判/遺族「真実を話して」/鳥取県」 ○朝日新聞(朝刊)2012/09/26
 「県警史上最大」とも言われる鳥取連続不審死事件で、2件の強盗殺人罪などに問われた元スナック従業員U・M(***)紀被告(38)に対する裁判員裁判の初公判(○○裁判長)が25日、鳥取地裁であった。強盗殺人罪について、U被告は「私はやっていません」と、否認した。判決は12月4日。初公判の1日を追った。
・・・
 □「犯人適合事実」に沿って精査を
 <渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話> 裁判員裁判は、乏しい証拠によって被告を犯人だと説明づけるための制度ではない。検察官が法廷で示す証拠では被告が犯人であるということに疑いが残るのであれば、割り切って無罪とすることこそ求められる。
 裁判所は今、「被告が犯人であれば矛盾しない」という基準より厳格な、「被告が犯人でなければ説明のつかない事実が、間接証拠に含まれることが必要」とする「犯人適合事実」のルールを適用して判断している。
 本件でも、裁判長は裁判員に「疑わしきは被告人の利益に」に加え、このルールを説明し、それに沿って証拠を精査しなければならないし、弁護側もその点を指摘するべきだ。
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2012年12月18日

■鳥取連続不審死事件(1)ー間接事実のつみあげと「合理的疑い」

□1:2012年12月4日、いわゆる「鳥取連続不審死」事件に対する判決公判が開かれた。
 鳥取県を舞台に、債務の返済を免れるために知人男性2人を殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われた鳥取市の元スナックホステスU・Y被告(38)の事件である。
 裁判員と裁判官は、検察官の求刑通り死刑を宣告した。
 U被告は、2009年4月、トラック運転手・Yさん(当時47歳)に睡眠導入剤などを飲ませ、鳥取県北栄ほくえい町沖の海岸で水死させて借金270万円の返済を免れた事件、同年10月には、同市の摩尼(まに)川で電気工事業・Mさん(同57歳)を同様の手口で水死させ、家電製品代約53万円の支払いを逃れた事件などで起訴された。罪名は強盗殺人である。被告側は、詐欺事件の共犯が真犯人であり、被告人は無罪と主張していた。

□2:今回の事件では、自白や目撃供述あるいはこれに準ずる犯行関与を直接裏付ける証拠はない。間接事実を積み上げて、犯行態様と被告人の犯行関与、殺意を立証する状況証拠型事実認定を要する事件であった。
 間接証拠ひとつひとつからどこまでの事実を推認し、それらを組み立てたときに、「被告人が、殺意をもって、被害者を溺死させた」という構図が、裁判員と裁判官の心証風景の中にくっきりと浮かびかがるかどうか。
 これが鍵である。
 そのとき、「合理的疑いを超える証明」という事実認定の水準が、飾り言葉としてではなく、心証形成を規制するルールとして本当に働いたかどうか。

□3:従来は、「「疑わしきは処罰する」という心証形成の事実上の水準がプロ裁判官の中に定着していた。これを裁判員裁判も継承するのか、それとも、「犯人捜し」ではなく、「合理的疑い」あれば慎重に有罪認定は避ける姿勢で臨むのか、こうした裁判員裁判時代の事実認定の水準が問われた裁判であった。

□4:これに加えて、被告側は、冒頭陳述で詐欺事件の共犯者で同居していた男性を殺人事件の主犯であり単独犯として名指しで指摘する異例の主張をした。しかも、これを裏付けるべき主要な証拠と言えば、被告人本人の供述となるところ、当初は長時間の被告人質問の時間を審理計画に組み込んでいたものの、直前になって黙秘権行使を裁判所に告知。
 質問に応じるように説得する程度の時間はとったが、結局、被告人は法廷ではなにも語らずに終わった。
 黙秘権行使は正当だ。しかし、そうであれば、公判前整理手続の段階から黙秘権行使が裁判員裁判でかえって被告人に不利な心証形成の基礎にならない防御準備が不可欠だ。その点でも課題を残した。

■そうして点について、各新聞にいくつかコメントを掲載してもらったので、転載しておく。
***
「裁判員「判断難しかった」/連続不審死/死刑判決ドキュメント=鳥取」
 ○読売新聞(朝刊)2012/12/05
 ◆「説得力ある事実認定」「検察側の立証成功」 識者に聞く 
 状況証拠による事実認定に基づいて死刑を言い渡した今回の判決について、識者に聞いた。
 □甲南大の渡辺修教授(刑訴法)は「状況証拠という点と点を適切につなぎ、説得力のある事実認定になっている」と評価。男性元会社員の証言に関し、信用性の一部に疑念を示したことには、「元会社員の話がどこまで信用できるのかを慎重に判断したのだろう」とする。また、「弁護側の被告人質問取りやめなど、上田被告側の不合理な行動を考慮することなく判断し、黙秘権を尊重した判決だ」とした。
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2012年12月17日

■舞鶴事件ー無期懲役から無罪へ

■舞鶴事件ー高裁無罪判決について

 *2008年5月に、舞鶴市の雑木林で高校一年のKさん(15才)が、性的乱暴目的で襲われ頭や顔を鈍器で殴られて殺害された事件について、一審の京都地裁が有罪を認めて、死刑求刑に対し、無期懲役としたが、高裁は、無罪とした。これについて、次のコメントが掲載され居ている。

○「弁護側『的確な判断』/舞鶴殺害無罪/高検、Nさん勾留上申」(産経新聞(朝刊)2012/12/13)
 □最高裁に沿って吟味
 渡辺修甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話
 「最高裁が示した考え方が高裁レベルにまで浸透してきたことを示しており、注目すべき判決だ。これまでの刑事裁判では、検察側の主張と矛盾がない程度でも有罪とする『疑わしきは処罰する』という文化が裁判官の中に広がっていたが、見直しが迫られる」

○「舞鶴高1殺害逆転無罪、大阪高裁判決、目撃証言の信用性否定」日本経済新聞(夕刊)2012/12/12)
 □最高裁が示した
  基準の浸透映す
  渡辺修甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 
 状況証拠に基づいて事実を認定する際の基準として最高裁が示した「被告が犯人でなければ説明できない事実」がなければ有罪認定できないとする考え方が高裁レベルにまで浸透してきたことを示しており、注目すべき判決だ。これまでの刑事裁判では、検察側の主張と矛盾がない程度でも有罪とする「疑わしきは処罰する」という文化が裁判官の中に広がっていたが、見直しが迫られる。
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2012年12月16日

■大阪地裁の裁判員裁判ー2名殺害、無期懲役ー弁護人としてー

*2012年10月末から11月はじめ、大阪地裁で、聴覚障害のある被告人が同じく聴覚障害のある知人男女2名を殺害する事件について裁判員裁判が行われた。「音のない世界」で起きた殺人事件であった。裁判は「手話通訳」を介して行われた。ブログ編者は弁護人として関与した。

■「都島男女殺害で起訴内容認める、大阪地裁初公判で被告」
 ○日経(夕刊)2012/10/30
 大阪市都島区のアパートで昨年4月、住人の男女3人を殺傷したとして、殺人と殺人未遂の罪に問われた無職、T・S被告告(60)の裁判員裁判の初公判が30日、大阪地裁(I・H裁判長)であり、T被告は「2人を刺したことは間違いない」と殺人罪の起訴内容を認めた。
 同被告と無関係だった男性への殺人未遂については「刺す気はなかった」と殺意を否認した。
 検察側は冒頭陳述で、「金を要求されてナイフでめった刺しにし、無関係の男性も殺害しようとした」と指摘。弁護側は「女性の前に立ちはだかったため、とっさに刺してしまった」と無関係の男性への殺人未遂は成立しないと主張した。

■「3人殺傷に無期求刑/被告、手話介し「後悔」/大阪・都島」
 ○朝日新聞(夕刊)2012/11/08
 大阪市都島区のアパートで昨年4月、知人の元夫婦を刺殺し、別の住人男性も殺そうとしたとして殺人と殺人未遂の罪に問われた無職T・S(・・・)被告(60)の裁判員裁判の論告求刑公判が8日、大阪地裁であった。検察側は「強い殺意に基づく執拗(しつよう)で残忍な犯行」と無期懲役を求刑。聴覚障害のある被告は最終意見陳述で手話通訳を介し、「元夫婦を殺害したことは後悔、反省しています」と述べた。
 弁護側は最終弁論で、住人男性に対する殺意を改めて否定。その上で聴覚障害がある被告の成育歴などを踏まえて「有期刑が相当」と訴えた。判決は15日。

■「3人殺傷で無期判決/聴覚障害、減刑なし/大阪・都島」
 ○朝日新聞(朝刊)2012/11/16
 大阪市都島区のアパートで住人3人を殺傷したとして、殺人と殺人未遂の罪に問われた無職T・S(・・・)被告(60)の裁判員裁判の判決が15日、大阪地裁であった。弁護側は聴覚障害のある被告の生い立ちなどから減刑を求めたが、I・H(・・・)裁判長は「強い殺意に基づく残虐な犯行」と、求刑通り無期懲役を言い渡した。
 判決によると、T被告は昨年4月、三角関係にあり、金銭トラブルも抱えていた元夫婦のO・Y(・・・)さん(当時44)とS・Y(・・・)さん(同39)から、金銭を渡すよう迫られて立腹。ナイフで2人を刺殺し、Sさんが駆け込んだ別の部屋の男性(70)にも重傷を負わせた。被告はこの男性への殺意は否認していたが、判決は「手加減なく首を刺しており、殺意があったと認められる」と結論づけた。
 公判は手話通訳を介して行われた。判決後の裁判員の記者会見で、40代男性は「丁寧な通訳で、被告の供述がかみ砕いた内容になり分かりやすかった」、20代女性は「思いの深さは想像するしかなかった」と話した。
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2012年12月15日

■京都地裁の裁判員裁判ー2名殺害、無期懲役 ー弁護人としてー

*2012年11月末から12月はじめにかけて、京都地裁で、2名を殺害した被告人について裁判員裁判が行われた。弁護人として関与した。

■「妻の両親を殺害/起訴事実認める/裁判員裁判=京都」
 ○読売新聞(朝刊)2012/11/28
 2010年5月、長岡京市の路上で、妻(41)の両親を殺害したとして、殺人罪に問われた兵庫県尼崎市の元不動産業、S・T被告(55)の裁判員裁判の初公判が27日、地裁(O・T裁判長)であった。S被告は「間違いない。申し訳ない」と起訴事実を認めた。
 起訴状では、S被告は同年5月12日午前1時40分頃、妻が失跡したのはその親であるY・Yさん(当時65歳)と妻のSK・・・さん(同)夫妻が原因だとして、2人を暴行。その際、警察に通報されそうになったことに腹を立て、2人の胸と背中を刃物で数回突き刺して殺害したとされる。
 冒頭陳述で検察側は、犯行時夫婦が「殺さないで」と命乞いしていたことを明らかにした。一方、弁護側は「刃物は護身用に携帯していたもので、偶発的な犯行」と述べ「死刑か無期懲役かの量刑が予想されるが、冷静に判断してほしい」と裁判員らに語った。

■「裁判員に殺害場面音声/京都地裁/被害者録音を再生」
 ○産経新聞(夕刊)2012/11/28
 京都府長岡京市で平成22年、妻の両親を刺殺したとして、殺人罪に問われた元不動産業、R・T被告(55)に対する裁判員裁判の第2回公判が28日、京都地裁(O・T裁判長)で開かれ、殺害時に被害者が録音していた音声が流され、被害者の悲鳴に裁判員らは険しい表情を見せた。
 以前からR被告に脅されていた被害者が、記録のためボイスレコーダーを持っていた。この日の公判では、検察側がボイスレコーダーを調べた検察官を証人尋問、その際に音声が再生され、裁判員はイヤホンで聞いた。
 弁護側によると、殺害時の音声が裁判員裁判で再生されるのは珍しい。殺害場面の音声は約10分。傍聴席にも漏れ伝わった。
 R被告が妻の失踪に絡む両親の対応に激高し、妻の両親のY・Yさん=当時(65)=とSKさん=当時(65)=夫婦と言い争いになり、激しい物音がする中、SKさんの「やめて、やめて」と泣き叫ぶ声や悲鳴が聞こえた。
 起訴状によると、R被告は22年5月12日、妻の失踪は両親に原因があると言い掛かりをつけ暴行。
 胸などを刃物で数回突き刺し、失血死させたとしている。

■「長岡京の夫婦刺殺/被告が死刑求める/地裁で裁判員裁判=京都」
 ○読売新聞2012/12/01(朝刊)
 長岡京市で2010年5月、妻の両親を殺害したとして、殺人罪に問われた兵庫県尼崎市、元不動産業・S・T被告(55)の裁判員裁判の公判が30日、地裁(O・T裁判長)であった。被告人質問でS被告は「死刑にしてください」と裁判員らに訴えた。
 妻はS被告から、不倫を疑われて厳しく追及され、自殺未遂を起こした末に失踪したとされる。S被告は「自己中心的な自身の性格が、妻を追いつめてしまった」と反省する様子をみせた。弁護側から現在の心境を問われると、S被告は「(犯した罪は)人間のすることではない。ここで死刑にしてください」ときっぱりと答えた。

■「長岡京の夫婦殺害:「無期」判決/『命尽きるまで贖罪を』/裁判長、遺族に配慮−−地裁/京都」
 ○毎日新聞(朝刊、京都版)2012/12/14
 10年に長岡京市で妻の両親を刺殺したとして殺人罪に問われたS(本名・R)T被告(55)=兵庫県○○市=に対し、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した13日の京都地裁の裁判員裁判。O・T裁判長は量刑理由について「命が尽きるまで贖罪(しょくざい)の日々を送らせるべきだ」と述べ、極刑を求めた遺族への配慮を示した。公判は被害者が録音していた殺害時の音声が流され、検察側と弁護側がそろって無期懲役を求刑するなど特異な経過をたどった。判決後、裁判員や被害者遺族らが記者会見し、心境を語った。
 裁判員を務めた30代の会社員男性は、音声記録について「事前に記録があると聞いており心構えができていたので、後々までストレスになることはない」と話した。また、無職女性(68)は「音声の証拠が無くても残虐性は、現場の写真や被害者の傷で証明されると思うが、現場の声は心に迫った。(他の裁判でも音声記録が)あるなら、裁判員は聞くべきだと思う」と述べた。
 一方、意見陳述で極刑を求めた被害者の次女(39)らは「裁判員には気持ちは伝わったと思う」としながらも「弁護側と同じ無期懲役の求刑を受けての判断で、裁判の意味があったのか」と無念さをにじませた。

■「遺族、無念の会見/「理解できない」/長岡京夫婦刺殺、無期判決/京都府」
 ○朝日新聞2012/12/14(朝刊)
 長岡京市で妻の両親を殺害したとして殺人罪に問われたS・T被告(55)に対する裁判員裁判の判決は求刑通り無期懲役だった。京都地裁は「被告の死で償うのが当然な事件だ」と指摘。死刑を望んでいた遺族は判決後、「なぜ検察は死刑を求刑してくれなかったのか」と悔しさを語った。
 判決によると、S被告は失踪中の妻が見つからないのは両親のせいだと難癖をつけ、2010年5月、妻の父のY・Yさん(当時65)と母SK(・・・)さん(同)を包丁で刺殺した。被告は起訴内容を認め、当初の争点は量刑とされた。
 両親の次女(39)と長男(34)は被害者参加制度を使って裁判に参加して「被告を死刑にして」と訴えた。京都地検は「死刑の適用には慎重になるべきだ」として弁護側と同じ無期懲役を求刑。判決は「悪質だが殺害を事前に計画していたとは考えにくい」として無期懲役とした。
 死刑を選ぶかどうかの判断にあたり、結果の重大性や計画性など9項目を示した「永山基準」が使われている。判決後に取材に応じた長男によると、死刑を求刑しなかった理由を、周到な計画性がなかったからなどと地検から説明を受けたという。
 長男は「2人を殺(あや)めたのに、計画性がないから死刑にならないのは理解できない」。次女は、判決が「死刑も当然」と指摘したことに触れ、「だからこそ、どうして検察は死刑を求刑してくれなかったのか。前例を踏まえた求刑しかできないなら、何のための裁判員裁判なのか」と話した。
 判決後の記者会見で、裁判員を務めた無職女性(68)は「判決に、遺族にしっかり生きていってくださいという思いをこめたつもりだ」と話した。
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