2012年12月31日

■尼崎連続不審死事件(2)ー裁判官の「白黒二分法」/「有罪」作文の作法

■殺人事件の認否
 2012年12月5日朝日新聞(夕刊)「「美代子容疑者、殺意認める/橋本さん殺害で再逮捕/尼崎連続変死【大阪】」は、H・Jさん(当時53才)の殺人事件で逮捕され、すでに起訴された6名について、逮捕前後の段階での認否を整理して紹介した。

 「兵庫県尼崎市の連続変死事件で、県警は5日、同居人のHJさん(当時53)を自宅で拘束、監禁し、殺害した疑いが強まったとして、尼崎市の角田(すみだ)美代子容疑者(64)ら5人を殺人と逮捕監禁の疑いで再逮捕し、発表した。
 逮捕したのは美代子容疑者のほか、義理のいとこのS・MSNR(38)、義理の娘のRI(27)、内縁の夫のA・TR(・・・)(62)、RI容疑者の姉の夫のN・K(43)の4容疑者。養子のKEN(30)と義妹のMIE(59)の両容疑者も5日午後にも再逮捕する方針。
 M容疑者は「悪いのはすべて私です」と殺意と虐待行為を認め、RI、Nの両容疑者も「間違いない」と容疑を認めた。一方、MSNR容疑者は「殺意は認めません」、A容疑者も「殺すつもりはなかった」と否認しているという」。
■「疑わしきは罰する」原則ー裁判官文化の負の遺産
 S・M被告の自殺によって、まだ未発見のものも含む事件の全容解明は困難になる。また、今回起訴された6名についても、共同生活の中で起きた事件であるだけに、Hさんの監禁の事実を知らないとは言えないが、「殺意」を全員について認定できるのか微妙だろう。
 共犯の一人が、積極的に自白する場合には、責任逃れのため、共犯巻き込み・責任押しつけの危険も伴う。
 この場合、日本の裁判官は、意識してか無意識でか、警察・検察の立証の柱にした共犯者供述は「高く信用できる」とまず前提にして、これに反する事実をすべて否定する「作文の技法」、「白黒二分」法が得意だ。裁判員裁判の場合も、このラインに沿って評議をリードする危険が残る。
 一種の「えん罪」の危険が高まる。
 無実の者が有罪とされることも、小さな犯罪の犯人が大きな犯罪で処罰されるのも「えん罪」という。今回の事件では、前者の「白黒」えん罪ではなく、後者の「大小」えん罪の危険が高い。
 その意味で、通常の事件とは異なり、起訴が終着点ではなく、ここからが裁判員裁判をにらんだ、「真相解明」の本番になる。
posted by justice_justice at 09:14 | TrackBack(0) | ■(ケース)尼崎連続変死事件 | 更新情報をチェックする

2012年12月30日

■尼崎連続不審死事件(1)ー「公訴提起」/「公訴棄却」

(1)
 「公訴提起」。
 2012年12月27日、朝日新聞(朝刊)は、「殺人でSNR容疑者ら起訴/尼崎連続変死、計6人」と題する記事で、すでに自殺したS・M元被疑者(自殺時、64才)周辺で起きた一連の変死事件のうち、尼崎のマンションで監禁、衰弱死させたH・Jさんの事件で、親族等6名を殺人と逮捕監禁の事件で起訴したと報じている。
 「公訴棄却」。
 2012年12月26日、朝日新聞(朝刊)は、「M被告の公訴棄却決定/尼崎連続変死、神戸地裁」とする記事を載せる。こちらは、一連の事件の主犯と思われるS・Mが県警本部の留置場で自殺したため、すでに起訴されていた死体遺棄罪などの刑事裁判について、これ以上は被告人が不在となるので「手続打切り」を宣告したことを報道する。

(2)記事を引用して、事件を照会する。「起訴状によると、6人は共謀し、昨年7月25日ごろ、集団生活をしていた尼崎市内のマンションのベランダに設置された物置にHさんを閉じ込め、両手足を手錠や丸太、ロープなどで拘束したうえ、粘着テープで口をふさぎ飲み水や食事を与えず、蹴るなどの暴行を加えて衰弱させ、同27日に殺害したとされる」。「Hさんの遺体はドラム缶に詰められて岡山県備前市の海に遺棄され、今年10月になって兵庫県警の捜索で海中から見つかった」。

 (3)「真相解明」/「真相不解明」
 21世紀が始まって10年すぎたときに発覚した異様な犯罪。
 その意味について、以下何度かいくつかの視点で捉えてみたい。

posted by justice_justice at 08:52 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする

2012年12月29日

■ストーカー犯罪と被害者保護ー「事件」警察から「予防」警察へ/ストーカー犯罪と国選弁護人

■「ストーカー容疑 逮捕状に被害者名書かず」。
 ネット上、YOMIURI ON LINEの2012年12月29日付け配信記事で、神戸からの発信として次の記事がアップされている。
*******
◇逗子事件受け県警、顔写真で確認
 県警は28日、2件のストーカー規制法違反事件の各容疑者を逮捕した際、逮捕状に被害者の住所や氏名は書かず、顔写真を添付する方法で本人確認をして執行した、と発表した。神奈川県逗子市で11月、デザイナー三好梨絵さん(33)が殺害された事件では、地元の逗子署が昨年6月、逮捕状に記載された三好さんの住所や現姓を元交際相手の容疑者に読み上げたことが問題となっていた。警察庁によると、ストーカー事件での同様の対応は初めてとみられる。
 発表によると、2人は、11月に飲食店員の10代の女性の顔を殴ったとされる住所不定、運転手大脇勉容疑者(60)(暴行罪で略式起訴)と、40代の会社員女性につきまとったとされる姫路市的形町、アルバイト従業員米沢知男被告(30)(ストーカー規制法違反で起訴)。いずれも今月中旬に同法違反容疑などで逮捕された。
 県警は、2人がそれぞれの被害者の正確な住所や氏名を知らないことを重視。被害者の氏名を隠すため、逮捕状を読む際、顔写真を添付して被害者を特定させた。地検も起訴状の氏名をカタカナ表記にするなどの配慮をした。
 逗子市の事件を受け、警察庁は今月20日、ストーカーや性犯罪などで再び被害を受ける危険性がある場合、被害者の通称名や旧姓を使うなど、プライバシーに配慮した内容で裁判所に逮捕状を請求するよう全国の警察本部に指示。県警はこの指示に先んじ、写真による確認を行ったという。
****

■ストーカー犯罪は「予防」が鍵だ。その重要なステップは、被害者情報を加害側に秘匿すること。そして、実は、日本人の体質からも、ネット社会になってしまった外的環境の変化からも、そして、外から見る限りの日本の警察官僚組織の体質からも、「守秘」が徹底されにくい。
 次に、日本の警察は、官僚組織としての実績を上げるためにも、「事件」警察として動く傾向がある。つまり、「被害」が「過去形」になってから動く。「未来形」の段階で抑止し防止することに本格的に取り組んでいるのか疑問を持つ。
 しかも、21世紀犯罪の特質は、
  1:ネット犯罪 2:国際犯罪 3:ストーカー気質犯罪
 にある。
 ストーカー気質犯罪は、「過去形」犯罪での対応では後手に回り、結局、「殺人」といった取り返しの付かない「過去形」に至りがちだ。
 今回、逮捕状執行レベルでは、被害者特定情報の保護には成功した。
 しかし、弁録ー勾留質問ー被疑者取調べー起訴ー証拠調べ請求証拠開示ー類型証拠開示ー主張関連証拠開示、、、と続く長い刑事手続の枠内で、被害者保護をどこまで徹底できるのか、その角度から、運用面も含む検証が不可欠だ。
 他方、被疑者・被告人の防御の権利を侵害することはできない。事件の特定性は、被害者の特定によっている。それだけに、手続の適性を確保するため、被害者情報秘匿手続をおこなう場合には、必要的弁護事件として、逮捕状執行直後に国選弁護人を選任するなどの措置も必要である。


posted by justice_justice at 07:23 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする

2012年12月27日

丸の内・出光美術館ー琳派と酒井抱一の屏風

hoitsu00.jpg

12月に東京で『法と言語』学会があった。
 終日、学会でいろいろな角度から「言語」と「法」の交錯する人の営みについて
 分析する報告を耳にした。いずれも興味深かった。翌日、私用を終えて、新幹線に
 乗る前のひととき、これも古くから足を運んできた出光美術館におもむいた。

 『琳派』展。いわずと知れた酒井抱一の屏風をみるためである。
 数隻の名品が並ぶ。江戸中期の成熟した文化の頂点にたつ美術品。
 狩野派の荒々しさ、長谷川等伯らの斬新さ、、、それらを吸収しきった
 熟成の美。

 夏目漱石の『それから』に抱一の作品の逸話が出てくるが、作品そのものを
 みる機会は案外ないものだ。出光美術館でよき展覧会にであった。
hoitsu01.jpg

posted by justice_justice at 23:53 | TrackBack(0) | ●教養ー美術・音楽・博物 | 更新情報をチェックする

神戸・マウリッツハイス展ーヤン・ステーンとフェルメール

jan steen00.jpg 『親に倣って子も歌う』。
 ヤン・ステーンの名作が神戸にある。言わずと知れたマウリッツハイス美術展である。
 神戸市立博物館で開催されている。
 12月のとある平日に時間をとって出向いた。人気高き展覧会で、朝から人が集まる。
 フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』が主な目当てなのだろうか。この作品は、数年前に、まさにハーグにあるマウリッツハイス美術館で観た。美術館のある公園入口に、オランダの名物、いわしの屋台がたつ。ナマのいわしをほおばってから、フェルメールを観たのを記憶している。
 オランダの絵画。デルフト、ライデンなどなど懐かしい地名が並ぶ。
 中世から近世に向かうヨーロッパの風景。数百年にわたり、人が鑑賞した自然を、いろいろな視点と技法で描く作品群。
 次には、またオランダで出会いたいものばかりであった。

 
posted by justice_justice at 00:37 | TrackBack(0) | ●教養ー美術・音楽・博物 | 更新情報をチェックする

2012年12月26日

六本木・リヒテンシュタイン家展ールーベンス

rubens00.jpg

 これも11月の上京の折、少し窮屈なスケジュールの合間に、六本木へ足を向け、国立新美術館で『リヒテンシュタイン侯爵家』展をみた。バロックの重厚な作品群。17世紀フランドルの絵画などなど。そして、ルーベンスの一群の作品。中に、デキウス・ムスの連作のひとつ、「占いの結果を問うデキウスムス」があった。重厚なる人間の精神を描き上げた作品。しばらく絵の前にたたずんだ。
posted by justice_justice at 03:39 | TrackBack(0) | ●教養ー美術・音楽・博物 | 更新情報をチェックする

2012年12月25日

上野・メトロポリタン美術館展ーゴッホ

cypressi_gogh.jpg東京都美術館が改装オープンしてしばらく経つ。
11月、大学が学園祭の折所用あって上京。時間をとって上野公園へ。都美術館にてメトロポリタン美術館展を鑑賞。数々の作品群の中に、ゴッホ「糸杉」はやはり秀逸。こぶりの作品なのに、その部屋に入った途端に目がそちらに向く「気」を放っている。両サイドにたまたま並ぶ2作品と比べても、放つ「気」が全く異なる。ゴッホの作品と知ってみるからなおそう見えるのだろうが、気迫と狂気、そして一本の糸杉にも宿る宇宙の生命力を一枚の平面図に書き込んだかの迫力であった。
posted by justice_justice at 03:51 | TrackBack(0) | ●教養ー美術・音楽・博物 | 更新情報をチェックする

2012年12月24日

■京都・エルミタージュ展

 11月の中旬。雨の降る京都に所用あってでかけた。その合間を縫って、岡崎の市立美術館へ。エルミタージュ展に足を運んだ。
 16世紀の祈るキリスト像を第1作におき、最後の部屋をでる出口の左手にマチスを配置したのは、学芸員がよくよく吟味したものか、偶然か。
 とまれ、入口と出口のコントラストが非常におもしろかった。
 ひとわたり数世紀にわたる絵画の流れが一巡でわかる。
 例のごとく、前列一歩内側をやや早めに歩いて好みの絵画を選び出し、二巡、三巡してじっくりと味わう方法で作品と対話する。

chirst00.jpg


 特別展は、出会いの新鮮さと意外さが面白い。
 どのみち、趣味に「蘊蓄は不要と考える派。以前にみたか、見なかったか。画集でみたのか、ほんものか、、、あまり記憶に留めることなく、なんとなく眺めつつ、そのときの思いとリンクする作品をじっくりと見返す。
 これに対して、なじみの美術館のいつもの作品を観る楽しみもある。
 「定点観測」と称している。東京、名古屋、福岡にその美術館がある。
 それはさておき、エルミタージュ展。ロココ調のエロティックな絵画も含んで、アヴァンギャルドの時代までをカバーする。紅葉の似合う季節によくあった京都の美術展であった。

matissse00.jpg



posted by justice_justice at 06:31 | TrackBack(0) | ●教養ー美術・音楽・博物 | 更新情報をチェックする

2012年12月23日

■PTSDと傷害ー犯罪被害の拡大

■「わいせつ事件後/被害者発症/パニック障害は「傷害」/支援団体「画期的」/拡大解釈に危惧も」
 ○山陽新聞(朝刊)2012/09/29
 パニック障害が刑法上の「傷害」に当たると認めた28日の岡山地裁判決。被害者の内面の苦しみをくみ取った判断といえ、司法専門家や犯罪被害者支援団体は「妥当、画期的」と捉える。一方で「あらゆるケースに適用されかねない」と拡大解釈を危ぶむ声もある。
 公判で検察側は、被害者の主治医を証人尋問。パニック障害の診断は世界保健機関(WHO)の基準に沿い、発作の程度は強く頻度も多かった―と主張。裁判員は会見で「心の傷は体の傷と同じ」と“判断理由”を明かした。
 □刑事裁判に詳しい渡辺修甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「本質を捉えた妥当な判決」と評価。「司法は被害者の精神的な傷を軽んじてきた。因果関係が証明される場合、量刑にも反映すべき」と言う。
posted by justice_justice at 07:33 | TrackBack(0) | ■裁判員裁判ー一般 | 更新情報をチェックする

2012年12月22日

■ある未解決事件ー警察捜査から「市民」捜査への道

■「殺人の立件、道険しく/県立大生事件3年、遺棄罪は時効 /島根県」
 ○朝日新聞(朝刊)2012/11/06
 県立大1年生だったH・M(・・・)さん(当時19)の遺体の一部が広島県の山中で発見された死体遺棄事件は、6日で公訴時効の3年。両県警の合同捜査本部は時効のない殺人事件として捜査を続けるが、立件へのハードルは上がる。情報公開など早期解決に向けた捜査本部の姿勢は一層問われる。
 「死体遺棄は時効になるが、当初から殺人容疑を視野に捜査しており問題はない」。Hさんが行方不明となってから3年の10月26日、県警本部で記者会見した植中隆史刑事部長(合同捜査本部長)は時効について問われ、こう答えた。
 Hさんは2009年10月26日、浜田市港町のアルバイト先のショッピングセンターを出た後、行方不明となり、11月6日に広島県北広島町の臥竜山で遺体の一部が見つかった。この間に遺棄されたと考えられるため、遺棄・損壊罪は今月6日までに時効になるという。
・・・
 □市民社会の力で犯人捜す工夫を 甲南大法科大学院・渡辺教授に聞く
 <刑事事件に詳しい渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話> 
 生前に殴られるなどの痕跡があっても、それだけで殺意に基づく殺害行為があったことの立証は困難だ。死刑の選択もある重大な犯罪について裁判員が事実を認定する今の制度では、最高裁は、被告が犯人でなければありえない事実を証拠で裏付けられない状態では「合理的疑い」が残ると扱う。
 警察は見込み捜査や密室での取り調べ、自白中心捜査に走ることなく、間接証拠を積み上げる捜査の継続を期待する。急速に地縁や血縁が薄れた日本社会で、伝統的な捜査手法では犯人発見や真相解明が難しい。捜査情報の公開の時期を早め、市民社会の力で犯人を捜す新たな工夫が要る。
 一方で警察の責任追及にとどまることなく、市民社会が自ら犯罪予防、犯罪捜査に責任を持つシステムを構築すべきだ。


posted by justice_justice at 11:04 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。