2015年09月03日

被疑者取調べ「可視化」と黙秘権

 高槻中1死体遺棄事件の後追い記事が止まっている。捜査の進展が水面下に潜った。逮捕直後には,平田さんの死体遺棄は同乗していた男がやったものと説明したが,その後から黙秘が続く。「捜査関係者によると,警察と検察の取り調べは当初から録音・録画され,容疑の否認後,黙秘が続く」という。
 8月29日朝日新聞(朝刊)は「弁護人には,大阪弁護士会の刑事弁護のベテランが選任され,山田容疑者と府警本部(大阪市中央区)で接見を続けている。朝日新聞の取材に『接見内容は一切コメント』と話す」と出ている。
 この事件については,死体遺棄への関与の疑いで被疑者が逮捕されたときに,毎日新聞(朝刊)8月22日に次のコメントを載せている。

■「背景の解明必要」
 大阪府警が迅速な捜査で容疑者の検挙につなげたことは評価できる。近年は殺人事件の発生件数が減少する一方,加害者側の異様な動機から生まれる事件が起きている。今回の事件は,被害者となった中学生の男女が夏休みの外出中に巻き込まれてしまった側面もある。家族や地域,学校など従来からあるつながりが外れたところで生じた犯罪の背景を解明する必要がある。

 容疑者について,逮捕・勾留容疑は平田さんの死体遺棄のみ。平田さん殺害,さらに星野君の死体遺棄,その死亡への関与などについては,「あやしい」といえる根拠は新聞でも報道されているが,逮捕し勾留できる捜査段階での「罪を犯したと疑う相当の理由」を証拠で固められるかは報道では分からない。
 水面下での捜査が続いているのであろう。
 捜査,公訴,裁判・・・犯人を処罰するプロセスは社会の正義を守る不可欠の手続で,手続の適正・公正と処罰の厳正さが求められている。したがって,真相解明のためにも,また密室取調べでの自白強要→えん罪というわが国刑事司法に蔓延するウイルスに今回の事件も感染しないよう,被疑者から事情を聞くプロセスを可視化=録音録画することは適切なことだ。初期供述が合理的か不合理か,他の状況証拠によりやがて解明される。それが真相解明,将来は,裁判員裁判で市民が被告人を有罪とする有力な手がかりになることも考えられる。その意味で,被疑者取り調べの全過程録音録画は,むしろ真相解明の重要な武器でもある。
 他方,弁護人がついたようだ。被疑者が「黙秘」するのであれば,これをいわば守るのが弁護人の責務だ。犯罪を認定し刑罰を科すのは,国家の責務。市民は,自ら無罪であることを説明する責任を負わせられない。嫌疑を晴らせないから処罰する,という最大の不正義を防ぐには,「合理的疑いを超える証明」は国家が行うこと。この原則を守ることだ。被疑者・被告人として冷たい目線で社会から見られている山田容疑者。この原則を自ら貫く方法が「黙秘権」である。我々は,黙秘権を行使する被疑者・被告人を冷静に受け入れる態度が求められている。

2015年08月27日

逮捕の重みーえん罪の怖さ

「『幸せな人生、変えられた』/誤認逮捕の男性、苦悩の2年/地裁賠償命令【大阪】」と題する記事で(2015/06/16 朝日新聞(朝刊)),次の紹介があった。

 「ある日突然、身に覚えのない容疑をかけられ、そのまま自由を奪われたら――。そんな悪夢が現実になった大阪府警北堺署と大阪地検堺支部の誤認逮捕・起訴。15日の大阪地裁判決は、ずさんな捜査で無実の人を苦しめた捜査当局の姿勢を厳しく批判した。どうすれば冤罪(えんざい)は防げるのか。捜査現場の模索が続く。▼1面参照
 「私の人生は、誤認逮捕で大きく変えられてしまいました。今日の判決が、心身ともに健康で幸せだった頃の人生を取り戻すきっかけになればと思います」・・・
 捜査段階から容疑を否認してきた男性。判決では、大阪府警の取調官が男性に何度も自白を迫った際の文言が明らかにされた。
 「その汚れた手で子どもの頭をなでてあげられますか」「反省する気持ちはないのか。お前が犯人である証拠はそろっている」
 男性は85日間の拘束の末に釈放されたが、一連の捜査で精神的なストレスから抑うつ反応を発症し、今も休職と復職を繰り返す。
 小学生の娘が2人いる。誤認逮捕のもとになったのは、家族でスノーボードに向かう途中での給油だった。そのすぐ後に給油した真犯人と取り違えられた。」

■<考論>検察、原点戻って
 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話 警察は捜査を自白に頼ろうとする伝統的な体質から抜け切っていない。一方、検察は警察の捜査をうのみにする傾向がある。今回の誤認逮捕と起訴は、そうした土壌が生んだものといえる。検察の役割は、裁判を起こして罪に問うべきかどうか批判的に事件をとらえ直すことにある。判決を踏まえ、検察は本来の役割をしっかり自覚するべきだ。
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2015年08月26日

逮捕権限の行使ー日本のありかた

 もう解決済みの事件であるが,こんなことがあった。見出しをみよう。
 「【水平垂直】トヨタ女性役員逮捕/『例外なし』警視庁毅然」
 2015/06/29の産経新聞(朝刊)に掲載された記事だ。テレビニュースでも結構取り上げられたようだ。そろそろ忘れ去られようとしている事件であるが,,,
 「世界有数の自動車メーカー「トヨタ自動車」の常務役員、ジュリー・ハンプ容疑者(55)、米国籍=が、麻薬オキシコドンの錠剤を輸入したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕された事件の衝撃が続いている。28日で逮捕から10日が経過。大企業相手に毅然(きぜん)と捜査を進める警視庁は一方で、株主総会後に逮捕に踏み切るなどリーディングカンパニーへの配慮もうかがわせる。人材の多様化が進む中、トヨタ初の女性役員の逮捕を受け、日本企業は新たな課題に直面している。・・・・」
 企業経営の側面はさておき,こんな事件で,社会的な身分や日米関係に配慮して,警察が身柄確保を躊躇されては困る。
 場合によっては,案外悪質であったりする余地はこの段階ではあった。共犯関係も不明であった。とすれば・・・記事が続く。
 「■偽装輸入で違法性疑う 総会・株価…捜査時期に配慮も
 「相応の理由があるから逮捕している。むやみにやっているわけじゃない」
 ジュリー・ハンプ容疑者の18日の逮捕から数日後、警視庁幹部はこう話した。
 ハンプ容疑者は逮捕当初から「麻薬を輸入したと思っていません」と容疑を否認。だが、別の警視庁幹部は「ネックレスに偽装して送っている。違法性の認識があったはずだ」と話す。
 実際、ハンプ容疑者が輸入した荷物からは、違法性の認識がうかがえる。小包は「ネックレス」として輸入され、中には玩具とみられるネックレスやペンダント入りの小箱があった。問題の錠剤は小箱の底や小さな紙袋など3カ所に小分けされていた。
 「明らかに逮捕が必要な案件。大企業の幹部だからといって許されない」(警察幹部)」。

 警視庁の毅然とした対応について,次のようなコメントを出した。
 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は、「逃走などといった捜査妨害の可能性は低いという前提があれば、容疑者の社会生活に折り合いをつけた上で逮捕を調整するのは正当な捜査手法」と説明する。
posted by justice_justice at 18:20 | TrackBack(0) | ■事件ー捜査から起訴まで | 更新情報をチェックする
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